ユング Carl Gustav Jung 1875‐1961


 

スイスの精神医学者。 分析心理学の創始者。

ケスウィルに牧師の子として生まれ、クラフト・エービングの著書に影響を受け精神医学の道へ進む。バーゼル大学医学部卒業後、チューリヒ大学の精神科でブロイラーの助手となり言語連想法の研究で有名となる。

S.フロイトの『夢判断』を読み感激したユングは、 1907 年にフロイトを訪ね、両者は協調して精神分析学の建設と発展に寄与。

10 年、国際精神分析学会の会長になるが、 12 年に発表した『リビドーの変遷と象徴』によってフロイトとの考えの相違が明らかとなり、論争を重ねた末に訣別する。

その後、13‐16 年にわたって、強い方向喪失感に襲われ、創造の病ともいえる内的危機に直面する。(この時、彼の机の引き出しにはリボルバーが用意されていた)

この時期に彼自身が体験した「無意識の対決」を基礎として、それに学術的検討を加えることによって、彼独自の分析心理学の体系を確立。

ユングは精神病者の幻覚や妄想が古来からある神話、伝説、昔話などと共通の基本的なパターンの上に成り立っていることを認め、〈元型〉、という考えを提唱した(1919)。 彼は人間の心の世界には個人的無意識と普遍的無意識という 2 つの層が存在し、後者はひろく人類に共通であり、そこに元型が存在すると仮定した。

1920 年代より、キリスト教と自然科学を相対化する努力を続けた。

また各界の学者と共に「エラノス会議」を設立(1933)。ヨーロッパ史の表面には現れなかった秘教的伝統を研究した。

また、彼は中国の「道」の考えに影響され「易経」や、日本の禅などの紹介にも努めた。

主な著書は『心理学と錬金術』(1944)、 『アイオーン』(1951)、『結合の神秘』(1955‐56)。彼の考えは当初あまり理解されなかったが、70 年代より世界の人々の関心を集め今日では高い評価を得ている。 

 


ユング
ユングは精神分裂症患者に深い同情と献身的な態度で臨んだ。時として若きユングは女性患者の心的世界に巻き込まれてしまい、性的な関係を結んでしまうこともあった。

 


オイゲン・ブロイラー
(1857-1939)
ブロイラーは、ブルクヘルツリ精神病院で患者の心理的接近法を試みていた。当時の精神病に対する心理的理解者であった。患者への惜しみなき献身において抜きん出ていたという。ユングは当初、ブロイラーに師事していた。

 

 

少年時代のユングが愛読したのはロマン派詩人ゲーテの「ファウスト」。ゲーテの哲学は「永遠に女性的なるものが自分を高みに引き上げる・・・」というもの。すなわち


・女性における男性性(男らしさ)
・男性における女性性(女らしさ)


が自分をより高めている、とする哲学だった。

「もう一人の自分」を意識していたユングは、ロマンチストな青年へと成長した。後に彼はそれを「NO2」あるいは「シャドー」と名づけることになる。

青年時代は降霊会に熱中する。従妹のヘリーが強い霊媒能力を持っていたという。降霊状態の彼女の予言は次々と的中し、時には宇宙論の体系についても語った。

彼女は「兄への恋愛感情」、すなわち思春期の少女に多い、特有の近親相姦愛を抱いていた。ヘリーが性的成熟へ近付くにつれ霊媒能力は衰え降霊会ではもっぱらチンケなロマンスを口走るだけになってしまった。遂には

「カール(ユング)と一つになる夢を見た」

と語り、ユングへの誘惑を繰り返すようになる。怖れたユングは「いわゆるオカルト現象の心理と病理」を発表。「降霊現象はヒステリー患者による性的妄想によるもの」とした。彼はヘリーを「捨てた」。彼女は発狂し、やがて衰弱の中早世する。彼はそれを終生後悔することになる。

そうした中で、全てを性でとらえるS.フロイトの《夢判断》(1900)との出会いは衝撃的であった。1907 年にフロイトを尋ねた時に彼はこうフロイトに告白した。

「貴方とあまりに親しくなると同性愛的感情が生じるようで、恐ろしいのです」
「・・・息子よ、それは貴方が私に父親像を求めているのです・・・」

ユングはフロイトの基で頭角を表し、10 年、国際精神分析学会の会長となり「精神分析会のプリンス」と呼ばれる。しかし、あるきっかけが基になり彼は独自の路線を歩み始めてしまう。ある患者がユングに

「太陽からペニスが垂れ下がっている。それが動くと風がおきる」

と語った。ユングはそれに驚愕したらしい。性欲理論ではペニスを男根、太陽を経口と分析できる。しかしミトラ文書(古代アーリヤ人の宗教記述、一般人が読む事は絶対に無い)とまったく同じ内容を述べているではないか・・・(ミトラ文書には、太陽から地へ向かう管の振動が風を引き起こすと記されていた)

やがて、リビドーは性や幼児性愛に限らず他のことでも説明できると主張、師匠の怒りをかい破門される。

ユングは、「宗教は性的白昼夢から生ずる」とするフロイト説を独自に補強した。全ての人間の精神世界にはもともと共通する「見たいイメージ」(普遍的無意識)が存在している。それをモーゼやキリストといった天才達が具体化したのが宗教であるとした。また、世界のどの国にも共通して魔術や降霊の伝承が残されている点にも着目し、これも各地の天才たちが具体化したものだと考えた。そして全ての人間は「見たい」と感じるものはみることができる本能をもっているとし、世界中の古文書に記されている「奇跡」は事実であるとの認識を示した。ただ実証科学の面からしていささか無理な見解も一部あろう。

しかし彼を評価できる点は、「宗教は性を抑えつけるものではなく、性的白昼夢でもない。宗教と性は、同じテーブルにただ単に座っているモノ」として捉えたことであろう。

日本ではユング派の心理学者として河合隼雄が有名である。


☆ ユングの原著論文(英訳)
By Classics in the History of Psychology

Jung, Carl G. (1910). The association method. American Journal of Psychology, 31, 219-269. [Introduction of Jungian psychology to North America ; Jung's most important empirical work.]

Jung, Carl G. (1921/1923). General description of the types. Chapter 10 of Psychological types (H.G. Bayes, Trans.). (Original work published 1921) [Key chapter of Jung's major treatise on personality.] 

 



アルフレート・アドラー
(1870-1937)
フロイトサークルの中でもっとも論理的な理論を打ち立てた個人心理学の祖である。ユングと同じくフロイトの性欲理論を否定し、決別。アドラーは、劣等感を補償するための力への意思が人間を動かしていると主張した。

 

 

 

 


パイプタバコとユング
エレンベルガーはユングをこう評した。「ユングの持つ人を魅了する特徴の一つは、割り切った現実的思考から高速きわまる抽象的思弁に突如話題を切り替える、その能力であった。」


このページは、心理学サイト「性と文化の革命家」と
「心理学を学ぶには?カウンセラーになるには?」の記事です。
性と文化の革命家(心理学の偉人伝)  心理学を学ぶには?カウンセラーになるには?(誰でもこれから実現できる方法)  参考文献