旧狩勝線(新得付近)の古レール

 狩勝峠の歴史は鉄道抜きに語ることができない。かつての旧狩勝線(落合ー新得間)の一部の土木構造物が「選奨土木遺産」に登録されるなど、その価値が見直されてきています。レールについては廃線区間についてははがされ、現役の区間も改良などによって敷設当初のオリジナルのレールを見ることはできません。しかし、幸いなことに当時大量に使用されていた外国産を主体とした古レールは、大正時代から戦前にかけて駅の跨線橋や境界柵などに再利用することが推奨され、その一部を今でも見ることができます。


 北海道官設鉄道の旭川−釧路間は、1897年より旭川側から、二年後には釧路側から工事が開始され、1907年に狩勝トンネルが完成し同年9月8日に開通を見ました。この区間にはどのようなレールが敷かれていたのでしょうか。

 「レールの旅路(太田幸夫・富士書院)」によれば現在の根室本線にはドイツ製の「ウニオン社」のレールが敷かれたと書かれています。旭川から釧路間は22.5KG(45ポンド)レールが敷かれていました。落合ー新得間の峠越え区間は例外的に当初より函館本線と同じ30KGレール(60ポンド)が敷かれました。



  •  明治5年 (1872)  日本で初めて新橋ー横浜間に鉄道が開通。イギリス・ダーリントン社のレールを使用。

  •  明治13年 (1880) 北海道初の鉄道、幌内鉄道が開通(この年は手宮から札幌まで開通)。

  •  明治34年 (1901) 八幡製鉄所が国産のレールを生産開始。

  •  明治38年 (1905) この頃より国産レールが普及し始める。昭和3年頃まで国産と輸入レールの併用が続く。

  •  明治40年 (1907) 旭川−釧路間の鉄道が全通する。

  •  明治44年 (1911) 富良野−落合間を30KGレールに交換。他の幹線も随時改良。

  •  昭和6年(1931)以降  鉄道省のレールは全て国産となる。

     旧狩勝線関連では、両端の落合駅と新得駅で古レールをつかった跨線橋を見ることができます。新得のものは1890年代のものが確認されていますが、落合のほうでは見つけられませんでした。以下、新得駅跨線橋のものを中心に紹介します。


  • レール
    CARNEGIE 1897 ET IIII

     米、カーネギー社のレール。新得駅跨線橋の中ではもっとも古いレールと思われる。「ET」とは、同社エドガー・トムソン工場の製品であることを意味する。縦棒(|)は月を表す(4月の製品)。1898年5月のものも見られた。


    レール
    UNION 1906.I.R.J

     ドイツ、ウニオン社のレール。「I.R.J」とは、Imperial Railway of Japanの略で「日本の帝国鉄道」の意味である。根室本線にはかつてこの会社のレールが敷設されたといわれる。


    レール
    R.S.W 1908 IRJ

     ドイツ、ライン社のレール。新得山スキー場近くに静態保存されているD51 95号機の下敷きになっているのも、このレールである。非常にシンプルな銘文である。他に1907年銘も使われていた。この時期のライン社のレールは函館本線に使用されたといわれている。


    レール
    マルS(マーク) NO 60 A 1911 W

     八幡製鉄所のレール。1906年以降急速に普及し、各地でよく見ることができる。アメリカ土木学会(ASCE)の規格を表す「A」が入り、月表示がローマ数字となっている。1915年など他の年銘も多数使われている。


    レール
    OH TENNESSEE-6040-ASCE-7?-1922 工

     米、テネシー社のレール。「OH TENNESSEE 6040 ASCE 10 1919 IGR 工」も確認された。 「OH」とは、「平炉」で製造したレールを表す略称だそうである。「6040」の「60」は60ポンドレールの意。「工」は官鉄発注のものに見られるマーク。「IGR」は「帝国官設鉄道」。


    レール
    CAMMELLS STEEL W 1902? SEC 605

     イギリス、キャンメル(カメル)社のレール。新得駅付近の構造物より発見。「SEC」はセクションの略か。この後の番号で規格や発注者がわかるようである。この構造物よりは、八幡製鉄所の1915、1916、1930年などが確認できました。キャンメル社のレールは「SEC537」らしきものを根室本線の他の駅のホームで見たことがある。


    レール CARNEGIE 1907 ET IIIIIIIII IRJ

     米、カーネギー社のレール。これも新得駅付近にて発見。年月表示がちょうど十勝線の開通月と一致する30kgレールである。古レールは、他所から運ばれてくることが多いが、旧狩勝線で使われたものだといいなと思ってしまうようなレールである。
     なお、このレールが確認された構造物より、裏面に「242」というロット番号のようなものが入ったカーネギー社のレールが発見されている。その他は八幡製鉄所の1914年、1929年4月製のものが使われていた。


    レール
    30 A マルS(マーク) 2601 II OH

     落合駅の日本製鉄(八幡製鉄所)のレール。皇紀2601年(1941)製と言う表示になっている。戦時色を反映したものになっている。



     


    参考にした文献・ホームページ等

    「古レールのページ」(嵐 路博・1999 http://homepage1.nifty.com/arashi/)
    「レールの旅路」(太田幸夫・富士書院・1994)
    「北海道保線のあゆみ」(日本鉄道施設協会北海道支部・1972)
    「北海道鉄道百年」(北洞孝雄・北海道新聞社・1980)
     「狩勝峠資料」(五十嵐信克)などによる
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