2001.12.12

第9回コンサートが終わりました


 2001年12月8日、Vocal Ensemble《EST》第9回コンサートは、約800人という、定期コンサートとしては最も多くのお客様にお越しいただき、にぎやかに終了しました。演奏の方も今までのコンサートの中で、一番充実していたように思います。県外からもたくさんの合唱仲間に来ていただいました。まずは、お客様方に感謝したいと思います。

大ホールを包んだ《EST》サウンド

 
ドイツ演奏旅行後、新しい響きを求めて努力を積んできた今年の《EST》。コンクール等のステージで、その成果とさらなる課題を確認し、コンサートに備えてきました。この日の演奏は、そんな営みの集大成ともいうべき、すばらしいものでした。

 倍音に包まれた響きが大ホールを包みます。慣れたホールということもあり、リハーサルで、一番響く位置を確認して並びを作った甲斐もあってか、今回は本当によく響きました。純正律と倍音、そして音色の均一性。練習の方向性が大きく身を結んだような気がします。加えて、コンクール時の“お勉強感覚”から見事に抜け出し、一人一人の音楽する喜びが前面に出た2時間でした。

 やはり、コンサートはいいですね。《EST》の魅力を余すところなく伝えることができるのですから。特に、今年が良かったのは、それだけ普段の活動が質の高い豊かなものだったことを表しています。

 第8回コンサートから10ヶ月。この間のいろいろな出来事が、また、一人一人のメンバーの頼もしい変化が、指揮する私の頭をよぎります。響きを変えるとは意識をかえること。その困難さに苦しんだ日々。崩れそうな状態からの底力。温かく見守っていただいた県外の仲間たち。そのすべてが最高の形で、この日の演奏に表れたそんな2時間でした。

コンサートに花を添えた“画像”

 『マルクトオーバードルフからの贈り物』と題したこのコンサートは、私のおしゃべりとドイツの思い出の画像とで進みました。プロジェクターを使って、ステージの両側の壁に大きく映し出された画像は、とても鮮明で、コンピューターの性能に脱帽しました。いつもの教会用垂れ幕と合わせて、今回のコンサートにしっかり花を添えてくれました。お客さんにも大変好評でした。私の司会のコメント文と、使った画像をここに公開したいと思います。どうぞ、ご覧ください。

すっかり定着した教会音楽(第1ステージ)

 第1ステージは、さまざまな時代・国の教会音楽を聴いていただきました。過去9回の演奏会で、意識的に取り上げなかった第7回コンサート『マドリガルに始まって』以外は、毎回演奏してきた教会音楽。原点としているルネサンス時代の作品とともに、《EST》を特徴付けるジャンルとして、すっかり定着した感があります。

 演奏のほうも、松下先生の男声合唱曲Adramus Te以外は、ドイツの教会で演奏したもの。安定した演奏ができました。響きがよくなり、ますます、教会音楽に磨きがかかってきた気がします。音楽的にも一人一人豊かなものが出てきていました。特にビーブルの作品のトリオは、大変伸びやかでした。全体的に大ホールが大きな聖堂に思えるような時空を持つことができました。望むは、男声合唱。もう一皮剥けたいものです。また、ロマン派のブルックナーも、時代様式から行くと、シンプルなフレーズの感じ方にもう一息の突っ込みが必要でしょう。今後の課題。

「おらしょ」大好き!(第2ステージ) 

 ドイツと宝塚の2つの思い出を持ち、作曲された千原先生と感激の対面。そんなこともあってでしょうが、何と言っても、歌心を触発しつづけてくれたこの作品、メンバーからは、「大好き。もっと歌いたい!」という声が上がる位、いいステージでした。最後のリハーサルで、現地での「おらしょ」の録音CDを聴きイメージを膨らましたのもよかったと思います。ゆったりしたテンポで丁寧に歌い上げることができました。フィナーレのドラマは、歌えば歌うほど新鮮な感覚になり、名曲の持ち味のようなものに包まれる感覚でした。

曲の並べ方に工夫(後半のステージ)

 ルネサンスのマドリガルを小アンサンブルと全員とで1曲ずつ演奏し、司会をはさんで、「日本再発見」というタイトルのステージへ。ドイツの民族音楽ジョイントコンサートで演奏した曲を中心とした、オール日本の作品です。なるべくバラエティーに富むように、たとえば超現代的な鈴木作品の間にトライトーンのアカペラコーラスをはさんだり、小アンサンブル・混声・女声とスタイルの変化など、思い切った曲の並べ方をしてみました。司会や画像もあってでしょうが、成功しました。「よく知っている曲もあり、あっという間の2時間だった」と、合唱に詳しくないお客様方からも、うれしい言葉をたくさん頂戴しました。ちょっとしたライブコンサートのような新鮮な試み。最後は、三善晃氏編曲のわらべ歌と日本民謡で力強く締めくくりました。

 マドリガルグループとアカペラコーラスグループと日本民謡の女声アンサンブルグループ。3組の少人数アンサンブルが彩りを添えていました。若手シンガーのデビューの機会でもありました。ひやっとする場面がありましたが思い出すのはやめましょう。

「赤とんぼ」に涙ぐむお客様(アンコール)
 
 今年も2時間きっかりを目指す私は、最後の曲を終えて袖に入ったとき、時刻を確かめました。20時19分!「お、後11分ある。今回はたっぷりとアンコール演奏ができる!」わくわくしながら鳴り止まぬ拍手の中へ出て行きました。まずは、すっきりとクリスマスソングを演奏。もう一度袖へ入り、拍手をやや長い時間聴き、もう一度ステージへ。聴く側も歌う側も、最高に盛り上がっています。幸せいっぱいです。

 最後に選んだのは、とっておきの曲「赤とんぼ」でした。ドイツでの演奏曲の中で、最も喜んでいただいた曲は、なんとこの曲でした。「音楽に国境はないんだ!」ファイナルコンサートで歌ったこの曲。ステージを降りる私たちに、いつまでもいつまでも厚い拍手と歓声をいただいた思い出の曲です。

 信長氏の編曲もいいのですが、琴線に触れる文句なしの名演になりました。音楽は不思議です。予想を越える感動的な時間が最後に生まれました。会場の大きな拍手をゆっくりと豊かに味わって、私たちはステージを後にすることができたのです。お客様方も、笑みをたたえて席を立って行かれます。涙をぬぐう姿も目に入りました。

振り返って

 コンサートは終わりました。2〜3日は、仕事も手につかないくらいの心地よい虚脱感。しかし、満足な虚脱感です。たくさんのお客様方からの感想が聴こえてきます。本当に1年間、頑張って良かった。音楽の力を信じてよかった。・・・・・メンバーたちは様々な感慨にふけったのではないでしょうか。

 この感覚を覚えておこうと思います。この幸福感。次へのエネルギーがゆっくりと沸いてくるまでの脱力感。大切です。

 コンサートの成功は、リハーサルのみんなの動きの良さから、ある程度の予感がありました。それは、またこの日に向かう企画・運営の成功でもあり、《EST》という集団の高い意識が導いたものであると思います。すばらしい同志達。すばらしくピュアな仲間たちよ!




第9回コンサートの司会のコメント文と使った画像

アルバム




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2001.12.22

コンサート冥利につきますね


 いつも、イベントが終わると、たくさんの聴衆の方々から、感想をいただきます。最近は、Eメールでいただくことが多くなってきました。ありがたいことです。今回は、そんな中から、とても励まされたメールをご紹介し、私の気持ちを述べさせていただきたいと思います。

 メールをしてくれた彼は、私の前の勤務先である三重県立久居高校を1998年3月に卒業した生徒です。高校時代は合唱部で活躍。その後、大学で、小さな男声合唱団に入り、指揮者を経験した若者です。今年の春から社会人1年生。苦労しているようです。

 去る12月8日、第9回《EST》演奏会。本当にありがとうございました。
今回の演奏会もとても素晴らしかったです。最近では生の歌声を聞く機会も無くなり、合唱とは無縁の生活のため、とても楽しみにしていました。しかし、その予想以上に素晴らしい時を過ごさせてもらいました。その意味で、ありがとうございました。
 
 中に入り、ホールを見回すと予想はしていたんですけど、すごい人!なんだか回を重ねるごとに若いお客さんが増えたように感じます。特に男性の。各大学で文化部が弱体化し、男声合唱団をきかなくなってきているなか、“素晴らしく凄いこと”だと思うのです。
 
 なんだかんだと高校時代を思い出しながらようやく隅っこの空いている席に付き、いよいよ開演。壇上に登るメンバーを見て「あれっ?」知らない顔がいっぱい。しかも若い人が増えてるような気がする。この時点で不覚にも、今回はボクの期待する合唱は聞けないんではないだろうかと思ってしまいました。そして、下手から、客席を見回しながら子供のような満足そうな笑顔を見せた先生が登場。・・・なんというか、あんまりにも昔と変わっていなかったので、ついつい笑ってしまいました。

 本題に戻って、一曲目。正直全身鳥肌が立ちました。過去これほどの響きを聴いたことが無い。いったい何がどうなったらこんな歌声が出せるの?とにかく 感動 しました。すべてのSTAGEを聴き終わってからの感想なんですが、ボクはこのSTAGE1が一番好きですね。
出来ることならCDにして毎日聞きたいくらいです。とくに一曲目がすきですね。

 去年大学で聴いた教会音楽は、確かにキレイな音楽なんですがどことなく味気なく思え、戸嶋先生に伺ったことがあるんです。
「教会音楽は何を考えて唄っているんですか?神への祈りの歌なんでしょ?」
この時の先生の答えが確かこうでした。
「何も考えないんだよ。無心となって唄う歌なんだよ」
はて?先生のこのSTAGE1はどのようなことを考えて唄ったのですか?

 さてさて、3曲目ですかねぇ。Ave Maria。男声のソロが最高です。めちゃめちゃカッコよかったです。4曲目。Adoramus te Christe。最後のBassも最高。音程も一定、音量も十分。もう鳥肌もんですわ。

 Ave Regina Coelorumは安心して聴けました。なぜだかふとアメリカテロ事件の事が思い出されました。ニュースで何度も目にしたあの悲惨な光景が頭から離れませんでした。きっとアメリカの全てに絶望した人々にも聴いてほしい。そう思ったからかもしれません。

 あとですねぇ。STAGE4のソーラン節、さくら、星翠譜、上を向いてあるこう、これはどうなんですか。なんとなくあまり歌い込まれていないような気もするのですが。

 そこへいくとアンコールの出来のいいこと。あんないい曲最後にもってくるなんてズッコイですよ。これまたしっかり感動してしまいました。大学時代にもよく使った曲(楽譜は違いましたが)だけに思いも深く、実はちょっと涙が・・・

 それはそうと、先生、指揮法変わりました?というかボクの知らない表現の仕方が増えてるようなんですが。。。なんだか今の宇治山田高校合唱部がとてもうらやましいです。言い忘れましたが、ナントカカントカ最優秀指揮者賞受賞おめでとうございます。

 何度も言いますがとても素敵な時間でした。社会人となってから思うのですが、好きなことに時間を裂くのもなかなか大変なことですね。歌を歌いつづけることも歌を聴きつづけることも。でもそれってとても必要なことで、それが無いと人生味気ない。おそらく先生は人生教師を辞めても合唱を辞めないでしょう(し、止めないでほしい)。だから僕はいつでも《EST》を聴きに帰ります。これで毎年一度は会えますね。僕も少しずつ成長していきます。去年までは何も考えず仲間とばか騒ぎしてたボクが、今や社会人成り立ての身。嫌なことも辛いこともまだまだ何かと多いです。毎年《EST》を聴き、先生と会う事で、仕事を忘れ、高校時代を思い出す。それだけで、なんだか少し救われるような気さえします。だから僕はいつでも《EST》を聴きに帰ります。

 最後になりましたが、最近一段と寒くなってきました。風邪など引いておりませんか?僕は何とか元気にやっております。というか忙しすぎて風邪ひいてらんない。机の上はいつも書類だらけさ。 取り止めの無いメールですみません。それでもまたメールします。
                  H.13.12.19  一ESTファン
○○○○

 いろいろなお客さんがこのコンサートにいらっしゃったでしょうが、こういう聴衆が何人かいるだけで、もう、「この活動を続けていて良かったー」って思います。彼は、時間さえ許せば、きっと合唱を何らかの形で続けていることでしょう。ところが、社会構造の渦の中、仕事との戦いの日々。そんな彼が、聴衆として、しっかり大切なものを受け取ってくれている。そして、自分のこれからの成長を、《EST》の音楽の成長とともに確認していこうとしているのです。

 考えようによっては、厳しい聴衆です。彼の人生を包み込めるような演奏を、彼が生きている間、し続けなければ!音楽活動は、花火のように打ち上げて終わってしまってはいけません。続けることが大切です。演奏者の生き様や、演奏団体の成長とともに生きている、厳しく暖かく切っても切り離せない“聴衆”という宝物が存在する限り。

 彼が、“一ESTファン”と言ってくれたように、コンサートの常連の方々が増えつつあります。お越しいただいた方々が、本当に純粋な気持ちで、「次も来よう・・」と思っていただけるようなコンサート。また次も、そのまた次も・・・・・と思ってくださるよう、真摯な態度で、命の灯を灯しながら、これからも、音楽しつづけたいと思います。ごまかしや受けねらいではなく、人の心に深く入っていく音楽を目指したいと思います。

 彼のメールで、こちらまで襟を正されました。改めて、感謝です。

 第10回コンサートに向けての練習は、もう始まっています。




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2001.12.31

新たな《EST》を考える(1)


 いよいよ、結成10年目に向かってのスタート。これまでの《EST》の歩みを振り返り、問題点を洗い出し、新たな《EST》を考える時期。これは、音楽監督として私がどう関わっていくかというたくさんの方法からの選択を考えていくことにも繋がります。大切な年末年始です。

2002年6月で《EST》は、結成10周年を迎えます。その間に自主公演9回の他、海外の団体とのジョイントコンサート4回、日本での3種類の大きなコンクールへの継続的な参加、様々な催し物への積極的な参加などを経て、2001年には、ドイツでの、コンクールを含む11日間の演奏旅行を実現させました。結成10周年を迎えていこうとする今が、《EST》の方向性を改めて新しく考えるべき時期ということで、私の考えを述べていきたいと思います。

《EST》の個性

 まず、5つほど、《EST》という団体の個性をあげてみましょう。

@ 創立の特殊性から来る個性・・・
私と共に音楽を追い求める合唱団

私はそれまである大きな合唱団の指揮者をしていましたが、団自体にはっきりした方向性がなくなった上、様々な人間関係から、私の考える音楽が出来ないと判断し、次年度の指揮者就任をお断りしました。その時に、私と一緒にこれからも音楽をしたいという人達とによって、私を音楽監督とする、Vocal Ensemble《EST》が結成されたのです。1992年6月のことです。当然、私自身も特別な想いを持って、結成に関わりました。そして、私は《EST》で、私が考える理想の合唱団像を追い求めていくことが出来ると確信したのでした。 『私と共に音楽を追い求める合唱団』・・・・《EST》の第1の個性です。

A     音楽を勉強し深めていく合唱団

創立の特殊性から、《EST》では、私の考えが強く反映される形になっています。何より私が理想としたいのは、“音楽を勉強し深めていく合唱団”です。それには系統性が大切です。選曲などに、柱立て(テーマ)をしながら進めていくのも、練習方法に様々な提案をしていくのも、この系統性に立脚しています。西洋合唱音楽の本質を出来うる限り理解し、延長線上にある現代音楽(特に日本人作曲家のもの)の価値ある作品をたくさん取り上げていきたいと思っています。

B     聴衆の心に迫る演奏をする合唱団

 聴き手との熱いやりとりのある、心から心へ響く音楽の出来る合唱団であること。また普段合唱を聞かない人、合唱に興味のなかった人も引き付ける演奏ができ、《EST》ファンを増やし続け、本当の意味での市民権を得ていく合唱団であること。これこそ、私とともに歩む《EST》の一番の個性です。   

C 1人1人がアンサンブルシンガーの理想像を目指す合唱団

 少人数で結成された創立当初から、1人1人がアンサンブルシンガーの理想像を目指し、マドリガルをはじめとするきめ細かな音楽を追求してきました。人数が増えた現在も、音色の均一性、アゴーギクの細やかさ等、理想像は脈々と受け継がれています。

D ルネサンス時代の音楽を原点とする合唱団

 ACを具体化した特徴として、ルネサンス時代の音楽を原点としてきました。いつでもそこに立ち返ることによって、《EST》の音楽作りが方向付けられてきました。このことは、これからにおいてもとても大きな意味があります。特に発声面です。ルネサンスポリフォニーの理想に向かえる発声を目標にしていきます。このことは、後で詳しく述べたいと思います。

私が考える《EST》のメンバーのあり方


 以上の個性を考えながら、「では、《EST》のメンバーは、どうあればいいのか・・・・」ということを述べてみたいと思います。新たなメンバーも、これからメンバーとなってくれる、まだ見ぬ方々も、下記の5つの柱を理解していただければいいと思います。なお、私の尊敬する合唱指揮者のひとりであられる雨森先生のお考えが大きく私に反映していることを申し添えておきましょう。

@  練習を大切にする合唱団でありたい。

 練習というのは、音楽を創っていく過程です。そこで、まず歌い手自身が、その音楽に感動し、そして時には涙を流すくらいの熱い場が毎回あらねばなりません。そうした過程を経て創り出される音楽だからこそ、聴く人にも感動を伝えることが出来るのです。

A 「自分は必要な存在なのだという自覚と責任」を持った人達の集まりでありたい。

 メンバーのひとりが欠けてもチームプレーは成り立ちません。また、せっかくいい練習をしても、その日休んでいた人が次の練習で全く勝手な歌い方をすれば、みなで築き上げたものが、一瞬でこわれてしまいます。この想いがすべての人にあれば、休んだときのフォローのあり方が全く違ってくると思うのです。 これがなければ、少ない練習の中で、皆でひとつのものを創り上げることは出来ないし、指揮者も、毎回毎回同じことを言うばかりで、練習は(毎回まじめに来ている人には)退屈なものになり、合唱団の進歩は止まります。
 
 指揮者との練習は、純粋に音楽創りをする時間です。その為に自主練習・パート練習で、声の面、音程、言葉等、基礎的な部分について充分に練習されてある必要があります。メンバーの自主練習に対する想いが、《EST》を大きく左右していくのです。

B「自分が表現しなければならない」という想いを持った人達の集まりでありたい。

ひとりでも表現出来ることが目標です。その為には、ひとりひとりの努力、頑張りが極めて重要となります。週1回の皆で行う練習だけでは、そのようなことは、出来るはずがありません。日々の努力なくして、道を極めることはできません。逆に皆がそういう想い(自分が歌わなければ)を持って努力している合唱団の演奏は、その一点に於いても感動的だと思います。なぜなら、その演奏は自発的な表現意欲に満ち溢れているはずですから。

C あらゆる音楽的要求に応えられる声の技術を持った人達の集まりを目指したい。      

合唱指揮者の當間先生の提唱されている“ヴォーチ・デ・フィンテ”を《EST》サウンドの基礎と位置付け、定着させていきます。このことが、どれだけ大切なことなのかということは、また詳しく述べたいと思います。その上で、それぞれの作品が求めているサウンドに限りなく近づける、終りなき努力と向上心を持ち続けていきたいものです。音律については、純正調を基礎にしながら、平均律、ピタゴラス調にとどまらず、独自のメソッドを確立し、使いこなせる所まで目指したいと思います。

D ピュアな心ときらきらした目を持ち、信じあえる人たちの集まりでありたい。

初めは、音取りが遅くても、声に課題があっても、志を同じくするという点で信じあうことができれば、その人は、りっぱな《EST》シンガーです。まっすぐにいい音楽を目指し、お互いにどこまでも切磋琢磨し合える、人間的にもすばらしい仲間。私の求める《EST》像です。この域まで来れば、もう《EST》は一生の宝物です。

具体化していくためには

 理想は、語ることがまずできなければなりませんが、次の段階として、いざ、現実からの出発となると、なかなか難しいですね。

 まずは、意識の持ち方です。メンバーは皆、生活を抱えていますから、どうしても、その中で物を考えてしまいます。それを理想を語る議論とごちゃごちゃに混ぜてしまい、話し合いが、すっきりと結論づけられないことが今までたくさんありました。話し合いのルール、結論への牽引力のようなものが、メンバーに必要なのではないでしょうか。どこに出しても恥ずかしくないような議論をすること。この自覚が求められています。

 また、音楽は、時間の芸術です。したがって、継続が欠かせません。語った理想は、毎日の実践によってかなえられて行きます。日日の意識と実践力。これが音楽を支えていきます。

 アマチュアの楽しみとしての歌が、《EST》という意識集団の中で、アンサンブルという形で高められ、個々の人生における大きな礎となっていけばいいと思います。そうなってこそ、忙しい生活の中、遠くから時間をかけて通ってくる甲斐もあるわけです。そうなれば、音楽監督として私が関わっていく意味も、ほとんど答えが出たようなものです。

 さて、次回は、“声”の面に絞って、今抱えている大きな問題点とこれからの方向性を述べていきたいと思います。




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2002.1.14

新たな《EST》を考える(2)


ルネサンス時代の音楽を原点とするには

 当初から、「ルネサンス音楽」を掲げて、活動に取り組んできたのですが、なかなかなかいい演奏ができませんでした。それもそのはず、様式感やイメージばかりが先行し、それに見合った声作りをするためのメソッドがなく、試行錯誤を繰り返していたのです。

 「ビブラートのない倍音をたくさん含んだ心地よいサウンドを確立したい」と強く思い、そのための具体的な発声メソッドを教わったのは昨年4月のことでした。合唱指揮者の當間先生にお越しいただいてのことです。その後、當間先生率いるシュッツ合唱団の合宿におじゃまし、もう一度勉強させていただき、《EST》で練習に取り入れ始めたのが8月。それ以降、現在に至るまで、《EST》サウンドは確実に変わりつつあります。その“ヴォーチ・デ・フィンテ”は、彼のHPにくわしく掲載されていますが、以下の特徴を持ちます。

1.声の立ち上がりが明確。
2.精確なピッチコントロールができる。
3.ヴィブラートのコントロールができる。
4.純正律の響きを作りだす基本ができる。
5.「独唱」と「合唱」の使い分けができる。
6.きめ細やかな感情の表現ができる。

 客席数5.6百の中ホールや小ホールには最適の発声法であり、この技法を身に付けた後、様々な流派の発声にもスムーズに移行でき、発声のメカニズムがよく理解できるようになり、勿論、合唱に持ちうるには最適・・・・・・とも述べられています。ルネサンス時代の音楽を原点とする《EST》にふさわしいメソッドです。

困難に直面

 ところが、実際にこの発声法を前面に押し出した練習は、予想以上の困難を極めたのです。すぐにマスターできたメンバーと、なかなか達成できないメンバー。中にはこの方向自体に抵抗を示すメンバーも。

 しばらく、つらい気持ちでの練習が続きました。結局、中途半端なままで、秋のコンクールを終えてしまったのです。幸いなことに、全国大会ではかなりのレベルまで達成することができましたが、それでも、意識を変えられないままのほんの一部のメンバーとのわだかまりによる、メンタルな面での団結不足は隠しえないものでした。特に、マスターし得ないメンバーの中に、長年のベテランや、声楽を教えている人が含まれていたことが、問題を複雑化、長期化させたのです。

 私は、とにかく打ち出した方向性は守り抜こうと決めてかかりました。私を信じ、ヴォーチ・デ・フィンテを信じる人がだんだんと増えてくる実感が救いでした。合唱団の声を変えていくためには、頑固なまでの意思の強さと、結果を出すことが必要だということを思い知らされたのでした。

 コンクールに向かう練習で、私は、カルドシュ・パール氏の清潔なイントネーション作りのメソッドを併用しました。いわゆる純正律のサウンド作りです。これは効果があがりました。ヴォーチ・デ・フィンテをマスターすることで、練習場には倍音が豊かに響き渡り、マスターしたメンバーからは、次々に「響かせることの感動がこんなに大きいものかということがわかった!」という感想が届くようになりました。

 第9回コンサートでは、たくさんの聴衆から、『豊かに響く透明なサウンド』と賛辞をいただきました。ほっと胸を撫で下ろしているところです。

これからの方向性

 一番、かわいそうな状況にあったのは、何を信じたらいいのか困ってしまったであろう若いメンバー達でした。また、将来新たに加わってくださるメンバーのためにも、今のメンバーで方向性を明確にしていく必要があります。

 『声を変える』ことは、『意識を変えること』。そのためには、柔軟な価値観と音楽に対する謙虚な取り組みが、一人一人に必要とされます。今、《EST》の核になっているメンバー達は、“《EST》のしおり”なるものの作成を始めてくれています。車の両輪となる、“音楽作り”と“合唱団作り”。声だけが変わることは不可能なのです。《EST》サウンドを確かなものにするために、練習システムから、団規約から、すべてを見直そう!・・・・・ということに気付いてくれたのです。

 団体で何かを成し遂げるには、総意団結が不可欠。おりしも3月は総会の時期。今、《EST》は、来年度に向けて、確かな一歩を踏み出し始めました。




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2002.2.15

楽しかった三重県アンサンブルコンテスト


Vocal Ensemble 《EST》は、『第13回三重県アンサンブルコンテスト』一般部門に2グループ出場しました。アコール《EST》は金賞&最優秀賞を、《EST》メンズクワイヤも金賞(2位)を受賞しました。私は客席から応援(指揮者なしというルールだからです)。楽しい1日でした。

新たな息吹感じる《EST》メンズクワイヤ

 ここに来て4人の男性メンバーが新たに加わり、男声は、フレッシュな気持ちで盛り上がっています。他団体で指導的立場である優秀なお二人と、前途洋々な若者二人です。旧メンバーも、張り切っています。そんな中、12人という制限人数を本番直前にじゃんけんで決め、ステージに。

 本番は、荒削りな面もあったにせよ、第9回コンサート時より飛躍的にいい演奏でした。松下耕作品の深いところへのアプローチが真摯に見える演奏でした。新たなるサウンドの統一に向かい、夏ごろには、更に更にきめ細かい表現が出来るようになるでしょう。楽しみです。

表現の深みに向かったアコール《EST》

 私は、ほとんど男声に関わっていたため、女声は、アンサンブルトレーナーの加藤さんを中心に練習を進めていただきました。本番、10人での演奏は、深いところまでの表現統一が見られ、音色も清楚にまとめあげられました。宗教曲の中身をノンビブラートのサウンドに乗せて、シックに感動的に演奏することが出来たと思います。

 女声は、お一人の新たなメンバーをお迎えしました。音大の声楽科を出られたのですが、ノンビブラートの発声をよく理解していただき、謙虚に我々と共にやってくれています。この謙虚さが結局は早道なのです。

フェスティバルを客席から・・・

 コンテストに続いて行われたフェスティバルでは、《EST》のメンバーが客席を大変盛り上げてくれました。大きな拍手に歓声、曲の途中でのソロが終わった瞬間の拍手などなど。ドイツでの、客席と演奏者の一体になった雰囲気をかもし出そうとしてくれてるようでした。音楽の場を内から楽しく変えていこう・・・というエネルギーは尊いものです。

望むべくは、企画進行も、もっと柔らかく暖かく。たとえば、「“銅賞”とアナウンスする声が暗く、悪い賞みたいに感じてしまう。」と、ある高校生の声。聴衆のテンションをもっと感じ取って進行するべきでしょう。審査員は愛知・岐阜から合唱指導者にお越しいただきましたが、全体講評はやはり欲しいです。「主役である出演者たちにもっと近づく工夫を!」私も連盟の一員として提案していきたいと感じました。

楽しさ作り

 遠距離メンバーが多い《EST》。団長の片道3時間を始め、奈良から2人、愛知から2人。滋賀から1人。県内でも、遠いところから1時間かけてやってくるメンバーも。そんな中で、毎回の練習を楽しいものにしていくことこそ、大切です。充実感、また来週もがんばろうという気持ち作り。メンタルな面が伴ってこその音楽活動です。

 いつも、心通わすことのできる温かい場。その中にいてこそ、妥協のない志を貫くことが出来るのです。週1回の限られた時間をどのように作っていくのか。そのためにどんな準備をしていけばいいのか。新しいメンバーとともに、楽しさ作り真っ最中です。




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2002.3.12

新たな《EST》が始まります


Vocal Ensemble 《EST》は、3月10日に2002年度総会を終えました。これからのビジョンを確認し、役員改選をし、新たな《EST》のスタートです。

“《EST》スコラーズ”が誕生します

私が、音楽監督を引き受けるにあたって、去年から提案していたことの一つは、新たな音楽グループを作ることでした。 《EST》スコラーズと命名されたこのグループは、次のようなものです。

◎《EST》スコラーズ・・・・各パート1名を含む数名。

 アンサンブルのリーダーとして、常に理想のアンサンブルを実現し、全体練習、パート練習、個人練習のアドバイザー的役割となる。コンサートや招待演奏等での小編成アンサンブルの中心メンバーとなる。また、各種コンクールでの中心メンバーとなる。毎年6月のオーディションでは審査を勤める。普段から音楽技術面で音楽監督やパートリーダーとの連携を深める。
● 選出・・・・・・毎年3月の団内アンサンブルコンテスト後、全団員を対象とし、全員が項目別投票を行う。項目として、
1.《EST》サウンドに合う発声をしている。 
2.譜読みが早くしっかりしている。 
3.個人やパートへの発声面・音楽面での指導ができる。 
4.毎回の練習に対して非常に前向きである。 
5.小編成アンサンブルの中心になれる。 
6.コンクールでの中心メンバーとなれる。 
7.普段から音楽技術面で音楽監督やパートリーダーとの連携を深めることができる。・・・
その結果を1つの資料とし、本人の意思を尊重し、4月初めに音楽監督がメンバーを発表する。

 なお、団内アンサンブルコンテストという企画も新たなものです。メンバー全員がいくつかのグループに分かれ、豪華(?)景品付きでアンサンブルを競い合うのです。トロフィーなども用意し、県外から審査員も招聘してのなかなか立派なコンテストになるはずです。すでに、定例練習を少し早く終えて、その後の時間をそれぞれのグループが楽しく練習をしています。和気あいあいとした雰囲気は、メンバー相互の交流にもなっています。

 現在の一人一人の練習への取り組みを1年前の同じ時期と比べたとき、その充実度、モチベーションの高さなど、大変な向上を感じます。その原動力になっているのが、この提案だとすれば、それだけでも、「よかった・・」と思います。一人一人の持っている潜在的な力が、いかに室内アンサンブルの理想に向かって引き出されるか。それは、メンタルな面が非常に大きいと思います。
 
 一般にアマチュア合唱団はいつも過渡期と言われますが、《EST》も例外ではなく、音楽的欲求の強さ、技術の高さ、経験の深さなど、さまざまなメンバーで構成されています。伸びて行けるメンバーはどんどん伸びて行くことができ、初心者や忙しくなったメンバーも、理想を夢見て無理なく続けていけるような合唱団作り。それにより、《EST》全体のレベルの向上をも図って行きたいものです。

  
 さて、どんなメンバーが選出されるか! 全員の投票を参考にしながら決めていく私の大切な役割です。選ばれたメンバーにとってもそうでないメンバーにとっても、最上の1年となるよう、一人一人を大切に想いながら、選んでいきたいと思います。

《EST》シンガーズ、アコール《EST》〔女声〕、《EST》メンズクワイヤー〔男声

 宝塚国際室内合唱コンクールなどで用いているこの3つのグループ名も、下記のような性格を持つグループとして、改めて、提案しました。

◎《EST》シンガーズ・・・・・・20名を上限〔混声〕。

 《EST》のメンバーのあるべき姿を追求し、本格的な室内合唱を実現する。“《EST》サウンド”の核となり、《EST》全体の音楽向上に貢献する。宝塚国際室内合唱コンクールに出場し、広く音楽をアピールし、評価を受ける。コンサートで、レパートリーを披露する。
 ● 選出・・・・・出席率、平常の練習への取り組み、6月のオーディション審査結果を資料に、7月初めに音楽監督が提案。


◎ アコール《EST》〔女声〕、《EST》メンズクワイヤー〔男声〕・・・・・20名を上限。

本格的な同声室内合唱を実現し、《EST》全体の音楽向上に貢献する。宝塚国際室内合唱コンクールに出場し、広く音楽をアピールし、評価を受ける。コンサートで、レパートリーを披露する。
 ● 選出・・・・・出席率、平常の練習への取り組み、6月のオーディション審査結果を資料に、7月に音楽監督が提案。(《EST》スコラーズは含まれる。)


2つの展望

 その他、大きな提案としては、下記の2つが揚げられます。

 ひとつは、
2回目の海外演奏についてです。昨年5〜6月のドイツへの海外演奏は、かけがえのないものであり、その後の《EST》の音楽作りへの大変大きな礎となっています。“継続は力なり”という諺が音楽にあてはまることはいうまでもありません。《EST》の音楽は、世界へ発信し続けるものでありたい。今年のドイツの反省と、これからの海外イベントの情報集めをし、2回目の海外演奏の目的・時期・場所・演奏曲などを煮詰めていき、2003年〜2004年に実現したいと思っています。

 もうひとつは、 新作委嘱についてです。選曲の指標になるものは、合唱音楽の原点であるルネサンス以前の作品と現代の音楽(Contemporary Music)ですが、とりわけ邦人の作品は重要です。現在、合唱のみならず音楽界全体がContemporaryに対しとても閉鎖的です。こうした状況の一端を切り拓くためにも、とりわけ邦人のContemporaryを演奏していくことはとても重要なことなのです。Contemporaryが大衆に受け入れられるためには、「いい作品」が「いい演奏」されなければなりません。作曲家との共同作業で、《EST》のオリジナルとなる作品を世界に送り出していきたいのです。どなたに、どんな作品を書いていただくか、これも皆で考えていきたいものです。

スペインで催される“ヨーロッパカンタート”に

 他にも、幾つかの提案を掲げての総会でしたが、意を汲んでいただき、2002年度も、私が音楽監督を務める事となりました。
 
 早速、海外演奏に関しては、「社会人や学生が動きやすい時期(7〜8月)を考慮に入れ、洲脇先生(世界合唱連合副会長)からのアドバイスをいただこう!」という意見があがり、洲脇先生にメール。

 その結果、すぐにいただいたお返事には、「2003年度の夏に催される“ヨーロッパカンタート”への参加をお勧めします。」という夢のようなお話をいただきました。バルセロナに、ヨーロッパの合唱人3000人程が集い、数十種類のアトリエで世界的な指導者と触れ合い、各地でコンサートを催すこともできるという、本格的な世界最高のイベントです。

 何より私が理想としたい“音楽を勉強し深めていく合唱団”。西洋合唱音楽の本質を出来うる限り理解し、延長線上にある現代音楽(特に日本人作曲家のもの)の価値ある作品を演奏しつづけたいという想いを、この“ヨーロッパカンタート”が見事に満たしてくれることは間違いないでしょう。
 
 さあ、メンバーの知恵を結集しての議論が始まります。音楽を深めることの意味までをも掘り下げながら、建設的な深い話し合いが積み重ねられることを期待し、いろいろな資料も集めて見ようと思っています。



ヨーロッパカンタート 



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2002.4.5

盛り上がった団内アンサンブルコンテスト


Vocal Ensemble 《EST》は、3月30〜31日の合宿で、第1回団内アンサンブルコンテストを催しました。

五つの収穫

初めての企画でしたが、これほど盛り上がるとは! 本番までの取り組みにも多くの収穫がありました。その収穫をまとめておきましょう。

 まずは、全員が、各パート1人で歌うことを経験できたことです。コンテストは全員部門とフリー部門とを設定し、全員部門には、文字通り全員を、8人ずつ4つのチームに分けました。そして、課題曲に、8部合唱を用意したのです。8人で8部合唱です。曲は、マルタン作曲の“妖精アリエールの5つの歌”から第3曲。ハーモニーがバチッと決まればとても面白い曲なのです。明快なリズムが歌う喜びを掻き立ててくれます。

 二つ目は、全員部門の各グループの練習で、いいコミュニケーションがとれたことです。アンサンブルを通しての人と人とのいい在り方は、わかっていても、実際の体験の中で深めていくのは、容易ではないはず。それが、新しいメンバーを含めて、とても和やかに、しかも妥協なく、楽しんでやれました。本番の演奏で、そのことがよく伺えました。

 三つ目。フリー部門で、たくさんのメンバーが自分の可能性をアピールできたこと。このことは今回の一番大きな収穫といえます。フリー部門は、枠のない部門で、一人が何回出ても構わないこととしましたが、何と、予想を上回る8チームの参加。しかも、そのうちの5チーム、4チームに参加したつわものまで登場しました。一体どうやって練習をやりくりしたのでしょう。たくさんのスターが誕生しました。新人がいい声を聞かせてくれました。明日の《EST》を支える可能性を感じました。あるベースのメンバーはファルセットでソプラノを歌い、喝采を浴びました。若さ溢れる三重大学の7人組で歌った“宇宙戦艦ヤマト”は、彼らのねらいどおり大受けで、一同笑いが絶えませんでした。最優秀賞に選ばれたチームは、新人2人を含む4人で、トムキンズのアクロバット的なマドリガルをアップテンポで見事に歌い上げ、大きな拍手。練習の積み上げ方もとてもよかったと、見ていて思いました。

 四つ目は、フリー部門のチームの組み方に現れた暖かな気心です。フリー部門の締め切りは、本番直前である“一週間前まで”としておいたのですが、間際になって、だんだんチーム数が増えていきました。これは、なかなか積極的にチームを組めないメンバーに「いっしょにやろうよ」と暖かな気心で誘った結果だと伺えました。《EST》全体のメンタルな面での暖かさは、こういう現象に現れます。とても、頼もしく、心豊かになりました。

 五つ目は、運営での若いメンバーの達成感です。外部から審査員をお招きしたということもあり、コンテストの進行などきちんとする必要に迫られたこともあるのですが、新しいメンバーを中心に企画・運営・進行が進んだことです。団内で、これほど整然とさわやかにできた影には、新しいメンバーをうまく引っ張ってくれたあるメンバーの功績が光ります。このようにして、新しいメンバーが“合唱団を作っていく”経験をしたのです。

 とにかく、楽しいコンテストでした。手作りのコンテストでしたが、これだけ盛り上がると、何か、大きな行事をなし得たような、いい気持ちです。いや、実際、新たな《EST》の門出にふさわしい大きな行事であったと思います。

一人一人がアンサンブルの理想に向かって


 『各パート1人ずつで、いいアンサンブルができること。そして、大人数になったときも、小アンサンブルの精神で。』

 このことは、いつも合言葉にしていることです。そのことを実際の演奏で示そうとしたのが、この企画でした。お互いに、歌い合い、聴きあい、評価もされたわけですが、すばらしいアンサンブルもあれば、過渡期のアンサンブルもあったことが、全員の場で明らかになったわけです。これからが大切です。理想のアンサンブルとはどういうものか。その理想に向かうためのメソッドを一人一人がどう持つか。アグレッシブな気持ちで、音楽と向き合うことで、さらに、いいものを目指す合唱団になれば、この企画が、本当に成功したということにもなるでしょう。次につながることで、今が評価される。音楽は、いつもそうです。続けることに意味があるわけですよね。

 



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2002.4.17

素晴らしい聴き手に出会う幸せ


岡山県の、あるすばらしい聴き手の方とメールのやり取りが続いています。演奏者にとって、本物の聴衆に恵まれることは、幸せですよね。私の言う本物の聴衆とは、外面的なことではなく、音楽そのものを感じ取ってくれる方々のことです。

 逆に、コンクール会場でよく耳にする、「テノールがうまかったね」とか、「選曲がコンクール向き」とか、「あれでもう少し音程が決まってたら・・・」とか、「○○合唱団よりはいいんじゃない」等の感想には、さびしい気持ちになります。

 実際、あるコンクールで、ある団体の演奏にすごく音楽的にいいものを感じたことがありました。思わずブラボーと叫びたくなったのですが、周りの聴衆から上記のような言葉が聞かれてきました。そのとき、「何で感動できないんだ!」と腹立たしくなったことがありました。だって、周りと一体感を得たいじゃないですか、こういう時って。

 その点でも、昨年のドイツでの経験は大きかったです。コンクールであろうが何であろうが、「いいものはいい!俺はそのことを判断できる!」というような自信が、聴衆にみなぎっているような気がしたのです。ですから、いい演奏には、先頭切って、スタンディングオベーションに、「ブラボー」。楽しい演奏には、もうニコニコ。そして、惜しみない拍手は、メッセージ性に満ちていました。聴衆が音楽しているのです。当然、演奏するものにもエネルギーが沸いてきます。

 「日本も、絶対にこうならなきゃいけない。そのために、演奏するときには、本当の音楽をしよう。聴き手になったときは、演奏者から、本当の音楽を感じ取るようにしよう。」と言い聞かせて、音楽を営んできました。そんなときに、そのことをちゃんと感じて、《EST》の演奏に感動していただいた方が、冒頭のメールの方なのです。

 《EST》の演奏を誉めていただいたのも、もちろんうれしかったのですが、この方が、音楽の本当のところを感じてくれている、本物の聴衆に巡り会えたというのが幸せでした。我々のやろうとしたことをそのまま受け止めてくれた・・・。遠く離れた岡山県に、とても近い音楽仲間が出来た! やはり、これって幸せですよね。

 最後に、そのメールからの抜粋を。手前味噌とお感じになられるかもしれませんが、私に幸せをもたらせてくれたメールです。どうかご一読ください。

はじめまして。
今年の宝塚コンクールに初めて出場して、初めてESTの演奏を聴いてとても感動して以来の大ファンです!
全国大会でも、テープを買って聴きました。素晴らしかったです!

宝塚は本当にいい経験だったんですよ!交流会の楽しかったこと!外国の方はもちろんのこと、《EST》や「まい」のメンバーの方ともお話できて、いい刺激を受けました。本当に合唱を続けていてよかったと思いました。言葉や肌の色は違っていても人間の喜びや悲しみって一緒ですよね。あの時に、器楽よりもなによりも、いろんな国の人と理解しあうのには合唱が一番近いと思いました。

実は。。。宝塚で演奏をお聴きして以来ずっとお聞きしたい、と思っていたことがあるのです。演奏を建築物にたとえると、《EST》はひとりひとりがこれはゴシック、これはロマネスクと明確に意識して歌われているような気がするのです。どうも演奏時の先生の指揮を見て、というだけではなさそうです。建築物に例えたのは、それは(音楽的な)様式だけでなく、方向性とか、、、建物の中に入ったら、天井でも高いところや低いところがあって、、、立体感といったらいいのでしょうか?・・・といったものを、《EST》の演奏に感じたからです。先生はどのように指導されているのですか?どのように練習したらよいのですか?

宝塚で「おらしょ」を聴いている時に、海で十字架刑になって死んでいったキリシタンのイメージが突然浮かび、私自身驚きを隠せませんでした。苦しい生活や、神を信じるしかないせつない気持ちなど次々と!実はすっかりわすれてしまっていたのですが、私は遠藤周作さんの「沈黙」や「母なるもの」を読んでいて、その記憶を呼び起こされたのでした。だから、この合唱団はキリシタンのことをよく理解されている、と思い、また、楽曲のみならず幅広く勉強したことが必ず何某かの形で演奏に表れるものなのだ、と意を強くしました。

・・・というわけで、私はESTの演奏が好きでした。ESTの演奏はおろか名前もはじめてきいたのですが、これから「全日本」の全国大会で活躍する合唱団だ!と思いました。
それで、楽しみに全国大会のテープを買って聴いたら。。。「詩華抄」でしたか? 宝塚よりパワーアップした宇宙を浮遊しているような感じ!えーっ!なんでこんなふうに歌えるの?と思わずにはいられませんでした。音色の変化(ESTは豊かですよね!)や発声かな、構成力かな?とかいろいろ考えましたが・・・。




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