一枚の紛来葉書

 明治時代の年賀状です。
 


越後→十勝新得→石狩金山→石狩下富良野

 

「最近、新得に関係する明治時代の葉書を入手しました。」

「どんなものですか?。」

「紛来らしいものですが。」

「紛来って何ですか。」

「私も詳しくは知りませんが、郵便物が迷子になったり、紛れたりして転送されることのようです。」

「明治四十二年の一月の年賀状ですが、新潟県から新得、金山、下富良野(現在の富良野)と転送されて、 結局は差出人に戻ったものです。」

「なぜこんなことになったのでしょう。」

「それなんですが、宛先の住所に原因があると思ってます。」

「『石狩国十籐』という下りですが、『十籐』が『十勝』を連想させるんです。」

「間違えたんでしょうか。」

「多分、そう思います。それに、ちょっと気になることが・・・。」

「何ですか。」

「ここの『○○帳場』という下りです。」

「帳場というのを辞書で調べるとまず、(1)ある区間の距離、(2)工事現場などの受け持ち区域、(3)馬子などのたまり場、(4)勘定場。と言う意味があるらしいです。」

「(1)は関係ないと思うので工事現場の名前か、馬子や車夫のたまり場と思うのですが、当時は家の数は少ないですし、馬子のたまり場を逓送人は当然知っていたのではないかと思います。」

「ええ、そこで更に想像を膨らませてみたのですが、『石狩国の十勝線の工事現場』という風に考えると、この変な宛名も説明が付くような気がした訳です。」

「でも、鉄道の十勝線は明治四十年には開通してますから工事はとっくに終わってますよね。」

「改修工事はあったかもしれませんが、新得から金山・富良野を訪ね歩いたということは、狩勝国境に近い工事現場ではなかったかと。」

「当時はタコ労働とかあったんでしょう。」

「ええ、監獄部屋とか言われて現場によっては大変な状態だったそうです。」

「工事が終わって一年以上経ってもこの人はふるさとに戻ることは無かった・・・、宛先も曖昧な工事現場名しかわからない・・・・。葉書も届かない。」

「もしかして、亡くなってしまって線路沿いに埋まっているとかではないですか。」

「まさかね・・・・・。悪魔で勝手な想像ですから。」



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