ロレンス Thomas Edward Lawrence 1888‐1935


 

イギリスの探検家、考古学者、天才的な軍人。通称〈アラビアのロレンス〉で有名。

オックスフォード大学で考古学を学び、ことに中近東に関心をもち、1910‐14 年大英博物館の中東遺跡発掘調査に参加。

第 1 次世界大戦勃発後、陸軍情報将校としてカイロに派遣され、ドイツ側に参戦したトルコの後方かく乱を計画、トルコ支配下にあったアラブ民族の反乱を指導し、その独立運動に挺身、アカバ・ダマスカスの解放に成功。

 19 年パリ講和会議にも出席したが、アラブに対し戦後の独立承認を約束しながら、これを果たさないイギリス政府に失望する。 

21 年、W.チャーチル植民相の下にアラブ関係顧問となり、ファイサルを国王とするイラク王国の成立に努力したが、政府のアラブ政策を不満として翌年辞任。その後、偽名で戦車隊、空軍に一兵士として勤務、 35 年除隊、まもなくオートバイ事故で死亡。

主著にアラブ独立運動の記録と自身の哲学を記した《知恵の七柱》(1926) がある。
彼は型破りの性格で波乱の生涯を送ったが、その評価はなお一定していない。

なお、彼の半生は 1962 年、デビッド・リーン監督、ピーター・オトゥール主演《アラビアのロレンス》(作品賞ほか各種アカデミー賞受賞) として映画化されている。 


ロレンス

 

母・セアラは以前、実母をアルコール中毒で亡くし、厳格でヒステリックな女性だったらしい。

彼女は息子達を厳しく育てた。この母との確執によって、ロレンスの複雑な性格が形成されたようだ。尚、セアラは5人の息子を育てたが、結婚をしたのは五男のアニーただ一人である。(ロレンスは二男)

ロレンスは生涯独身で、女性との性的関係はなかったというのが定説とされている。男性として、女性に欲望を感じたことはなかったらしい。

ダマスカス占領(1918)後、ジャーナリスト、ローウェル・トマスが記した「アラビアのロレンス(と共に)」は大西洋の両岸でベストセラーになり、たちまち社交界の女性達が注目した。しかし彼は彼女達を避けるようにしていたという。

彼は古代史の研究の中で、必然的にギリシア文明の同性愛に関する知識は持っていたが、自身は同性愛者ではなかった。

 

しかし彼はマゾヒストだった。《知恵の七柱》第80章に、彼がデラーの街でトルコ兵に捕まり拷問を受けた体験を記している。そこで彼は下士官から鋲のついたブーツとチェルケス鞭で拷問を受けるのであるが、ロレンスは

「・・・その男に向かって力なく微笑みかけたという記憶があった。というのも、体中が、たぶん性的な、甘味な興奮に満たされていたのだ。すると男は腕を振り上げ、鞭を思いっきり私の股間に突き立てた。私はうずくまって絶叫した・・・」

「・・・あの夜デラーで、私のある部分が死んだ」

と記述している。

ロレンスは、作家バーナード・ショーの夫人に宛てた1924年3月26日付の手紙でこう告白した。

「・・・(あの時)肉体の純潔をくれてやったのです。許されないことでありもう取り返しがつきません。私はまっとうな暮らしをする資格を失ったのです。」

 

1922年より、ロレンスはそれまでの栄光を捨て、奇妙な生活を始めていた。雑用夫ブルースと共に、偽名を使って一兵卒として軍事訓練を受ける日々を送っていた。

ある日ロレンスはブルースに、教会のパレードに参列しなかったので「おやじ」が腹を立て、罰を受けるように命じてきたと語り、タイプで打った手紙を見せた。ブルースは、しぶしぶ言われるがままにロレンスの尻をズボンの上から鞭打った。ところがその日遅く、ロレンスは

「(おやじに)、罰がまだ足りないと言われた。尻をじかに鞭打たなきゃだめだそうだ」と言い、尻から血が出るまで鞭を打たせた。

それ以来、この奇怪な習慣が続いた。ブルースは度々「おやじ」からの手紙を受け取った。内容は、

「品行は改まったか、もっと鞭で打つように」

であった。(おそらく手紙はロレンスが自作したものであろう)

 

彼の不幸と孤独は、アラブの独立に捧げた純粋な理想主義が、 イギリス帝国の権力主義的な中東政策によってしだいに裏切られていくところが原因とされている。

一方でロレンスは心の平安を平凡の同義語と考える人間であった。

詩人オーデン(Wystan Hugh Auden 1907‐73)は

「教育の目的は、子供がダメにならずに堪えられる程度の神経症を作り出すこと」

だと言った。

この定義に従えばロレンスの天才的な才能には、マゾヒズムや性別を感じさせない態度が大きな要素の一つだったと言わざるをえない。

 


このページは、心理学サイト「性と文化の革命家」と
「心理学を学ぶには?カウンセラーになるには?」の記事です。
性と文化の革命家(心理学の偉人伝)  心理学を学ぶには?カウンセラーになるには?(誰でもこれから実現できる方法)  参考文献