近代銭のにせものについて
 私は穴銭については全くしろうとです。ここでは明治時代以降の洋式貨幣を対象として述べていきます。私の少ない経験と主に文献などで得た情報です。
 どんな偽物があるのか
 偽物といっても目的によっていくつかに分類される。まず、現行貨を模した偽物を店などで使用して差額を騙し取るというオーソドックスなもの。いわゆる一般的な贋金である。この点ではコインを偽造するよりは札を偽造するほうが簡単で実入りが大きい。明治時代では、菊5銭白銅貨の図案がシンプルなものであったため、偽造貨が大量に出回ったという記録がある。最近では500円玉の偽造が発覚するまでは現行貨の偽造など無意味であると思われていた。視覚的に分類すれば自動販売機などをだますものと人間をだますものに分けられる。500円を例にとれば一見してわかるような「ザクリ」「ツルリ(切削)」など韓国の500ウォン硬貨を削っただけのものは前者で、平成9年銘の精巧な偽造硬貨などは後者である。あるコイン店主が言っていましたが、「昔から伝わっている」というものほどかえって怪しいという。偽造は使用されていた当時から存在するわけですから偽物が混入している可能性も否定できないということらしい。
 もっとも厄介なのは使用目的ではなく、コインのコレクター目当ての偽造硬貨でしょう。目の肥えた収集家がターゲットならば非常に高レベルな技術によって作られているはずで、高額なプレミアムのついたコインを狙うでしょう。

   コイン店にきいてみました
 コイン店の人ならば近代銭の偽物情報ぐらいはつかんでいると思い、手当たり次第に聞いて見ました。しかし、「よほど高額のコインでない限りはまずありません。」という意見が大勢を占めていてあまり詳しい話は聞けませんでした。そもそも偽物の話をすること自体考えようによっては失礼かもしれません。自分の店の商品に自信のある店はコインルーペを渡してくれて、商品をよく見せてくれます。逆に薄暗い店内で、商品をじろじろ見られるのを嫌がるようであれば怪しいことになります。(私の訪問先ではそのような経験はないですが。)
 偽造の多いのは「金貨・円銀・貿易銀・特年」
 「日本近代金貨」はとにかく高額です。10万円前後で入手できるとすれば、「旧1円」「新10円」など、限られた銘柄しかない。当然精巧な偽物が存在します。信頼できる大手コイン店や、日本貨幣商協同組合発行の鑑定証がついたものを買ったりするのが無難でしょう。
 「円銀・貿易銀」については私自身も出会ったことがあります。学研まんが・ひみつシリーズ「お金のひみつ」という子供向けの本にも東南アジアなどで売られている「お土産コイン」についてふれており、典型的な鋳物製の円銀の見分け方が出ています。実際鋳物製だと、本物から型を取るため若干小さくなる、出来上がって空気に触れた瞬間に金属の熱で湯気がたち、それが原因で表面に砂目ができる。その他、型に入れた際に気泡が混入していると鋳巣といわれるくぼみができたり、文字や文様の周りに鋳だまりが出来る。
 次に多いのは真鍮に銀メッキした打製のもの。真鍮製が多いのは地金の値段のせいなのだろうか。メッキしても地金の色が違っていてばれたりする。一番見分けやすいのはやはりギザをよく観察することであると考えられる。表と裏は型をとることでかなり精巧に再現されるがギザの数を同じにしてしかも形を整えるというのは至難の業らしい。あと贋物は、しばしばコインの平面がでこぼこしているものがあるという。本物は修正しない限り平面が鏡のように平らになっているとのことです。専門家はさらに造幣局製特有の特徴を観察するのだという。フローライン(流理)と呼ばれる圧印時の表面の傷や、2度打ちされて出来る重紋などを調べる。その他、科学的な薬品やX線による検査などがありますが個人ではまず無理でしょう。蛍光X線分析などを専門機関に依頼する場合は、最低でも数千円から数万円の料金がかかるようです。
 本物を眺めるに勝る勉強なし
 コインの細部をいくら調べても、比較検討する本物がなければ話になりません。また、本物にも「手変り」と呼ばれる変種が多数存在し、細部の違いだけを比べていると木を見て森を見ずの結果となる可能性があります。価格の安い本物を買ったり、高額なものについてはコイン商主催の催事などで実物をよく観察することをお勧めします。どの銘柄でもそうなのですが、本格的にその貨幣を研究史よとした場合、大量ロットを入手して個体のばらつき、味などを比較検討し、状態の悪いコインや変造品が出現しても真贋鑑定で迷いがなくなるように勉強したいものです。穴銭などは、通用銭の研究を怠るといざ偽物の「母銭」が出ても判断ができず、欲が出ると良くないものを購入してしまったりするものです。近代銭でも「手変り」を調べるには標本調査が重要になってきます。
 気をつけたい変造品と修正品
 私は経験的に言って最初から高額なコインを購入することは勧めていません。訳もわからないうちに高額な偽物や変造品を買わされてしまったらその後の収集意欲そのものが減退してしまいかねないからです。
 また、本物のコインを加工して希少性のある年号に書き換えたりする「摘み上げ」、「削り取り」etcの金属加工技術もあります。これは本物を土台にしているわけですから、その年号特有の特徴を知っておく必要があります。昔は、年号の書き換え個所の書体の周りにしみが出来るので見分けが容易だといわれましたが技術の進歩で現在のものにもそのまま当てはまるとは限りません。銅貨は贋造そのものは少ないですが、年号の改ざんが昔から知られています。また、磨り減ったりして状態の悪くなってしまったコインを修正してあたかも新しいもののように蘇らせているものもあります。必ずしも動機的には悪気はないと思うのですが、状態が非常によいにもかかわらず価格が他より安いものは要注意です。たいていは「修正品」などの表示がありますが、もし表示がなければすぐにはわからないでしょう。
 一円銀貨の場合、中国の貿易商などが「荘印(カウンターマーク)」という刻印を押したり、「チョップ」といって、傷をつけたりしてメッキの贋物を見分けることがあり、こうした「チョップ銭」と呼ばれるキズものが多数存在します。流通史を語る上では貴重な生き証人ですが、国の方針で押された「丸銀」とは違い、コレクターからは「キズ」扱いされて嫌われるため評価額が極端に低く、この「チョップ」や「荘印」を埋めて修正したものが出回るようになっています。しかし、後世になってから手を加えることのほうがむしろその古銭の価値を下げることになるため安易な修正はやめて欲しいものです。私見ですが、価格差が修正品増加の原因ならば「荘印」そのものを研究し価値を見直す必要があるかもしれません。 銀貨の場合、円銀では銀の純度は900/1000です。修正するときは加工しやすくやわらかい純銀よくを使うので色が違うということですが、口で言うほど見分けは容易ではなさそうです。経験的には、修正個所が黄色いしみのように変色している場合が多いように思います。周りの部分より痩せていたり、こすり傷がついていたりします。必ずしも色の違う銀を使用して修正するとは限りませんから、慎重に観察する必要があります。この点でも信頼できる相手(店)から購入したほうがよいです。
 この分野の参考文献
 近代銭の流通時代の偽造通貨に関しては、山鹿義教著「贋造通貨」に詳しい。昭和8年刊のオリジナル(精文館)と97年復刻された大空社の版が存在するが、両書とも絶版である。(平成13年2月現在。)
 贋造古銭については瓜生有伸著「日本古銭贋造史」(昭和61年刊同じく絶版)があるが近代銭に関しての記述は少ない。いずれにせよ両書に記述されているのは昔の贋造品であり、技術が飛躍的に発達している今日の贋造品のほうがはるかに厄介である。


偽物と本物の顕微鏡写真

 これは、子供用の顕微鏡使ってデジカメで撮影したものである(倍率150倍の状態をNikon CoolPix3500でマクロ撮影)。意外にも、肉眼で見たそのままを簡単に撮影できた。コインは光を通さないので、太陽光を直接利用するが、日照りが強すぎると反射して逆に撮影し難いと思う。
 また、多くの偽造極印は「スパーク切削法」と言われる方法で作成されることが多く、その場合、顕微鏡で見たときに「点食」といわれるブツブツが確認できる。
これは、100円ショップ(ダイソー)で販売されている料理用の「おたま」を利用して、ギザを計数している写真である。こうして、撮影したものを印刷すればコインに傷をつけずに容易にカウントすることが出来る。凹面鏡の原理を利用したものである。


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