2002.5.30

《EST》スコラーズが晴れやかにデビュー〜
第2回教会コンサートンサート


 2002年5月26日は、昨年に引き続き、三重県津市のルーテル教会でコンサートを催しました。『ルネサンス音楽の調べ』『ヨーロッパ近現代の調べ』『日本の合唱曲』の3部構成で、私の司会をはさんでの1時間半ほどのコンサートでした。

 昨年と同様、暖かな雰囲気でコンサートは進みました。加えて、特筆すべきこととして、《EST》スコラーズの晴れやかなるデビューがあげられます。

4月に誕生した《EST》スコラーズのメンバー
 
 “《EST》スコラーズ”は、アンサンブルリーダーとして常に理想のアンサンブルを実現し、全体練習、パート練習、個人練習のアドバイザー的役割となり、コンサート等で演奏を披露するという目的で、4月に誕生した小編成アンサンブルグループです。

 全員の項目別投票を参考に、私が選ばせていただきました。メンバーは6人。
その後、意欲的に練習活動を積んでいます。名実ともに《EST》の核として、団結も強く、いい音楽しています。早くも、《EST》スコラーズの音楽にあこがれるメンバー続出です。常に《EST》をリードする存在。そんな中、今回のデビューとなったのです。

 この日は、ルネサンス時代のモテットとマドリガルを演奏しました。マドリガルはもちろん指揮なしです。曲によってはメンバーを1〜2人加え、意気揚揚と楽しく歌い上げてくれました。会場からも大きな拍手。大成功でした。

 Vocal Ensemble《EST》にとって、《EST》スコラーズの存在は、とても大きく励みになるものとなりました。
これからも、音楽的にも人間的にも、他のメンバーの理想となるような存在でいてくれることでしょう。理想的なグループがすぐそばにいる。このことで、《EST》全体が、ますます、すばらしいグループになればいいなあと思います。

コンサートは安定した響きで
 
 コンサート全体としては、安定した響きのいい演奏でした。教会の響きをうまく利用したサウンド作りができ、本番は、集中力が加わり、一つ一つの響きがとても尊いものに感じられました。振っていて、満足でした。過去に演奏した曲もプログラムに入れましたが、再演するごとに味が出てくるという、うれしい実感もありました。メンバーたちは大きく成長しています。そして、新たなメンバーもみないい音楽をしてくれています。

 男声の「ロマンチストの豚」のユーモラスな演奏に、女声の「春は来ぬ」のメッセージ性のある演奏に、お客さんはとてもいい雰囲気で拍手をしていただきました。そう、やはり、日本語のステージになると会場が一体感を増しますね。

 悔やまれることがあるとするなら、私の司会でしょう。曲の説明や詩の紹介に偏りすぎ、聴衆のニーズにかみ合っていなかったような気がします。もっとアットホームな楽しい雰囲気にできたはず。司会ひとつでコンサートの雰囲気が左右されるのですから、私の責任は大きいです。そもそも、今、声帯を痛めていて、思うように声が出せないのです。このことが原因で、司会のテンションが上がらなかったのかもしれません。いずれにせよ、申し訳なかったです。次回に賭けたいと思います。

自己の存在を確認するような演奏を

 一つ一つの演奏に、歌い手一人一人がどう関わっていくか。この関わり方が意味深いものならば演奏も意味深くなり、軽い関わり方であれば、それだけの演奏に終わってしまいます。また、集団で息を合わせていくのですから、メンバー達の有機的な繋がりの深さも、演奏の是非を決める鍵となります。

 一人一人に目を向けてみると、生活の変わり目であったり、家族のいろいろな状況を抱えていたりと、大変なことが多いようです。その中で、いや、その中だからこそ、演奏に命を吹き込めるのです。自己の存在を、演奏という鏡に映し出し、確認していく。丸裸の自分を音楽に投影する。生きている証が演奏を通して聴衆の心の奥深くに
届いていくのです。その実感が、個々の合唱活動の支えとなっていくことでしょう。

 今のメンバーと長く音楽し合いたいものです。そのためにも、若いメンバーが、私と共に、人生の深さ、音楽することの価値に気付いてくれればと思います。最近の《EST》サウンドには、十分にそのことを気づかせてくれる貴重なものが宿っているのですから。

 この日の《EST》の演奏は、
そんな願いを託すことのできる素敵なものであったと思います。 



コンサートアルバム




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2002.7.4

“ヨーロッパカンタート”のアトリエ人気投票



 2003年7月にスペインで開催されるヨーロッパカンタート。《EST》が、特別にお許しを頂いてのアジアから参加となるわけですが、だんだんと詳細が決まってくる様子が、HPを見るとリアルタイムでわかります。20以上のアトリエが紹介されました。下記のとおりです。

ATELIERS
1.Gospel and Spirituals
2.Catalan Music of the 20th century

3."Show Choir" an American way of singing with dancing and show
4.Famous Opera Choruses
5.Zarzuela Choruses, a special type of Spanish Operetta
6.Chorfantasie / Ludwig van Beethoven
7.Folk Music from Central European countries (for female choirs)
8.Folk Music from the Nordic countries
9.St. Nicolaus Mass / Joseph Haydn

For complete choirs only:

10.Magnificats from the 20th century Works by Berio, Buchenberg, Andriessen, Mantyjarvi and others
11.Tango and other Argentinian music (with tango presentations)
12.Vespers (excepts) / Sergej Rachmaninov

For national and regional youth choirs only:

13.Masses for double choir from the 19th and 20th century Works by Martin, Badings, Rheinberger, Liszt, Mendelssohn and others
14.Vespro della Beata Vergine / Claudio Monteverdi


For good sight-readers or singers who come prepared
15.Escola de Montserrat L' Atlantida / Manuel de Falla . An homage to Barcelona, final concert
16.Cant Espiritual, Canciones Negras / Xavier Montsalvatge
17.Iberian Classical Polyphony of the 16th century . Works by Morales, Guerrero, Vitoria and others
18.Magnificats from the 16th and 17th century . Works by Bach, Schutz, Zielensky and others
19.Concerto a la Beata Virgine / Vic Nees, and other Hymns to the Virgin
20.Vocal Pop-Jazz and Kyrie from the Mass with piano by Steve Dobrogosz
21.Composers conducting their own music : Busto and Miskins
22.Shumitt meets Strawinski
23.Requiem: Durufle


International Study Tour
24.For choral conductors. Observing different ateliers at work

European Academy for Young Choral Conductors
25.Practical seminar for young conductors (active or passive participation possible)

Rainbow
26.Composition competition in cooperation with Annie Bank and Jan Vermulst Foundation. Winning competitions presented in a concert during the festival.


Open Singing
27.Every day, with Josep Prats (Cat.) and Johan van Bouwelen (B)

Short ateliers in the second half of the festival
28.Sardana dancing and singing and much more


Special Concerts
29.Three nights with showcase concerts for regional and national youth choirs and the best participating choirs

Concerts by the participating choirs
30.Several parallel concerts each afternoon in churches, halls, and squares in Barcelona

 おわかりかと思いますが、23番までが、希望できるアトリエ(合唱講習会)で、以下、指揮者用、作曲者用、最後は、コンサートをさせていただけるというものです。アトリエの成果は、最後にコンサートで発表となります。

 このカンタートに、ヨーロッパから3000人以上の合唱歌手たちが参加し、ヨーロッパを上げての大きなお祭りとなります。そこに、私たち《EST》が参加させていただける運びとなったのです。これはもう、《EST》にとって大変なイベントです。

 さて、毎月の《EST》全員ミーティング。6月は、このアトリエ情報を議題とし、みんなに興味あるアトリエを投票してもらいました。その結果、

1位  17.Iberian Classical Polyphony of the 16th century . Works by Morales, Guerrero, Vitoria and others 13票

でした。やはり、《EST》の原点である、ルネサンス時代の音楽に、票が集まったようです。スペインルネサンスはスペインの黄金時代。音楽も何もかも、世界に広がった時代です。

2位  18.Magnificats from the 16th and 17th century . Works by Bach, Schutz, Zielensky and others  12票 
これもうなづけます。昨年のドイツ行きも影響していますね。シュッツにバッハ。レパートリーにしたいバロック音楽の代表的な作品を学べるのでしょう。

3位   8.Folk Music from the Nordic countries  10票
北欧の作品は、《EST》では4年前に取り上げました。(第6回コンサート『北欧へ』) 現在、日本での北欧人気は根強いですね。松原先生の存在もあり、また、輸入楽譜やCDも手に入りやすくなったからでしょう。もっとも、第一に、魅力的な作品がどんどん生まれているからでしょうが。新しい作品に出会える喜びは貴重です。

4位  14.Vespro della Beata Vergine / Claudio Monteverdi
     21.Composers conducting their own music : Busto and Miskins  各8票
6位   1.Gospel and Spirituals
      2.Catalan Music of the 20th century
      9.St. Nicolaus Mass / Joseph Haydn
     12.Vespers (excepts) / Sergej Rachmaninov   各5票
・・・・・

この集計は、面白かったです。メンバーの思考がうかがい知れたんですもの。ルネサンス・バロックと現代に集中していました。でも、少数意見ではありますが、"Show Choir" an American way of singing with dancing and showや、Tango and other Argentinian music、Vocal Pop-Jazzなども、あがりました。歌って踊って。新たなる《EST》の姿かもしれません。少数意見ですが、大切にしたいです。それにしても、この中から一つしか参加できないとしたらもめるでしょうね。いや、もめてほしいです。このアトリエ経験によって、その後の《EST》のレパートリーがひとつ方向付けされるのですから。

 さて、ヨーロッパカンタートを夢と描きながら、メンバーたちは、どんな音楽生活を送ってくれるのでしょうか。音楽をどう捕らえるかは、メンバーによってさまざまですが、最近、学生の中にも、音楽を続けられるように就職先を工夫しようというメンバーが出てきています
。地方の合唱団としては、このことは涙が出るくらいうれしい出来事です。本当の音楽仲間になりたいと思います。一生の音楽仲間に。それぞれの人生が、音楽に彩られ、美しく輝けるよう、ひとえに私の生き方の努力を・・・・と、気を引き締めたいと思います。気を引き締めさせてくれるメンバーたちに本当に感謝です。いつも、前向きに新しい発想で、進みたいと思います。

 最後に、11月の、『創立10周年記念コンサートBest of《EST》』のチラシに掲げた私の文章を。

 
『常に新しく、常に始まりでありたい!』〜「《EST》10年」に想う
 
音楽監督 向井正雄
 
10年前に、私と共に「いい音楽をしよう!」と誓い合って生まれた“ヴォーカルアンサンブル《EST》”。
その高き理想は、時を経ても人が入れ替わっても変わらないどころか、ますます輝きを増して貫かれ、
こんなに素敵な合唱団になりました。
私たちは、今、胸を張って、10年分の“BEST OF 《EST》”を皆様にお届けすることができるようになりました。
 
この10年間を一言で振り返るなら、世界のスタンダードを知り、近づき、新しい音楽を実現していく月日でした。
新しいサウンドを追い求めることは、我々の意識も、団の運営も、すべてを新しく変えていくことでした。
新しい音楽作りを深めていくことは、世界の古今の人々の夢や葛藤に自身を深く投げ入れることでした。
成長を続けた10年間。グアムで、ドイツで、その成果を認めていただき、海外のコーラスメンバーと過ごした楽しいひと時は、
かけがえのない糧となりました。
来年は、スペインへ!と、夢は広がります。
 
ぜひ、現在の《EST》をお聴きいただきたいと願います。
そのサウンドが、10年分の営みを携えながらも、まっすぐに未来へ広がるものであることを、お確かめいただければ幸いです。
『常に新しく、常に始まりでありたい!』。
音楽における私たちのこの願いは、新たな10年を営んでいく私たちの生きる姿勢にもつながっていきます。
なぜなら、「良い音楽」とは、演奏者の「生きる姿勢」が「良いコミュニケーション」として誇れるものであるのだから。




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 2002.8.1

第19回宝塚国際室内合唱コンクール本選
で総合2位を受賞しました


 2002年7月27日に催された第19回宝塚国際室内コンクールにて、《EST》シンガーズは、混声部門金賞、兵庫県知事賞(国内団体第1位)、全部門総合2位に選ばれました。また、アコール《EST》は、女声部門銀賞に選ばれました。今年も、話題満載です。

すっかり第2のふるさと化〜宝塚の町

 
 コンクールの前日の夜、宝塚駅を降りた私は、目の前に広がるきれいな町並みに、ホッとした気持ちになりました。まるで、第2のふるさとに帰ってきたような。
9年連続出場。そのうちの8年、目の前のワシントンホテルにお世話になってきたのです。《EST》は、宝塚国際合唱コンクールに育てられてきました。知り合った多くのコーラス仲間や海外の団体。いろんなチャンスをいただいた審査員の先生方。《EST》のメンバーたちの笑顔や涙。町並みを見た途端にいろんなことを思い出していました。そして、明日への希望に胸膨らませる瞬間。これも、9回目です。

 ホテルに入ると、必ず、コンクール関係の方々とお会いします。今年も、磯山先生や、林先生、それにパーティー担当(?)の大塚さんにお会いしました。海外の団体のような方々とも。軽くご挨拶を終え、チェックイン。ベッドに横になり一息。その後は、町を散歩し、いつものコンビニへ。途中の橋を渡る時の、水面に写るイルミネーションがとてもきれいです。メンバー達はパートミーティングの他は自由行動。それぞれの前夜を楽しんだことでしょう。もっとも、メンバーの一部は、翌朝の日の出前に三重県を出発でしたが。

アコール《EST》は早朝からの練習を経て
 
 今年は、女声部門に出場のアコール《EST》が、2番目という早い出演に当たっていたため、声だしを早朝7時半から始めました。早起き組は5時に起きて散歩もして準備万端。また日の出前出発組も、遅れることなく元気な顔を見せてくれました。声の調子もみんな絶好調。さわやかに練習を終え、ベガホールへ電車で。

 シュウコちゃんがプラカードを持って私達を満面の笑顔で迎えてくれました。あ、説明が必要ですよね。毎年、このコンクールでは、プラカード嬢を宝塚少年少女合唱団の子供たちが担当してくれています。いつの頃からか、《EST》のプラカード嬢は、いつも、シュウコちゃん。何でも、《EST》の担当をするのが楽しみで、いつも立候補しているらしいのです。《EST》はとにかくにぎやかで楽しく、大好きだからだそうです。そのシュウコちゃんも今年高校3年生。卒団となるため、今年最後のプラカード嬢。「最後だから絶対金賞とってねー」と言われ、ステージへ。

 さて、プーランク、コチャール、木下牧子という3人の作曲家の作品を並べてのステージでしたが、朝早い本番としては満足の行く出来でした。緻密に丁寧な演奏が出来たからです。清潔なハーモニーを心掛けてきたことが前面に出ていたように思います。すっきりとしたノンビブラートの音色で歌い上げました。もっと迫力があってもよかったかなあ。ステージを降りる女声陣は、みんないい笑顔です。指揮者としてうれしい瞬間。一人一人と握手で感謝の意を。

《EST》シンガーズはにぎやかに

 
混声部門に出場の《EST》シンガーズは、昼食後に練習をしました。ゆかいな男声陣がノリノリで盛り上げてくれます。ロッティの8声で始まる最初の1ページのハーモニーがネックです。よく練習しましたねえ。だんだん決まってきて一安心。最後に演奏するフィリピンの合唱曲は、早口言葉とすばやいリズムが命。これに振りをつけてお客さんに楽しんでもらおうとの狙いです。この練習は楽しかったですね。スクリーム(叫び声)あり、鳴り物ありの大変愉快な曲。みんなギラギラ目を輝かせて練習を終えました。

 タイムテーブルに入りました。またまたシュウコちゃん担当。リハーサルでのユーモラスな演奏に大喜びでした。さて、本番。始めの1ページは何とか決まりました。2曲目のマルタンは、いつも決まっていたハーモニーに少し乱れが。うーん・・・。しかし、3曲目。早口言葉のリズムが心地よく決まっていきます。そして、叫びも口笛も鳴り物も振り付けも決まり、最後にお客さんの笑い声で演奏終了。うれしかったですねえ。お客さんが笑ってくれるというのがこれほどうれしいことなんですねえ。みんな大喜びでステージを後にしました。


本山先生と再会

 写真撮影を終え、着替えに入ろうとした時に、なんと、待っていてくださったのは、本山先生。《EST》を、私を育てていただいた先生です。感激して集まってくる《EST》のメンバーたちに、「良かったですよー。後は向井さんに言います。」 相変わらず紳士です。いくつかのアドバイスをいただきました。「今から鹿児島でコンクールの審査です。」とおっしゃられ、去って行かれました。感謝です。

審査発表

 どきどきの発表待ちも9回目。過去、いろんなドラマがありました。初めの2年間は賞外。3年目の銅賞に入ったときのうれしかったこと。そして4年目の金賞・総合2位・知事賞・・・・。この辺りから、長期的な展望ができるようになりましたね。そして、私の一生の活動を《EST》に託していこうと決心させてくれたのでした。音楽を向上させ、維持していくこと。このことは、今年良かったから次の年も、という保証はなく、毎年の営みの深さが欠かせません。メンバーの入れ替わりもある中で、私と同じテンションで団に関わっている《EST》の核となるメンバーの多大なる努力も欠かせません。

 「女声部門金賞、モラン女声合唱団!」。金賞はここ1団体だけ。イスラエルの合唱団です。翌日の記念演奏会での交流で、私たちはこの結果に謙虚に納得させられることになります。この合唱団のすばらしさは、改めて記する事にします。

 アコール《EST》は、銀賞をいただきました。男声部門は、金銀は該当なし。なかなか厳しい発表が続きます。混声部門の発表です。《EST》シンガーズの名前が呼ばれたとき、女性陣は、全員がメダル贈呈のために通路にいたので聞こえなかったようです。私は、こっそり、ホールに潜り込み、男性陣の喜びの雄叫びを聞きました。

 メンバー全員へメダル贈呈。そして、賞状には、全審査員のサイン入り。このコンクールのうれしいしきたりです。この表彰式のあと、いよいよ総合1〜3位の発表です。「総合1位、モラン女声合唱団!」。ホールは、モランのメンバーたちのすごい歓声に包まれました。見ると、20歳前後の若い女性たち。思い出します、マルクトオーバードルフを。私たちも一生懸命拍手をしました。

 「続いて総合2位、《EST》シンガーズ!」。いっせいにワーっとみんなの歓声。私も大きな声を出してしまいました。新たな若いメンバーたちも大喜びです。良かったです。1年間のいろいろな新しい試みの成果を確認できた、9年目にして特別うれしい評価でした。最後の“知事賞(国内団体第1位)”も頂き、最高の夜となったのです。

盛り上がったパーティー

 さあ、コンクールは終わり、これからが楽しみです。夜のパーティー、そして翌日の入賞団体記念演奏会。参加者も観客もガラッと雰囲気を変え、音楽する喜びに満たされるからです。

 9年前は、このパーティーも記念演奏会もどんなものかわからず、自分たちだけで打ち上げをして、翌日は遊園地へ行って帰ってきたものです。懐かしい思い出ですが、今考えるともったいないことをしていたなあ・・・。だって、海外にでも行かないとこの雰囲気は味わえないのですから。

 今年のパーティー、参加者が多かったように思います。初めから大変にぎやかです。審査員の先生方もリラックスされ、私たちと同じ立場に降りてくださっています。たくさんの方々が話しかけてくださいます。若いメンバーたちは、海外のメンバーたちとすぐに仲良しになり、踊ったり握手したりしています。そんな中、海外団体や金賞団体の歌の披露会となりました。

 韓国のインチョン女性文化センター合唱団、モラン女声合唱団、合唱団まい、あふみヴォーカルアンサンブルと続きます。インチョンは、5年前に《EST》とジョイントコンサートをさせていただいた合唱団です。指揮者の方と硬い握手。CDをいただきました。パーティーではアリランを熱唱されました。まいさんは、毎年の仲間です。ルネサンスポリフォニーを演奏されていました。雨森先生が見えていないのが残念でした。あふみさんは、普段からお友達のようなグループ。“琵琶湖周航の歌”を手作りのアレンジ楽譜をみんなに配られ、ごいっしょに、ということで、パーティー参加者みんなで熱唱しました。

 「《EST》も。」とお声がかかり、パーティー会場の真中で、“鴎”(木下牧子)を。歌い始めるとたちまち、知っている方々が加わっていただき、いつのまにか大合唱になりました。楽しいですねえ。歌ったあとは、またたくさんの他団の方々からご感想をいただきました。

 あとは、モランのペースです。会場全体がダンスの渦。歌いながら手をつなぎ跳んだり跳ねたり。伴奏に、鼓のような民族楽器が入ります。これがまた神秘的で、興奮を高めます。結局、あっという間にお開きの時間となっていました。

洲脇先生とヨーロッパカンタートのお話

 ホテルに戻ると、洲脇先生に、ヨーロッパカンタートの様子をお話いただく機会を得ました。ありがたいことです。《EST》を育てていただいている方のお一人。世界合唱連合の役員でおられる方です。お話の内容は、下記の通り。

・3年に一度の大きなイベントで、ヨーロッパの合唱人3000人が一同に会する夢のような10日間。
・2005年に京都で催される世界合唱シンポジウムと比較すると、京都のは指揮者のためのもので、合唱団は、単発で帰ってしまう。合唱団が寝食を共にし、共に音楽を作り上げる感動は、ヨーロッパカンタートならではである。
・アトリエの選び方が大切である。30位のアトリエがあり、第3希望まで申告する。100人以上のアトリエも多く、講師レベルは世界一流である。たとえばオーケストラ曲のアトリエなら一流のオーケストラと共演できる。各アトリエは1週間くらい練習し、最後に発表会が催される。
・朝のコーラスの集いなど、1日中コーラスが楽しめる。その場で楽譜が配られ、初見で歌うのだが、配られる楽譜がシュッツの宗教曲であったりで、慣れないうちは必死。でも、回りの熱気で何とかやりきってしまえるようになる。この経験をぜひ。
・コンサートもできる。主催者側が全部準備してくれる。コンサートメンバーは20人くらいは欲しい。アトリエ練習とその成果としての発表会を中心に、10日間をあとはコンサートをしたり他団体のコンサートを聴いたりして過ごすことになろう。
・回りがある程度以上のヨーロッパの合唱人ばかり。初めは、声の強さや迫力で圧倒されるが、それが自然になり、自分たちの声も成長する。みんなと仲良くなれて、1日1日が楽しくてしようがなくなる。

 わが団長は、「先生の熱のこもったお話を聞き、ますます行きたくなった。」と。同席したメンバーも同じ気持ちだったことでしょう。夢をバルセロナに繋げたいものです。

うれしい“あふみヴォーカルアンサンブル”の金賞

 最後に、この日のどうしても記しておきたいことを。それは、“あふみヴォーカルアンサンブル”の金賞受賞です。私が滋賀県合唱祭の講師にお招きいただき、そこで、昨年に引き続いて、あふみさんの演奏を聴かせていただいたとき、ガラッと良くなった印象を受けたのです。その間、《EST》の練習に来られたり、ヴォイトレの加藤さんに発声を習ったりと、大変熱心に取り組まれ、メンバー同士の交流もさかんとなり、《EST》の良き友人のような存在でした。

 そんなこんなで「いい賞に入られるといいのになあ・・・」と思っていた矢先の『金賞』。これはうれしかったことでしょうね。何でも、この日の最後に歌われた“鳥の歌”(ジャヌカン)は、5年間暖め続けられてきたとか。本当におめでとうと今改めて!



第19回宝塚国際室内合唱コンクールの結果


第19回宝塚国際室内合唱コンクール本選(女声・混声の部)の画像集


作曲家、長谷部氏のHPより、「宝塚のコンクールに参加(02/7/28)」


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2002.8.3

第19回宝塚国際室内合唱コンクール入賞団体記念コンサート


 2002年7月28日に催された第19回宝塚国際室内コンクール入賞団体記念コンサートに、《EST》シンガーズとアコール《EST》が出演。他に、イスラエルのモラン女声合唱団、韓国のインチョン女性文化センター合唱団、日本からは、合唱団まい、あふみヴォーカルアンサンブル、PRO MUSICA VIVA、清水谷高校合唱部が出演し、思わぬアンコールがあったりするなど、感動的なコンサートとなりました。

朝からの練習 
 
 コンクールの興奮冷め遣らぬままで迎えた翌朝9時からの練習。昨日演奏した曲の他に3曲加え、計9曲の歌いこみです。しかも、Pamugunには振り付けをつけようというのですから大変。声の立ち上がりの問題や、練習会場の響きの問題(広い和室でまったく響かない)など山積みでしたが、メンバーみんなのエネルギーがぐいぐいと感じられ、有意義な練習ができました。特に、振り付けには気合が入っていましたね。コンクールでも少し、体を動かしてみたのですが、お客さんが笑ってくれたのがうれしかったのです。今日は、もっと受けるようにと、何度も動きのチェックを入れているメンバーたちでした。1時間半ほどで切り上げ、ベガホールでの練習に向かいました。

ステージリハーサルでの交流
 
1団体20分のステージリハーサル。我々がホールに入ると、清水谷高校合唱部のリハーサルでした。高校とはいえOGも混じっています。何でも、テープ審査の2月には全員高校生だったとか。それにしても、溌剌とした声です。指揮をされている方は、本山先生に指揮法を教わりに行ったときにご一緒した方でした。記念コンサートに高校が出演するのはひょっとして初めてなのでは?快挙ですね。明るく礼儀正しい生徒さんたちでした。

 さて、《EST》のリハです。早速、Pamugunから練習しました。演奏スタートと同時に男性が1人ずつ順番にサングラスを掛けていくのですが、先程の高校生が大笑いしてくれました。ありがとう。いい気分で練習できました。女声の叫び声を今回は男声が受け持ちます。これも大受け。

 最後に、女声合唱のSalve Regina(コチャール)のラスト数小節を練習して、時間となったのですが、何とその時、客席から、モランの指揮者の方が、私のところへ。自分たちのレパートリーでもあるのでいっしょに歌おう、と提案してくれたのです。女性陣は大喜び。ステージは、イスラエルと日本の交流の場と化したのです。私も感激しながら指揮を。すごい強い声です。私の指揮もいいのか悪いのか大振りで応戦。ベガホールは、ものすごい響きで包まれました。振り終った途端、客席から「ブラボー」の声。これは一生の思い出です。

本物の音楽、モラン女声合唱団
 
 毎年楽しみなのは、海外からの参加団体ですが、今年は、本当に感動しました。本物の歌をわれわれに教えてくれたのです。(このことを早く記したかったです。!)

 このイスラエルの合唱団の活動は、パレスチナの人たちと共に平和を求めて歌っていることに象徴されます。知的障害者を訪ねて演奏したりとかも。この日のコンサートでは手話コーラスを披露してくれました。指揮者のNaomi Faranは、何の気取りもない笑顔で、18歳から25歳までの女性メンバーたちをリードしていきます。

 演奏能力の高さは、6歳からの一貫したヴォイストレーニング、楽器演奏、音楽への敬愛精神の教育、躍動感とドラマ性を重んじる理念、そして上記のような強い人類愛の精神に裏打ちされています。そして、いくつかのランクの団体に分かれており、モラン女声合唱団はその最高ランクの合唱団だそうです。昨年の国際シンポジウムにイスラエル代表として出演し、特別プロジェクト“Songbridge”でイスラエルの作品をプレミア演奏し、世界中の若者を結ぶ架け橋となったそうです。

 この合唱団の演奏は、全く自然で直接心に響いてきます。平和の歌や結婚の歌など、自然に涙が出てくるのです。曲に入り込む必要などなく、すでに彼女たちそのものがもう音楽なのです。彼女たちの歌うときの眼差しは、今でも強烈に心に残っています。私は、音楽を高めることと、人々を愛し平和を訴えていく活動とが、一体であることを教えられました。そして、私たちもこういう活動をしていけないものか・・・・と。そして、パレスチナとイスラエルとが対立の構図でしか捕らえてなかったことを身を持って反省させられたのでした。彼女らの歌によって。指揮者のNaomi Faranは、私の敬愛する人となりました。

雨森先生の合唱団と、あふみヴォーカルアンサンブル

 雨森先生率いる、合唱団まい、PRO MUSICA VIVAの演奏を聴くことができました。メンバーをこれほどまでに音楽に集中させる吸引力はどこにあるのだろう。彼の指揮にメンバーたちが食い入るように音楽する姿を見て、いつも考えさせられます。彼は、指揮をせずに歌い手にもなります。そのときでさえ、全員の音楽の呼吸が乱れないのです。歌い手からたくさんのものを引き出しまとめ上げていく、そんな雨森先生の音楽に襟を正して聴き入る幸せを得られ、大変よかったと思います。
 
 あふみヴォーカルアンサンブルは、直前のリハーサルで少しだけ聴かせていただくことができました。みんなが意見を出し合いながら和気あいあいと進められていました。アンサンブルの本当の楽しさを、長い期間(“鳥の歌”は5年も!)をかけて育てあげた想いというものが伝わってくるような
、誠意ある演奏の一こまでした。

《EST》の演奏

 宝塚コンクールの利点の一つ。それは、海外の審査員を含む9人というたくさんの審査員の先生方に1人5分(我々は2団体ですから10分)の個別アドバイスをいただけること。そして、そのアドバイスを記念コンサート前の練習に生かせることです。前日よりいい演奏を!そんな私たちの思いは先生方のアドバイスによってかなり支えられます。

 今回も、その意味で、前日よりいい演奏になりました。ロッティは、音の軋みとその解決をバロック的に思い切って表現できました。女声合唱は、音色をシャープに心がけました。
Pamugunは、振りも加えましたが、主旋となるパートを明確に表現することを心がけました。聴衆の方々の拍手も大きく、後から声を掛けてくださった方々も例年より多く、楽しんでいただけた様子が伺えました。我々の歌った後の達成感も例年より大きかったです。

 雨森先生が駆け寄っておっしゃっていただきました。「すごいよ《EST》は。こんなに何度も涙したのは久しぶりだよ。みんなの歌う表情がすごくいい。いやあ、今《EST》は、日本で一番だよ!」そして、硬い握手を。照れくさくってうまく返せなかったですが、雨森先生のような全国区の方にこんな風に誉められると、言葉が出ないほど感激です。

思わぬアンコール


 最後のステージのモラン合唱団の演奏が終わったとき、指揮者のNaomi Faran先生が、客席を振り向いて「コチャールのSalve Reginaをいっしょに歌いましょう。歌える方はステージへ上がってください。」とおっしゃられました。リハーサルのドラマがここでも実現です。私に「指揮を!」と指名され、恐縮しながらステージへ。ステージは、PRO MUSICA VIVAの方々を始め、にぎやかです。私は、感激しながら一生懸命振りました。楽譜に書かれていないrit.やaccel.を試みてみましたが、ぴったり合わせてくれます。すごい集中力で音楽の感動を表現してくれました。会場も大きな拍手です。

 こうして、コンサートは終わりました。着替えのときに男性陣は「女声がうらやましい〜」とアンコールを称えてくれました。テスト中にもかかわらずこのイベントに参加した学生たちは「参加してよかった〜」と。宝塚で育った我々が、新しいメンバーに宝塚のすばらしさを伝えることができた瞬間です。うれしかったです。若いメンバーのこの手ごたえが明日の《EST》を作っていくことでしょう。

 ベガホールを後にするときに、Naomi Faran先生が「名刺交換を」と近寄ってきてくれました。「Eメールしましょう」と。また、韓国の審査員Jakob Y.Chang氏も。自分のことを客観的に評価していただけてとてもありがたかったです。自分の持ち味なんて自分ではわからないですから、こういう方々からの言葉がけは、これからの自分を見つめていく際の支えになることでしょう。

 宝塚は終わりました。《EST》の年間の大きな行事。次へのエネルギーをいっぱいいただいたすばらしいイベントでした。ありがとう宝塚。ありがとう音楽。


第19回宝塚国際室内合唱コンクール本選(女声・混声の部)の画像集


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