2005.11.22
現代合唱曲の可能性に挑んだ〜第58回全日本合唱コンクール全国大会
Vocal Ensemble《EST》は、2005年11月19日、第58回全日本合唱コンクール全国大会に出演し、一般A部門“銀賞”を受賞しました。今年のコンクールは、難解な日本の新しい現代合唱曲に挑んだ体験として、《EST》の歴史に刻み込まれることでしょう。
2年計画で新たな領域を目指した!
“第7回世界合唱シンポジウム”に出演させていただけることが決まったのを機に、《EST》は新たな領域を目指してきました。それは、『今を生きる作曲家、時間軸という共通の価値観を有する作曲家が体当たりで世に問うた作品を、大切に音にしていく!』ということでした。その営みは、大いなる冒険でもありましたが、私たちに音楽する意味を教えてくれる、未来へ繋がると信じてのことでした。
今年7月の“第7回世界合唱シンポジウム”のシンポジウムコンサートで演奏したのは、昨年度のコンクールでの自由曲に選んだ『阿知女作法』(千原英喜)と、今年のコンクールでも演奏することになった『情燐戯画』〜“恋を恋する人”(鈴木輝昭)でした。
『情燐戯画』〜“恋を恋する人”(鈴木輝昭)は超難曲ですから、丹念に時間を掛けて楽譜を正確に再現し、音楽を心地良く体感できるようになるまでには、たくさんの練習と消化するための時間が必要です。そのためには、コンクールという場を利用して、演奏に集中していくのがいいと思いました。
結果的に2年計画となりましたが、今年も、去年の延長線として賞を取るための選曲とはおよそ異なる提案となったのでした。メンバー達も、私の意図に共感してくれました。こうして、新たな領域を目指しての活動を積み上げてきたのでした。
作曲家ご本人に喜んでいただけた!
今回の全国大会で、5回目のステージとなったこの作品の演奏ですが、作曲家鈴木輝昭先生に大変喜んでいただけたものだったという点で、特別なものでした。
コンクール当日の朝、鈴木先生は私たちの練習会場に駆けつけてくれました。完成間近の演奏に、大変お褒めの言葉を下さり、2,3のアドバイスも頂きました。作曲家ご本人との共同作業は本当に魅力的です。難曲であるはずのこの作品が解きほぐされて、自然に私たちの体の隅々にまで染み入っていくような幸せな感覚でした。
本番の演奏で得た感覚は、忘れることの出来ないものでした。5回のステージの中で突出して、聴衆と時空を共にしている感覚に満たされたのです。これこそ、私たちの求めていたものでした。超難解な現代作品は、器楽の世界でもそうですが、なかなか受け入れられるものではありません。しかし、作曲家を信じ、作品の力を信じ、新たな音楽を享受できた私たち。この喜びを今度は聴衆と共有したい。そのことを目標にして全国大会に向ったのですから。
本番、演奏し終えたメンバー達は、口々に言いました。「演奏の途中から客席がクーッと集中して来るのを感じて感動した!」「終わったときの拍手がこれまでで一番大きいものだった!」。そして、涙ぐむメンバーも。
“銀賞”を頂けた事も喜びでしたが、これまでの謂わば戸惑いの拍手が、この作品をリアルタイムでたくさんの聴衆に受け入れられた証である温かで大きな拍手に変わったことが、何よりの喜びでした。やはり、全国大会ですね。
打ち上げに鈴木先生、洲脇先生、長谷部先生が
こんな豪華な打ち上げは初めてでした。
まずは鈴木輝昭先生。打ち上げの席で、「演奏が終わった瞬間、私は間違いなく1位だと思いました。作曲家としてこんな嬉しいことはないです。完璧な演奏で、しかも、とても整理され、中部コンクールの時より数段良かったです。聴いていて感動しました。これは私としては珍しい体験です。私のこの作品が大変いい作品だということが《EST》の演奏でわかりました。」
このお言葉は本当にみんな嬉しかったと思います。その後も、作曲する意味や人生観など、いろんなことを話してくれました。鈴木先生は、とても強い信念のある方だと思いました。
洲脇光一先生は、「明日、私の指揮する男声合唱団の本番があるから、朝、帰らなければいけないの。」と言われながらも最後まで打ち上げにお付き合いしてくださいました。《EST》が海外に目を向けられるようにして下さった育ての親のような大切な方です。お若い頃のお話から、日本の行き詰ったコンクール事情、《EST》の今後の道筋まで、たくさん話して下さいました。お若い頃からの国際的なすごい体験を聞かせて頂き、ますます、洲脇先生の偉大さを感じました。
長谷部雅彦先生は、今年、作曲コンクールで佳作に選ばれた方。《EST》のあるメンバーの大学時代の後輩にあたるそうな。表彰式でのお姿そのままに、打ち上げ会場に来て頂きました。佳作作品『E=mc2乗』の楽譜を贈呈して下さいました。昔、彼のHPに《EST》のことを書いてくださり、それからはHPを時々拝見していました。その長谷部先生とこうしていっしょにお酒が飲めたのも何かのご縁。これからも仲良くさせていただきたいですね。
コンクールの将来
審査発表を待つ間、私はロビーで知人と話をしていました。そろそろかなって思い、客席に入っていくと、《EST》のみんなが拍手を浴びながら立っています。どうやら、大学の合唱団の歌の交換会が一息つき、《EST》にご指名がかかり、何か歌うところだったようです。会場は楽しそうでした。『おんがく』(木下牧子作曲)を演奏しました。途中でベルがなり、中断を余儀なくさせられましたが、元気な大学生に混じってみんな楽しめたようでした。
コンクールとは違ったお祭りのようなエネルギー。これは貴重であると共に、このエネルギーをきちんと受け止めたイベントにならないかなあと思いました。大学生が大人になっても合唱を続けられる世の中を本気で作っていくエネルギーに主催者が向けていかなければ、将来はないと思います。合唱することの本当の意味を感じることの出来るイベントにならないと、終わってしまいます。
コンクールが終わるといつも考えさせられます。いっぱい考えさせられます。ルネサンス部門やロマン派部門といったカテゴリー制が必要なこと、システムがあまりにも日本独自であること、演奏時間の改善、審査の改善、イベントとしての企画、一般社会との関係性、合唱する意味の共通認識・・・・・。2年後にコンクール改革が行われるようですが、人数枠の改正くらいで、あとは何も変わらないそうです。
《EST》の将来
コンクールは終わりました。《EST》は、この2年間で、日本の現代音楽の難解なものに取り組めるようになりました。作曲家に喜んでいただける演奏、たくさんの聴衆の心に感じていただける演奏まで、クオリティーを高める営みが出来るようになりました。これは、《EST》の、私の財産となりました。
今後の方向性は?
一つ目は、ポリフォニーを見直したいです。ロマン派を経験していない時代の音楽の真価を演奏で実現したいと思います。二つ目は、日本民謡やわらべ歌を合唱として蘇らせ、合唱をしない人々からも生活の中で口ずさんでもらえるような時代にしたいです。それが、世界から見た日本固有の音楽となり、世界中で日本の合唱曲が演奏される時代となるのではないでしょうか。三つ目は、聴衆ともっと心開き合える音楽ですね。これは、2年間のストイックな取り組みの反動かも。まあ、バランスのいい活動としての揺り戻しかな(笑)。お客様の期待の声が聞こえてきます。
コンサートとコンクールを一つの時期に終えてしまう《EST》。これからのしばらくは、じっくりと来年度以降の足元を固める時期です。初心者
OKの団員募集も。その中で、上記の方向性を踏まえたビジョンが頭を駆け巡り始めた私。来年は、海外演奏も視野に入れていきます。楽しみです。
2005.12.5
津市民音楽祭〜ほのぼのと満足に
Vocal Ensemble《EST》は、2005年12月3日、津市民音楽祭に出演しました。
コンサートとコンクールを終え、ちょっと楽になったメンバー達が集まってきます。そのリラックスした感覚と、ゆったりと時間を掛けた練習で、何ともいえないいい雰囲気で本番を迎えることができました。
この日の演奏曲は、“There is a flower.”(Rutter)、“To es Petrus”(Durufle)、おんがく(木下)。
“There is a flower.”は、《EST》スコラーズで演奏しました。イエスを“花”にたとえた美しい歌。加藤さんの長いソロで始まり、愛らしいコーラスが続きます。Rutterらしい親しみやすい旋律。福本君の真摯なソロが真ん中に入り、美しいヴォカリーズで盛り上げていきます。最後の収めはまた加藤さん。満ち足りたハーモニーで美しく決まりました。
“To es Petrus”(Durufle)は、コンサートの再演です。細野さんの先唱に続き、4声のポリフォニーでグレゴリオ聖歌を基にした旋律を生き生きと歌い上げます。最後のG durのffが会場に豊かに響きました。
「おんがく」は、CD『春に』に収録した曲ですが、紛れもない《EST》の愛唱歌。新潟の客席で途中までしか歌えなかったこともあってか【笑】、この日の演奏は本当に充実していました。この曲、何度演奏しても、まだまだ新しい演奏が出来ますね。CD録音した頃よりもはるかにいい演奏が出来ました。
リージョンプラザは1年半ぶりでしたが、本当によく響く理想的なホールでした。この日のように満席でない方が響きはいいですね。歌っていて幸せになるホールです。出番が最後で、夜9時前の演奏だったのですが、残ってみえた聴衆の方々は紛れもなく《EST》を聴くためだったわけで、とてもいいお客様方でした。
いい演奏が出来る条件はいろいろありますが、この日のようにメンバーたちがリラックスし、音楽することだけのために余裕を持って時間を共有し、歌いこんである曲をさらに磨き上げることを楽しむ・・・。これって、最高の条件であり、今年の《EST》にはなかなかなかったことです。そして今年たくさんの成長をしたメンバー(同じ釜の飯を食った仲間)が今年最後のステージをこんなほのぼのした雰囲気で終えられたことは、私にとって幸せでした。
みんなのいい顔、満足な顔は、私の喜びです。
次の日の練習で、ある団員が「母親の知人が昨日初めて《EST》を聴いて感動したらしく、母親に電話があった!」と伝えてくれました。もう、ベテランメンバーの域に入ってきた彼女ですが、いつまでも、こういうことを喜びとしてくれるピュアな人です。こういう一言が、私も次へ向かうエネルギーとなります。
「次へ向かう!」。次とは、『アレッツォ国際合唱コンペティション』への出場です。いろんな国際イベントの資料をみんなで集め合い、団員へのアンケートもとり、最終的にアレッツォに決定しました(正式には11日に)。ただ、世界3大コンクールとも言われている『アレッツォ国際合唱コンペティション』。予選のテープ審査も難関ですから、出場できるかどうかもわかりません。しかも、約60分の演奏プログラムを準備しなくてはいけないとてつもないコンクールです。が、いろんな先生方のアドバイスを頼りにここまで来た《EST》。これまでの集大成としての活動になればと思っています。みんなの意識は“早イタリアへ!!”です。
2005.12.30
《EST》スコラーズが“あふみヴォーカルアンサンブル”コンサートに出演

Vocal Ensemble《EST》の核となるメンバーで構成された《EST》スコラーズ。4代目である2005年度のメンバーは、途中で入れ替えを余儀なくされ、現在、以下のメンバーで活動しています。
ソプラノ 伊賀 千恵 / 加藤 あかね / 塩谷 茜 / 細野 裕美子 |
アルト 常住 光子 / 中村 敬子 / 山羽 貴久子 |
テノール 福本 三喜 / 松井 佑輔 |
ベース 常住 信教 / 寺田 昌樹 / 土井 誠 / 原田 雄二郎 |
今年度の最大の行事は、滋賀でのステージでした。2005年12月17日、あふみヴォーカルアンサンブル クリスマスコンサート2005 −ESTスコラーズと共に (あふみヴォーカルアンサンブル:主催)に出演させていただいたのです。(場所:長浜市 六角館ホール(六荘公民館))
三重県津市で1回、滋賀県長浜市(本番のホール)で1回、合同曲の練習をし、当日リハーサルを経て本番に臨みました。その間、練習や食事を通じて、両グループのメンバー達がとても仲良くなっていけたのが印象的でした。
宝塚国際室内合唱コンクールで私たちとご一緒され、その後、加藤さんがヴォイストレーナーとして招かれ、いわば、私たちと同じサウンドを目指す同志として活動しているといっても過言ではないあふみさん。指揮者がいないのが大きな特徴です。それだけに、一人一人が自発性に優れ、特にルネサンスポリフォニーを演奏する時の姿には、見習うべきものがたくさん。スコラーズメンバーにも大きな刺激になったようです。
合同曲では私が指揮に当たりましたが、両グループのサウンドや表現が素早く溶け合っていくのが驚きでした。指揮者を置かないあふみさんの自発性を生かせるよう、気を配りながら一生懸命やらせていただきました。ただ本番、お客さんととても近い距離にいながら、振りは大きく、子音を発する指揮(笑)になってしまったことを反省しています。近くのお客さんにとってはかなり迷惑な指揮振りだったことでしょうねー。
お客さんが近いことが嬉しい面も。それは「みかんの花咲く丘」だったでしょうか。振り終えた直後に、客席から「すばらしい!」と子音で呟かれたお客さんがいらっしゃったのです。拍手もざわめきもとても近くで感じられ、お客様の顔が見えないだけにこれらの“音”がうれしかったです。
演奏は、どれも、大変満足の行くものでした。曲目を下に掲げます。(あふみさんのHPよりコピー)
I.「イタリアの風」(あふみヴォーカルアンサンブル) なんと麗しいのでしょう Qum purchri sunt (パレストリーナ Giovanni Pierluigi da Palestrina) 西風戻り Zefiro torna (マレンツィオ Luca Marenzio) 私の命の命 Vita de la mia vita (ハウレイ William Hawley) 波はささやき Ecco mormorar l'onde (モンテヴェルディ Claudio Monteverdi) II.《EST》スコラーズ「ベスト セレクション」 (《EST》スコラーズ) オブラディ・オブラダ Ob-la-di,Ob-la-da (Lennon&McCartney作詞・作曲 Ives編曲) 安里屋ユンタ (松下耕 作曲) 島唄 (信長貴富 編曲) チリ・コン・カルネ Chili Con Carne(Anders Edenroth作詞・作曲-Real Group-) III.「懐かしい日本の歌」(あふみヴォーカルアンサンブル) 一番はじめは (わらべうた 信長貴富 編曲) 通りゃんせ (わらべうた 信長貴富 編曲) 江戸の子守唄 (わらべうた 信長貴富 編曲) ずいずいずっころばし (わらべうた 信長貴富 編曲) てぃんさぐぬ花 (沖縄わらべうた 信長貴富 編曲) IV.「あふみ&EST フェイバリット アラカルト」あふみヴォーカルアンサンブル&《EST》スコラーズ
指揮:向井正雄(ヴォーカルアンサンブル《EST》 音楽監督)北極星の子守歌[男声) (谷川雁 作詩 新実徳英 作曲) めばえ[女声] (みずかみかずよ 作詩 木下牧子 作曲) 赤とんぼ[混声] (三木露風作詞 山田耕筰作曲 信長貴富編曲) 村の鍛冶屋[混声] (作詞・作曲者不詳 信長貴富編曲) みかんの花咲く丘[混声] (加藤省吾作詞 海沼実作曲 信長貴富編曲) さびしいカシの木[混声] (やなせたかし 作詩 木下 牧子 作曲) おんがく[混声] (まど・みちお作詩 木下牧子 作曲) V.「クリスマスソング集」(あふみヴォーカルアンサンブル、《EST》スコラーズ(※)
指揮:向井正雄(※)めでたし、海の星よ Ave maris stella (バルドッシュ Lajos Bardos) 聖しこの夜 Silent night (Josef Mohr作詞 Franz Gruber作曲 Antony Pitts編曲) おめでとうクリスマス We wish a merry Christmas (Traditional carol Artheur Warrell 編曲) ホワイト・クリスマス White Chritmas (Irving Berlin 作詞・作曲 David Duesing 編曲) ※ある木に咲いた花 There is a flower (John Audelay作詞 John Rutter作曲) ※あら野の果てに Angel we have heard on high (フランス古謡 John Rutter編曲)
アンコールの『赤鼻のトナカイ』は、振り付けをつけて踊りました。会場からは、最後の一人が退場するまで熱い拍手が続きました。大成功でした。
コンサートを終えた後も楽しかったです。あふみさんの計らいで、コテージを借りて時間無制限の打ち上げです。持ち込まれたパーティー用のたくさんのお料理とお酒。すっかり仲良く入り乱れて、もう何年も前から仲が良かったように笑いの耐えない時間でした。最後に寝たのは夜中の3時とか。
翌朝は、銀世界に包まれました。きれいでしたねえ。でも、あふみの方々にとっては毎年の当たり前の風景だったらしく、代表の長谷部さんの2人のお子さん(いつも行動を共に)もちっとも驚きません。逆にスコラーズの面々は雪合戦を楽しみ、誰かさんはステーンと転んで後頭部を打ち・・・・・。
その後、観光案内まで。お昼にはおいしいお店に案内してくださり、そこで食事を共にしてお別れ。とてもお世話になりました。最後は「今度は三重県でいっしょにやりましょう!」と誓い合いました。そしていつまでも私たちの車を見送ってくれました。
このコンサートで得たものはたくさんあります。ルネサンスポリフォニーをたくさんやりたくなりました。音楽への素朴で温かな喜びに立ち戻ることが出来ました。活動拠点は離れていても同じ響きを目指す同志を身近に感じあえる機会でした。あふみさんもきっといろんな目に見えないものを得ていただけているといいのですが。
スコラーズの今年もっとも大きな演奏の場は、こうして、雪景色に劣らない美しい思い出として、しっかりと心に刻まれたのでした。
2006.1.25
新曲との理想的な“出会い”を求めて・・・・
新しい練習曲に取り組む1回目の練習は、いわば、その作品との“出会い”。どの合唱団にも、それぞれの個性に応じて、“出会い方”をいろいろと工夫されているのではないでしょうか。
Vocal Ensemble《EST》でも、今、次の年度(2006年4月〜)の行事でのレパートリーを作っていくためのたくさんの新曲に取り組んでいますが、以下の幾通りかの方法で、個々の作品との初日の“出会い”を迎えています。
パート練習で譜読みを終えて全体練習で音楽的なアプローチをしていくという“出会い”。4グループに分かれての小アンサンブルで取り組んでいくという“出会い”。全体の場で楽譜を配り即その場で合唱していくという新曲視唱の形態での“出会い”。難易度が高く“出会い”の形が不十分だった作品は、男声女声に分かれてアンサンブルを見直す練習も入れていきます。
その一つ一つに大切な意味があり、合唱団としての有機的な実力を形成する貴重な練習です。週に一度のたった数時間という限られた時間に、いろんな工夫を凝らして合唱を目いっぱい楽しもうというみんなのエネルギーがこれらの練習を支えています。
システムの工夫だけではいい音楽はできません。作品との“出会い”の段階から、いかに音楽を個々のメンバーが自発的に出すか。この意識が大切です。歌う力や譜読みにかかる時間には、個人差がありますから、まずは、できるメンバーたちが先取りして表現し、練習の場を自発性ある雰囲気で満たし、他のメンバーたちを触発していくことが必要でしょう。例えば《EST》スコラーズが中心となり、有志の合唱としてみんなの前で披露するというのはとても効果的です。
4つのグループでの小アンサンブル練習は、『団内アンサンブルコンテスト』(今年は2月19日の合宿時)に繋がっていきます。課題曲と自由曲を演奏し、豪華(?)景品を伴った《EST》の楽しいイベントです。先日、その課題曲であるシュッツの作品を全員で歌ってみました。全員で歌うのが初めてであったにも関わらず、とてもいいサウンドでした。「バロック的な要素を加味しよう」と一言加えてもう一度通すと、また趣が変わりました。これは練習の楽しい一こまでしたね。各グループで一人一人が十分歌いこんであったのがよかったのです。すっきりとしたサウンドでの“出会い”でした。
マーラーの『交響曲第8番』の練習に、本番指揮をされる大谷正人先生が《EST》の練習に来られました。2時間弱の練習で、全部にあたられたのですが、残念なことに《EST》のメンバーは彼のペースについていけませんでした。原因は、楽譜に接する時間が少なかったことに尽きます。一通りは《EST》の練習でやってあったのですが、この日に向けての心構えが足りなかったことは明らか。どんな心構えがいるかもわからなかったのではないでしょうか。オーケストラの練習は、開始時間とは指揮棒を振り下ろす時間です。チューニング、個人練習等は開始時間までに済まし、いつでも音楽出来る状態で席に着いて開始時間を迎えます。その感覚で指揮者は練習を始めます。音楽を止めてはいくつもの要求をし、一度のやり直しですべてが改善されることを期待しての練習です。譜読みも歌いこみも足りない状態でしたから、この日の練習はギャップが生まれた練習でした。温和な大谷先生でしたが、私には大谷先生の胸中が痛いほど察しられました。次回は3月。頑張りたいものです。
いい練習とは、いろんな表現の可能性に対し、柔軟に実現できる練習のことでしょう。そのための技術の向上。そのための様々な楽譜解釈。そのための開かれた感性・・・・。もちろん、私の練習方法にも工夫が要ります。難しいことですが、その代わりたとえ一瞬でも予期せぬほどすばらしい音楽に体を委ねられたとき、その場にいるメンバーたちは共に至福の時を共有することができます。次の練習への欲求も増えていきます。そうして、お互いが自分の感性のありのままを十分に発揮し合い、お互いの表現を尊重し合えるような場になって行けば最高です。
ルネサンス時代の小アンサンブルから、オーケストラとの大合唱まで、あらゆる形態の合唱をバランスよく取り組み、豊かな音楽人生をメンバーたちと共に送りたい。そう思っている私ですから、得意分野と苦手分野が混じっている今の《EST》がとても大切です。伸び盛りなのですから。(永遠に伸び盛りであることが音楽活動にとって大切)
新曲との“出会い”を素敵なものにして行こうと営むこの時期です。新たなメンバーも加わりつつあります。知恵と団結で、楽しくエネルギッシュにまずは新年度(4月)まで持っていきたいものです。夏のイタリアでの演奏も待っています。
《EST》スコラーズの存在〜第17回三重県合唱アンサンブルコンテストを終えて
2006年2月5日に催された第17回三重県アンサンブルコンテスト一般の部にて、《EST》スコラーズは、金賞・最優秀賞を受賞しました。(当日の様子・審査結果は、こちら)
《EST》スコラーズは、今年は、『ずいずいずっころばし』(信長)と『安里屋ユンタ』(松下)の2曲で出場。わらべ歌や島唄を選んだ目的は、宇治山田高校の「4グループそれぞれの“集団作り”〜第17回三重県合唱アンサンブルコンテスト」に記したとおりでした。
『ずいずいずっころばし』(信長)は、このイベントのために譜読みをしました。『安里屋ユンタ』(松下)は昨年12月のあふみヴォーカルアンサンブル クリスマスコンサート2005 −ESTスコラーズと共に での演奏の再演でした。ただし、あの時と違って指揮はなし。(このイベントのルール上、指揮者は置けません)。
動と静、リズムの楽しさと内容の深さ、それぞれの味わいを出して、作品の持ち味に迫る演奏でした。特に、『安里屋ユンタ』のフィナーレに向う大きな山をダイナミックに表現してくれたのが印象的でした。
「三重県内の聴衆、特に高校生に、“夢や勇気を与える演奏”をしよう。」
リハや本番前に繰り返し言った言葉です。《EST》スコラーズがこのイベントに出る意義もそこに見出してきました。アンサンブルの理想に向っている姿を高校生に感じてもらう。そのことがいい影響をかもし出し、周りも変化する。そうすると全体もが変わっていく。・・・・・ここ数年、県内のたくさんの団体が、いい方向に来ているように思います。したがって、コンテストのレベルがドンドン上がってきている・・・!そのことに、少しでも《EST》スコラーズが貢献してきていると思えることが、嬉しいです。
さて、4代目《EST》スコラーズの最後のステージが終了しました。この1年を振り返ってみると、メンバーの出入りなどがあり、落ち着かない時期がありました。《EST》スコラーズの一番の目的は、“全員の中の核となること”で、毎回の定例練習を支え、全体の音楽的向上を目指す役割があるのですが、私やトレーナーとの連携、《EST》スコラーズ同士の信頼関係もままならない時期があり、本当にみんな苦しかったと思います。今だから言えますが・・・。
11月になって、メンバー構成が代わり、ヴォイトレの加藤さんが復帰してからは、特に女声陣が本来の明るさを取り戻し、みるみる内に音楽的な結束力を高めていきました。楽になったのでしょう。こうして、いい顔で、12月と2月のステージを創造し終えられたことは、良かったと思います。
考えるに、コーラスアンサンブルは、弦楽4重奏などの室内楽と同じ。あうんの呼吸でお互いの音楽性を信頼しながら、協調して、新しい味を出していくわけです。お互いに信頼できない状態になってはいいアンサンブルなど創造できません。心から信頼できない部分を我慢してやっていても、ある程度のものはできても、“味”までは出せないでしょう。音楽に嘘はつけません。
5代目の《EST》スコラーズは、スタートからゴールまで1年間、理想を突き進んで欲しいものです。技術うんぬんは後から付いてきます。大切なのは、“信頼”。音楽をいっしょに創造できる丸裸の“信頼”です。
そして、それは《EST》全体にも言えること。今は、フレッシュなメンバーが何人か加わり、新たな気持ちでみんなワクワクしている季節です。その全員が心開いて存在し合える状態を作りたい。それは偶然出来るものではなく、みんなが同じ気持ちで創り合ってこそ出来るもの。環境は、創りあい、守りあい、確かめ合うものであると思います。私は、音楽監督ですが、音楽の前提となる環境に関しても責任ある立場になりたいと思っています。その想いが《EST》スコラーズにも敏感に伝わり、全体に広がっていくようになればいいと思います。
メンバーみんなで伸び伸びと音を創りあう喜び。
その喜びの前提となる環境。
明日からの合宿で、さっそく、試みたいと思っています。
『夢の世界』と言って頂いた合宿
Vocal Ensemble《EST》は、2005年度最後の合宿を終えました。
はるばる福島県から視察に見えた安積合唱協会の村田さんが、最後のお言葉として、「夢の世界にいるようでした。・・・・」とおっしゃられたのが印象に残っています。密度の濃い、エネルギー溢れる合宿でした。(ここをクリックして画像をお楽しみ下さい。)
ソロコンテスト
昨年2月に続き、2回目のソロコンテスト。昨年は初めてということで、私が進行しましたが、今回は、福本君と加藤さんの準備、田辺君と森君の司会で、楽しく進められました。
加藤さんによる個人ヴォイストレーニングの1年間の成果と、アンサンブルに必要な表現力を発表しあう、大切な場。今回は、昨年を上回るトータルで32名の参加となりました。高い参加率です。
昨年と比べ、レベルが俄然上がっています。そして、楽しさ溢れる演奏が続きました。トスティ「もう貴方を思わない」、プッチーニのオペラ“ボエーム”より「アリア 私の名前はミミ」から、モーツァルト「恋とはどんなものかしら」、シューベルト「音楽に寄す」、他に、團伊玖磨、山田耕作、滝廉太郎などの日本歌曲、イタリア歌曲、ポピュラーなど、バラエティーに富んだ作品が並びました。
「皆の前で歌を発表する」という行為は、大変なことだと思います。それにも関わらず、このような楽しい雰囲気で乗り切ったみんな。そこには、意義を理解し、励ましあい、・・・・の光景があったことでしょう。特に学生が頑張ってる姿はとても微笑ましかったです。達成感は格別なものがあったことでしょう。
この行事、合宿のひとコマだけではもったいない!と考え、来年は、会場を借りて、公開で催します。
●『歌の発表会』2007年1月7日 PM13:00〜16:00 於;三重県文化会館第2リハーサル室
デュエットや小アンサンブルも含めた、楽しい発表会になればと思っています。整理券制にしようかと考えています。
アンサンブルコンテスト
このイベントは夏や秋の合宿でも行っていますが、大規模なものは毎年この時期の合宿で催されます。今回で5年目になります。
プログラム(福本君:作)を掲げてみます。雰囲気をお察し下さい。
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第5回《EST》団内Ensemble Competition
世話役:あかねとさんき 2006年2月18・19日(土・日) ☆ Timetable ☆
☆ Jury ☆ 向井 正雄(Music director,Conductor)加藤 あかね(Ensemble trainer,Voice trainer)細野 裕美子(Soprano part leader)常住 光子(Alto part leader)福本 三喜 (Tenor part leader)寺田 昌樹(Bass part leader) ☆ Prizes and Special Prizes ☆ ・各部門の全グループ、金・銀・銅のいずれかを与える ・全出演団体に順位を付け、最優秀賞を1位のグループに与える ・審査員特別賞もある ☆ Compulsory works ☆ Quoniam ad te clamabo 作曲:H.Schutz ☆ Programms ☆ 〜Official〜 1. group C S 白方晴子、伊賀千恵、大西智歌 A 常住光子、藤田沙織、佐藤結 T 鈴木貞夫、松井佑輔 B 寺田昌樹、三木茂樹、山本先生 【自由曲】 Lamento d’Ariannaから”Lasciate mi morire”
作曲:C.Monteverdi 2. group A S 西川美穂、細野裕美子 A 中村敬子、山羽貴久子、大畑未来 T 野田肇、野村能寛 B 北田誠治、野呂郷太、中山健太、伊藤彰利 【自由曲】 Hymne 作曲:J.Rheinberger Abendlied 作曲:J.Rheinberger 3. group B S 森本りえ、近藤香織、塩谷あかね A 岩脇香織、角田奈々 T 福本三喜、森亮太 B 土井誠、原田雄二郎、東峯雅敏 【自由曲】 Barcarola 作曲:B.Corona 4. group D S 加藤あかね、田端苑香、小林綾 A 染川めぐみ、荒木茉莉子、奥田菜穂 T 西川喜紀、麻生治夫、金田理志 B 常住信教、田辺和志、橋爪大輔 【自由曲】 “SONG OF ARIEL”からV 作曲:F.Martin 「おてわんみそのうた」から「でんでれずんば」 作曲:三善晃 〜Free Duo(Trio)〜 2. 頑張ろう、ベース! 3. きくりん&さおりん 4. Angel Voices 〜Free Ensemble〜 1. スコラーズ(笑) 》Mixed《 S 加藤あかね、森本りえ A 藤田沙織 T 福本三喜、森亮太 B 原田雄二郎 【曲目】 ペチカ 作曲:山田耕筰 編曲:信長貴富 2. ブリリアント ヘッド ボイス 4 》Females《 S 近藤香織、森本りえ、伊賀千恵 M 白方晴子、大畑未来 A 藤田沙織、土井誠 【曲目】 ほたるこい
作曲:小倉朗 3. 今年もモン吉 2006 〜アレッツォから愛を込めて〜 》Mixed《 C 伊賀千恵 Q 細野裕美子 A 常住光子 T 福本三喜 B 寺田昌樹 【曲目】 A un giro sol de’bell’ occhi
作曲:C.Monteverdi 4. We are Sam! 2007 》Mixed《 S 伊賀千恵 A 藤田沙織、荒木茉莉子 T 森亮太 B 寺田昌樹 【曲目】 Can’t Buy me Love 作曲:ビートルズ 5. やまい聖歌隊 》Mixed《 S1 細野裕美子 S2 山羽貴久子 A 岩脇香織 T 福本三喜 B 原田雄二郎 【曲目】 Scendi dal Paradiso
作曲:L.Marenzio 6. 床屋さん 》Males《 T1 松井佑輔 T2 野村能寛 B1 野呂郷太 B2 原田雄二郎 【曲目】 Scarborough Fair~The sound of silence~Bridge
over Troubled water 作曲:不明 7. メンズ田辺 》Males《 T 藤田沙織、金田理志 B1 田辺和志、松井佑輔、野呂郷太 B2 寺田昌樹、中山健太 【曲目】 Dulaman 作曲:Michael Maglynn |
このコンテストに向けて、各グループは、メンバー発表からの約2ヶ月間、全体練習の前後や別な日にも集まって練習しました。Official
とDuoとFreeの複数グループに出場したメンバーは、すごいエネルギーで、盛り上げてくれました。合宿中の時間の隙間を狙って最後の仕上げにも余念がありませんでした。この雰囲気が合宿を生き生きしたものにしてくれていました。
講評の最後で私が言ったことは、特にFree部門のレベルの高さと、それでも審査は厳しくなったということでした。楽譜を再現する意味と、人の心に何を届けるのかを考えようということでした。
いい発声、いい音律、いい耳・・・・・ しかし、そのことにプラスして、人の心を打つ要素が欲しい。これからの《EST》の音楽にもいつも込めて行きたいものです。言うのは簡単ですが、永遠の課題ですね。
譜読みの力を伸ばす
譜読みについては、初見が効く人と、全く楽譜を読めない人とが混在しているのが、アマチュア合唱団の現状ではないでしょうか。《EST》でも、音取りテープなどを作っているパートもあり、苦労しています。
「何とか譜読みの力を伸ばしたい」ということで、合宿で始めている“視唱コーナー”。発声や表現とも絡め、加藤さんの担当で行いました。男女のペアでお腹の動きを確認しあったり、固定ドで視唱したり・・・。苦手な人は得意な人とペアを組みます。集団でやることですから、プレッシャーはなく、やはり、楽しくやれたのがよかったと思います。
最近は、譜読みの簡単な新曲は、パート練習なしで、皆で視唱しながら練習に入っていきます。効率的に楽しく作品の中身に入っていけるような工夫。大切にしていきたいです。
超難曲の『リリケ・アモローゼ』(鈴木輝昭)も、目処が付いてきました。嬉しかったのは、「これって譜読み簡単ですよねー」と言うメンバーがたくさん現れたこと。勿論、簡単ではないのですが、昨年の『情燐戯画』の経験が効を奏しているのです。
“リズム体操のコーナー”も楽しい朝のひと時です。伊賀さん担当で、すっかり定着してきました。私がみんなに笑われるコーナー。いつからこんなに体の動きが鈍くなったんだろう・・・・・・・・・(泣)。
「アレッツォに向けて」を合言葉に
今年の合宿で特に感じたのは、みんなが、「アレッツォに向けて」を合言葉に気持ちに張りを持って進み始めている・・・という雰囲気でした。現在参加希望は33人。それに、私と、何名かの同行者が加わります。バルセロナの時が24人(私を入れて25人)でしたから、大変賑やかな旅になります。仕事や試験で行けないメンバーもいますが、それでも、この雰囲気は楽しかったことでしょう。
全部で70分近くのレパートリーを持ってイタリア入りするわけですが、この合宿までで、ほとんどの曲に触れることが出来ました。それも、ただ触れるだけではなく、音楽的な目標、完成された時の姿などもわかるような練習をしました。それにより、これからの音楽作りの道筋が見えるような工夫をしたつもりです。
過去の演奏曲もふんだんに盛り込みましたが、驚いたのは、それらの曲の1回目の練習としての完成度がとても高かったことです。何年か前にやった曲のことが頭や体に残っているんです。新たなメンバーもたくさんいるのですが、その中で出てくる全体としての音楽に、震える位感動したのは私だけではないでしょう。特に、「Water
Night」「おらしょ」に感動しました。同時にこれからが楽しみになってきました。
今回の合宿に初めて参加した新メンバーは、小林さん、森君、伊藤君、東峯君、橋爪君。みんな20歳前後の若者ばかり。これらのメンバーの心を充分に動かすことの出来たすばらしい合宿だったと思います。音楽的な推進力となったメンバー、若いエネルギーに引っ張られながらも楽しんだ熟年メンバー、それぞれの世代を超えて盛り上がった合宿でした。
そして、それを2日間、見てくださった安積合唱協会の村田さんの「夢の世界にいるようでした。・・・・」
この言葉を糧にしたいと思います。みなさん、本当にお疲れ様でした。
2006.5.6
TOKYO CANTAT 2006『11の島からのメッセージ』に出演
2006年4月30日、ヴォーカルアンサンブル《EST》は、TOKYO CANTAT 2006〜『11の島からのメッセージ』に出演しました。(すみだトリフォニーホール)
全員のステージは5ヶ月ぶり
5ヶ月というのは、結構、『溜め』ができるものです。昨年12月始めの“津市民音楽祭”からの5ヶ月の間、「ポジションを下に保つ声への取り組み」「イタリアへ持って行くレパートリー全曲の歌いこみ」「たくさんの新入団員との交流」「スコラーズのコンサート」「新たなスタッフ体制の確立」など、多くの活動を経ました。
団の雰囲気も新鮮なものとなり、大いなる楽しみを抱き、7回目の東京でのステージに向いました。
当日のリハーサル
前日の夜まで地元津市で練習し、そのまま夜行バスで行く学生組、翌朝新幹線で向かう者など様々。11時半のすみだトリフォニーホール集合まで、自由に行動しました。今年は、タイムテーブル上の練習時間だけで本番を迎えるのです。
リハーサル室前の係りの千葉大学の学生さん曰く。「関西の方々は東京の方々と違って賑やかですねえ!」 それほど、リハーサル室の前でみんなのテンションは高かったです。久しぶりの本番、5ヶ月の営みの披露、すばらしいホールの響き、質の高い聴衆・・・・いくつものワクワクに胸躍らせています。
3回のリハーサル(リハ室→ステージ→本番直前のリハ室)での皆の集中力は嬉しかったです。グググッと本番に持っていく確実な盛り上げ。忘れてはいません。
ステージリハでは、栗山先生始め、たくさんの音楽樹の方々や他の合唱団の方々にも聴いていただきました。最後の振り付けやちょっとした趣向に大変受けて下さいました。これで皆、自信が付きました。「最後に笑いが取れる!」という。(笑)
本番
この日の、『11の島からのメッセージ』は、会期中に催される4回のコンサートのうちの1回目。11の合唱団によって催された、結果的に4時間近くの大きなコンサートでした。
プログラムの素晴らしさは例年どおりで、歌詞と訳詩は勿論のこと、曲目や作曲家の詳細や、地図資料、合唱団や指揮者の紹介(合唱団員の1人1人も名前が紹介されています)までもが、詳しく掲載されていました。他のイベントもあわせ、1週間分の全ての情報が満載で、128ページにも上るものでした。
開演は15時。《EST》の本番は17:50分。今回は予定時間ピッタリです。藤井先生曰く「音楽樹主催でこんなことは初めてだよ。」
女優の竹下景子さんの紹介で、 《EST》のメンバー達は朝からの高いテンションを保ちながらステージへ出て行きます。 曲目は下記の通りでした。
| Misa for unaccompanied choir “Kyrie”(フィリピン) | Cayabyab |
| Misa for unaccompanied choir “Agnus Dei”(フィリピン) | Cayabyab |
| Alleluia(フィリピン) | Consolacion |
| Diu diu dang ah(台湾版きしゃぽっぽ) | Chen Yi |
フィリピンの作曲家 Cayabyabのミサは、地声歌唱によるソロと、4人のカルテット、そしてミステリアスな合唱を伴う、大変魅力的な作品です。メンバーの近藤さんの始めの長いソロは、フィリピンの古来からの原住民を思わせるような、ピーンと張ったこぶしの利いた響きのある地声でした。あっぱれです。続く常住さん、岩脇さん、中村さんも果敢に地声発声に向って雰囲気を高めていました。4重唱は、加藤さん、常住さん、野田君、土井君。
こういったヨーロッパにはないサウンドの曲は、アジアの一員としてドンドン取り上げて行きたいです。
3曲目のConsolacionは、まだ20歳のフィリピンのコーラスシンガー。Alleluiaは、甘いメロディーとロマンティックな雰囲気に満たされます。今回は、この曲の演奏に対する評価が高かったです。「美しさに涙が出てきた!」と何人もの方々がおっしゃってくれました。また、どこかで演奏してみたい作品です。
最後は、中国の作曲家Chen Yiの「台湾版汽車ぽっぽ」。始めから終わりまで振りを付け、汽車の様子を体中で表現しました。私のパフォーマンスも! 最後の決めは、テナーの西川氏の「錦糸町〜錦糸町〜♪」という掛け声。ドット会場は受けてくれました。そのまま、鳴り止まない拍手の中、みんなで、汽車ポッポの振りとボイスパーカッション(?)で退場。たった一人残った常住氏の「次は〜アンサンブルPVD〜♪」と次の合唱団を紹介しての退場で締めました。会場のざわめきの残響がとっても心地良かったです。
総勢39人。県外ステージとしては最多でした。しかも、上への響きと下への重心保持を合言葉に、前に向う強さを伴った声作りも成果を出し、迫力を感じていただいた方々が増え、技術的な達成感も得られ、よかったと思います。演奏後すぐに入ってきたメールで「新しい境地を開かれましたね」とまで褒めて下さった方もいました。
初体験メンバーとお別れメンバー
すぐにみんなで円になって軽い解散式。今回、6人の新人が初ステージでした。「初ステージが東京なんてすごいすごい!」と皆に称えられながら感想を一言づつ。未来の明るさを感じる一時です。新人の中には、昨年のTokyo Cantatに名古屋から駆けつけてくれた三重大学合唱団の若者もいます。彼は現在副指揮者ですが、この体験が大学でも生きるといいなあと思います。
また、東京に転勤になった西川氏は、この日最後のステージでした。「錦糸町〜錦糸町〜♪」という掛け声ソロを大変喜んで引き受けてくれました。「僕の心を捉える子が何人もいた!」という40代らしい(おじさまらしい)発言も爽やかに、「今まで本当に楽しかった」と言ってくれました。
合同演奏
今回の企画である“合同演奏”。400名以上のメンバーで、三善晃編曲の「Over
the Rainbow」をフィナーレで歌い上げました。本来は栗山先生の指揮だったのですが、手術後で体調も思わしくないという理由で、藤井先生が指揮をされました。
結果的に予想を上回る演奏でした。11年の“音楽樹”の活動の成果の一端が見えるような声でした。つまり、海外からの一流の先生方のセミナーに触れた各指導者が、ご自分の合唱団を育てられるわけですから、そこに共通の声なり、作品へのアプローチなどが出来ていくのだと思うのです。合同で40分足らずさっと練習して、音楽の形がスッと出来てくる辺りが、とても見ていて気持ちよかったし、本番もいい音楽でした。
そういう意味で、ある一定以上のメンバーが400人集まったわけですから、初めての出会いであっても、音楽的にすぐに仲良くなれ、違和感なく共に歌えたのではないでしょうか。
打ち上げ
着替えを終え、建物の前の歩道に集合すると、昨年関東に転勤して《EST》から離れざるを得なかった渡辺ご夫妻が姿を見せてくれました。前副代表&マネージャーとして一時代を築いたお二人。おっと3人になっていました。ベビーカーから覗く愛らしい赤ちゃんの顔。「親子室と客席に分かれて聴いた。初めの3曲を私が客席で聴き、残りをダンナが客席で聴いた!」と挨拶された奥さん。皆大笑い。だって、始めの3曲対残りの1曲を時間比に直すと、14分対1分半なんですもの。(笑) すでに・・・・・・・!
解散です。新幹線組、打ち上げ組に分かれます。
さて、打ち上げは、すごい熱気でした。嬉しかったのは、《EST》の若いメンバー達(私の娘も含め)が、すごく楽しそうに他の合唱団の人たちと交流を持っていたことです。「コーロカロスの方々からジョイントコンサートをやろうって言ってもらった」とか、「イタリアでは賞を意識せずに音楽を大事に大事にして演奏するようにアドバイスしてくれた」とか、「賞狙いのコンクールをやめてからのコーロカロスは、いろんな楽しさに向っているよ」などなど。
私が嬉しかったのは、東京混声合唱団に入っていたという方からのお褒めの言葉でした。「良かったー。音楽がはっきりしているから気持ちいいよー。ブラボー」と何度も何度もお酒を勧められながら。
挨拶に立った私は、栗山先生の音楽に若い頃からすごい魅力を感じていたこと、音楽樹で勉強して自分の音楽も成長させたかったこと、栗山先生の合唱団がグランプリを受賞されたアレッツォ国際コンクールに出場できるところまで《EST》がこぎ付けたこと、音楽樹の皆様への感謝・・・などを話しました。
私に話しかけてきて下さる方々もたくさん。北海道の北見の合唱指導者の熱心さには、私も思わず話しこんでしまいました。
藤井先生からは、イタリアの運営のいい加減さを。例えば、リハーサルに充てられていた時間を当日になって2時間遅らせられたとか、本番と町のお祭りが重なり「本番中にお祭りの集団が客席になだれ込むかもしれないのでその時は演奏を途中でやめてくれ」と言われたとか・・・・・。これで覚悟が少し出来ました。スペインの比ではなさそう・・・。
最後の栗山先生のお話も心打つものでした。「1000年前から続いている日本の音楽の歴史の中に我々はいる。次の1000年2000年を見据えた“今”を考えて活動しよう!」
P.S. 二次会へ行く波にもまれながら娘と歩き始めると、後ろからカロスの方に声を掛けられ、二人で振り向くと、娘がさっき仲良くなった人だったみたいで、「あらあら! 後姿でわかんなかったから夫婦かと思った」と言われ、娘は怒っていました。(笑)
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