これでいいのだ


 直感的深い洞察の人、カフカ・サンビーム氏。
 ウマゴンのパートナーとして、新たにガッシュと清麿の仲間となったその人は、今までになく頼れる大人だった。少なくとも清麿他恵もそう認識した。
 時折、うわ、もしかして天然ボケ?! と、汗をたらりと流すことはあったが、おおむね数少ない尊敬に値する大人、である。
「ウマゴン、今日も一緒に遊ぶのだぞ」
「メルメルメ〜」
「ちょっと、違うでしょ! 遊ぶんじゃなくて、訓練するんでしょ!!」
「ウヌ、遊びながら訓練するのだ」
「メルッ」
 今日も今日とて休日でも忙しい(というか休日というものがないに等しい)アイドルは、別として、休みをやりくりして、ウマゴンの元へやってきている。いい人だ……清麿でなくても、彼を知る誰しもがそう思うことであろう。
 そう、きっと、サンビームさんならば。
「実は、ウマゴンのパートナーの人が現れたらお願いしようと思っていたことがあるんですけど」
「メル?」
「なんだい?」
「イギリスから追いかけてくるぐらい、ウマゴンとガッシュは仲が良かったんだよな」
「メルメル」
「だったら、魔界でのガッシュの事を一番よく知っているのは、ウマゴンだ。その当時のガッシュのことを教えて欲しいんだよ。そうしたらゼオンというガッシュそっくりだという魔物の手がかりだってあるかもしれない」
「で、でも清麿、ウマゴンは……」
 わかっている、と言いたげに清麿は手をあげてティオの当然の疑問のセリフをさえぎった。
「ああ、俺たちにはメルメルとかメルメルメ〜としか聞こえない。だが、サンビームさんならっ! その愉快痛快メルメル語(意味不明)から意味のある内容をくみ取ることも可能! ……かもしれないじゃないか」
 語尾が微妙に気弱なのは、デボロ遺跡でのアレを、思い出してしまったからに他ならず。
 そうだよな、サンビームさんとウマゴンって、戦闘以外は結構ボケボケというか、見るからにダメっぽ〜っていうか、チグハグというか、逆に戦闘であれだけ息が合うっていうことが不思議っていうか。
 でも、今更聞かなかった事にして下さいなんて、言えないし。もしかしたら、ということもあるじゃないか、うん。
 天才少年の頭の中はカシャカシャと処理が忙しい。
「そうか、それもそうだな。私も魔界のことは聞いてみたいな。さ、ウマゴン、こっちがハイで、こっちがイイエだ」
 うあ、いきなり二択ですかっ?! 広告紙の裏にウマゴン手(手先がほぼ球)でも指し示しやすい、大きな○と×。
「さあウマゴン、魔界でのガッシュはどうだったんだ?」
 サンビームさんっ、いきなり大前提の二択をはずれまくった質問はどうかと思ったりもするんですが、どうですかっ! ティオと清麿、心の叫び。
「メル」
 ○のど真ん中を、ばしばしと叩くウマゴン手。
「メルメルメ〜ルメルメ〜ルメルメルメルメ〜ルメ〜メルメル」
「ふむ、そうか」
「ウヌ、そうなのだな、ウマゴン」
「ガッシュ、ウマゴンの言葉がわかるのか?!(←あえてサンビームの方からツッコミをいれたくはないらしい)」
「当然なのだ。ウマゴンと私は仲良しなのだ!」
「メルメルメ〜」
「よぉーく、わかったのだぞ、ウマゴン。本当に仲良しだったのだな」
「メ……」
 嬉しげだったウマゴンの顔がすーっと曇っていく。
 涙がつーっと伝った。
 そう、ガッシュはよくわかっていた。ウマゴンと自分が『とっても仲良し』ということ『だけ』は。
 具体的内容は皆無。
「そ・れ・じゃ・あ・意味なんてないじゃないっ!」
 ティオ必殺技炸裂。
 ガッシュの首が当社比4倍ほど伸びてみる。
「大丈夫だ。私にはわかるぞ、ウマゴン」
 涙にくれる魔物の寂しい後ろ姿の肩に手を置いて、力強く断言するパートナーの姿は光っていた。
「ウマゴンとガッシュは仲良く遊んでいたのだ」
「メルメルッ」
「そう、場所は」

「「「場所は?」」」

 期待を込めて、三人分の声がハモる。


「メルメルメ〜ルメルだ」

「…………」

 微妙な沈黙。

 ティオの注視を受けて、清麿は小さく挙手しておずおずと尋ねた。
「す、すみませんサンビームさん、もっとよくわかるように……っていうか、人間語に訳してほしいんですけれど」
「そうだな、一言で言えば『大きな魔界太陽が見えるとっても素敵な場所』だ。そうだな?」
「メルメルメ〜♪」
「…………」
 それって、ものすごくおおざっぱってゆーか、主観的な意見と汎用的な表現しかないから、ほとんどの場所に当てはまるような気が……再び微妙な沈黙があり、静けさが辺りを満たした。
「ぐ、具体的な地名とかは……?」
「『森の近くの緑の丘』」
「…………」
 それ、具体的地名違う……清麿はひっそり泣けた。
「地名は『メルメルメルメ〜ルメ〜』だな」
「メルッ♪」
「いいのっ?! ウマゴンッ! あなたそれでいいのっ?! ガッシュはともかく(笑)清麿もいいのっ?! これで本当にいいのっ?!」
「俺にふるなっ、ティオ!」
「よいのだ。たとえ私に記憶がなかろうとも、私とウマゴンの友情は永遠なのだ!」
 ガッシュはシメに入っている。
「そうだな、『メルメルメルメ〜ルメ〜』意訳『くす玉蛇イチゴ桃の実のなる季節に結ばれた銀月草の漂う丘で魔界ニコニコ太陽の日差しが降りしきる中』、結ばれた二人の友情は、永遠だな」

「メ…………」

「サンビーム殿、今のは激しく違ったようなのだ!」
「メルメル」
「え?」

 えって……

「そうなのか」
「メルメルメ〜♪」
「でも気にしないのだ。のう、ウマゴン」
「メルメル」
 言うなり、ウマゴンはとびつき顔なめ、懐きまくっている。
 清麿とティオの疲労と当惑をよそに、ああもうどうでもいいや、という部分で彼らは完結しまくっていた。

「さあ、次の質問をいこうか」
「メルッ!」
「…………」
 まだやるのか、という二人の心の叫びはメルメル語以上に届いていない。

End

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