手変り用語の基礎知識
 近代銭の変種「手変り」用語について解説。ここではその一部を画像などで紹介します。
 なお、このスペースに載せきれなかったものについては、 「近代銭研究室」のほうに紹介させていただく予定です。
 「手変り」とは
 手変り(手替り)とは、簡単に言うと変種のことです。同一貨種同一デザインで同一年号にもかかわらず、複数のバリエーションが存在するもののことです。

  • 政策上の仕様変更
  • デザインの変更
  • 極印の製造過程で発生したデザインの変化

    などに分けられます。
     年号別収集が完成したらそれで終わりということではなく、こうした奥の深い楽しみ方もあります。ただし、贋造対策や技術上の理由によるところが大きく、おのおの手変りごとの多寡にはそれほど歴史上、大きい意味があるわけではありません。これの高い安い(珍しい、珍しくない)を論じるのは収集界独自の価値観です。個人的にはあまり極端な値段をつけて欲しくないと思っています。また、極印のキズや、破損によるデザインの変化を「手変り」と呼ぶかどうかについては、収集家の間で意見が分かれることがあります。

     現・近代銭の手変りについて(製造プロセス)


     デザイン原画を見て石膏原版を作成。(10円などの製造 期間の長いコインは工芸官の作風の差?が出る)

         ↓

     石膏原版を黒鉛塗布、電鋳、ニッケル鍍金などの処理をし て硬化させたものを、縮彫機にかけて実物大の「種印」を作る。 (若干の変化が発生)

    (縮彫機が実用化される大正期中期以前は、手彫りや、模様 たがねなどを使用して種印を製造・・・大きな変化が現れる)
    (種印は多くて年間数個作成) 

         ↓

     第一圧写印(陰刻)・・・・・・・手彫りで修正(微細な変化発生)

         ↓

     第二圧写印(陽刻)・・・・・・・手彫りで修正(微細な変化発生)

         ↓

        極印(陰刻)・・・明治期にはこの段階でも修正が多かったと思われる
              (破損・目詰まりなどの補刻・修正)

         ↓

        コイン(流通貨)

  •  「有輪・無輪」
     日章の縁取りの有無を表す。旧十円金貨や、旧一円銀貨に存在する。単に縁取りの線が弱い場合をさすこともあるので注意が必要。
     「太輪・細輪」
     コインの縁取りの太さの違いを言う。「かつ縁」「細縁」とも言う。

    「太輪・細輪、太芯・細芯」

     「有孔コインの穴の大小」
     「大穴・小穴」。なお、穴がずれていたり、穴のないもの(いわゆる「小町銭」)は手変りではなく「エラー銭」である。

    「大穴・小穴」

     「年号の数字の偏位」について
     たとえば「明治○年」の「○」の数字部分の位置の変化に注目したもの。四の文字があがる場合は「昂四(高四)」「昇四」、下がる場合は「低四」「降四」などと呼ばれる。「七」と言う字が「年」の字に近い場合は「年寄り七」などと呼ぶこともある。「年寄り」といっても、老人のことではありません(^^;)。「右寄り」「左寄り」などの表現もある。

    「文字の上がり下がり」

     「桐・菊の枝と葉を分類」
     明治・大正期の貨幣の多くには桐と菊が彫られています。枝の切り口に注目した「上切り(切り口が上を向いている)」「下切り(切り口が下を向いている。)」がある。これはコインの向かって左がわの枝の切り口のことを言っています。
     葉を見る場合は桐の葉脈に注目する場合が多い。これは、菊の葉より変化が観察しやすいためと思われる。下から「第1葉」「第2葉」と呼んでいくようです。「対生」「互生」、葉脈の間隔、先が何本に分かれるかを分類している。

    「リボンと枝の切り口」

    「龍二十銭銀貨・長リボン接主脈の手変り(葉脈)」

     「欠銭・欠日」
     欠とは文字通り「欠けている」という意味。極印の目詰まりや破損で文字の一部が欠けてしまっている状態を表す。ただし製造枚数が一枚二枚と少ない場合は「手変り」ではなく「エラー銭」というのが適当だが、「手変り」としてあつかわれるこれらのものは、その欠陥のある極印がある程度継続的に使用されて、まとまった製造数がある場合である。
    旭日龍五銭銀貨「欠日」
     文字の変化
     変化は多岐にわたり、同じ用語が貨種によって違う状態を意味することもある。

  • 「ハネ本」「トメ本」−「本」の縦棒が撥ねているのと、撥ねていないもの。
  • 「ハネ明」「トメ明」−「明」の第四画の撥ね方。
  •  文字の大小−「小六」「大六」「正八」「大八」など。
  • 広狭−「広八(一画と二画の間があいている)」、「狭六(三画と四画の間がせまい)など。
  •  字の細さ・太さ−「細十」「太十」、「太年」など。
  •  傾き−「傾年」「仰七」「伏七」など。
  • 特定の画の長短−「長年」「中年」、「長大長本」、「長銭」「短銭」など。

    「太字・細字」

    「文字の大小」

    「文字の広狭」

    「特定の画の長短」

    「十銭白銅貨・大正11年(長本、短本)」

  •  竜図に着目する
     明治期の貨幣の竜のデザインを分類するもの。明治初期の貨幣は現在の貨幣の製造工程に比べて手作りの部分が多く、極印も修正などでいろいろなバリエーションが出てくる。縮彫機などの機械が導入される大正時代以降は変化はぐっと少なくなってきます。竜の図柄は非常に精緻なもので多くの変化があります。

  • 「渦」−「正渦」「偏渦(渦の位置が偏っている)」
  • 「ひげ」− 二銭銅貨などの「直ひげ」「半曲りひげ」「完曲りひげ」(S向き・N向き・2向きなとど、どの文字に向いてのびているかで表現することもある)
  • 「火焔」− 火焔の長さをあらわす「長火焔」「短火焔」など。
  • 「ウロコ」−銀貨の「横ウロコ」「縦ウロコ」、「鮮明ウロコ」「不鮮明ウロコ」、銅貨の「角ウロコ」「波ウロコ」、半銭の「13ウロコ」「16ウロコ」「21ウロコ」など。
  • 「ひれ」−「火焔」から何本の「ひれ」が出ているかで判別する。「少刺」「多刺」など。

    「一円銀貨 明治25年 前期・後期(ひれ)」

    「半銭銅貨 明治7年 前期・後期(竜のうねり)」

    「竜十銭銀貨 明治30年 小竜」
  •  「その他」
     手変りは現行のコインにも存在します。

    「議事堂五円 昭和23年の鳩」

     「手変り」に関する参考文献
      手変りについて、一部相場が成り立っているものについては日本貨幣商協同組合発行の「日本貨幣カタログ」(大抵のコイン店に置いてあります。毎年11月か12月頃最新版が発行される。)にも載っていますが、ごく一部です。主なものは次の3冊です。

  • 「近代貨幣分類図鑑」(柳生淑郎 編 ウインダム株式会社 4000円)
  • 「南鐐蔵版 地方貨幣 分朱銀判 価格図譜 付 現代紙幣・近代貨手替り銭」(清水恒吉 南鐐コイン・スタンプ社 3000円)
  • 「日本の近代銀貨-一円銀貨の部-」(書信館出版株式会社 亀谷雅嗣著 3000円)

    小冊子や、記述量は少ないですが簡単に解説したものなどは、

  • 「日本の近代・現代コイン・紙幣を楽しむための手引書<手替りの考え方(金貨より)>」(新橋スタンプ 2000年版 200円)
  • 「日本の貨幣(収集の手引き)」(日本貨幣商協同組合 1200円+税)

     この他、現在は廃刊になっているコイン専門誌「ボナンザ」などに研究者の投稿が紹介されており手変り研究の一端を知ることが出来ます。これらは、一般の書店では手に入らないことが多いです。古銭の参考書を多く扱っているコイン店や、品揃えの豊富な古書店などでさがすと良いでしょう。また、最近は月刊「収集」に、金貨の手変わりや、近代銀貨研究会の成果発表もあり、ボナンザ以来の手変わり研究ブームの到来が実感できる。
  •  「手変わり研究の歴史」について
     近代銭手変わりの研究の歴史は、意外と古く、昭和2年山鹿義教氏の「一円銀貨之歴史」においては同年号の円銀を龍図の変化、年号字の細太などによって複数に分類しており、昭和5年には浦田重松氏が「円銀の種類に就て」を「貨幣第一三六号」で発表している。その内容は、円銀を171種に細分類するというものであった。また、昭和8年の「大連泉友会拓影集」においては、「円銀の品種」としてその研究成果を221種に発展させている。

    また、昭和47年からは、枝重夫氏、佐々木秀民氏らを中心に「ボナンザ」誌上において、盛んに手変わりの研究が発表されるようになりました。しかし、昭和59年に「ボナンザ」が廃刊となり、その活動は「近代貨幣手変り研究会」として続けられました。

    しかしながら一般の収集家には、入門といえるような本も発行されず、研究成果の集約が望まれていましたが、そうした声が高まる中、田宮商会の田宮健三氏の薦めにより柳生淑郎氏が平成9年に待望の「近代貨幣分類図鑑」を出しました。

    平成15年には、円銀の修正品や贋造品の氾濫が問題となる中、近代銀貨の資産性と信頼を取り戻す目的もあってか亀谷雅嗣氏が「日本の近代銀貨-一円銀貨の部-」を出しました。その活動は「近代銀貨研究会」として発展し、書信館出版や銀座コインの協力のもと、新しい鑑定方法の確立と近代貨幣の収集熱の向上の面からも期待されているところです。


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