2004.5.3
バロックとドイツ・ロマン派へのアプローチ〜オルトナー先生の公開レッスンを終えて
《EST》の今年度初の本番は、5月1日の、オルトナー先生による公開レッスンとその成果としての発表会でした。(『TOKYO CANTAT2004 サテライト・セミナーin三重』を終えて)
TOKYO CATATへの参加は、昨年に続いてのものです。昨年は、第一生命ホールでアジアの合唱曲を演奏しました。今年は、海外の講師をこちらにお呼びして、勉強しようというものでした。同時に、地元の方々に、指導によって《EST》の音楽がどう変わっていくか、作曲家の意図したものがどう立ち現れてくるかをリアルタイムで楽しんでいただこうという目的もありました。
この日のために《EST》が選んだ作品は、Herbstlied (Mendelssohn)とMotette1"Singet dem Herrn ein neues
Lied"BWV225(J.S.Bach)。ドイツ語、ロマン派、バロック、ダブルコーラスと、《EST》にとっての新たなジャンル。そこで、ドイツ圏の世界的な指導者による研鑽を積みたかったのです。
メンバー達は、この日に向け、練習を積んできました。オルトナー先生にこれだけは指導して欲しくないもの(笑)として「音程の間違い」「音律の不確かさ(音が下がっている等)」「言葉の発音の明らかな間違い」などを挙げ、オルトナー先生のアナリーゼに柔軟に対応できるよう心掛けました。特にバッハは大変でしたが、この日を糧に、体当たりで練習ができました。
当日も、朝から練習をしました。オルトナー先生との大切な時間を前に、みんなワクワク、熱気ムンムンでした。
公開レッスン直前、楽屋にてオルトナー先生に「ドイツ語、そしてダブルコーラスは慣れていません。どうかよろしくお願いします。」とお伝えしました。ご指導いただく際のポイントにしていただきたかったからです。
さて、レッスン。Herbstlied(Mendelssohn)は、言葉の意味を紐解いていく大変魅力的なご指導でした。アゴーギク、テンポ、音楽の流れ、どれもが詩の意味から発し、詩を朗読するように音楽を作っていかれました。まさにロマン派の香り漂う、心洗われる瑞々しい歌曲のように。ドイツロマン派の合唱曲は、避けて通れないジャンル。オルトナー先生のレッスンによって、アプローチのノウハウが確認でき、大変有意義でした。「アナリーゼは頭で考えるだけでは終らない。聴衆に伝わってこそその役割を果たすのだ。」とおっしゃられ、指揮者としての厳しさを言葉にされたのも印象的でした。
Motette1"Singet dem Herrn ein neues
Lied"BWV225(J.S.Bach)は、バッハがどのように考えて作曲していったかをすっきりと示していくご指導でした。音楽の構造を徹底して聴衆に示していく演奏・・・。オルトナー先生のこの作品に対する造詣の深さ、そして仕上がっていく音楽のおもしろさは、何ともいえないものでした。バッハを演奏する際のルールと、表現のアイデアをたくさん教えて頂きました。
《EST》の面々は、集中力が切れることなく、よくやってくれました。聴講の方々も喜んでいただくという、モデル合唱団としての責任を果たしてくれたのが嬉しかったです。
終った直後、オルトナー先生とお話できました。「ヨーロッパ的なサウンド」「メンデルスゾーンの出来に満足」「もっと時間があればこういうことをやっていきたい」など、熱を込めて話されていました。本番中も、あまりにも指導に燃えていただき、通訳される方が、ついていけないくらいでした。ユーモアたっぷりで、笑いの耐えないご指導でした。
オルトナー先生のご指導が一番手に取るようにわかったのは、客席にいた私かもしれません。全体像が会場の響きを伴ってバランスよく耳に入るのは、ステージの上よりもやはり客席でしょうから。ちょっと得をした気分。いや、これからの練習をしっかりしなければいけませんね、得をした分。
レッスン後も、《EST》のみんなは、集まって譜面を広げて確認会です。夜の発表会に備えて。こういった、演奏に対する貪欲さが全員に出てきたのが、とても嬉しいですね。新たなメンバーもしっかりついてきてくれています。
発表会では、Herbstlied(Mendelssohn)を、オルトナー先生が、練習の時より速いテンポで始められた事にみんな少し焦ったようです。でも私にはわかります。オルトナー先生は、乗りに乗っていたのですよ、きっと(笑)。
オルトナー先生は、バロックとドイツ・ロマン派へのアプローチを論理的に、情熱的に、楽しく示していかれました。《EST》の新たな表現レパートリーが誕生しました。この日の体験を大切に、明日からの音楽活動に勤しんでいきたいと思います。
企画の“音楽樹”と運営の県合唱連盟に感謝しつつ、こういう機会を継続的に求めて行きたいなあと思います。海外での華やかな体験も貴いですが、地元の聴衆とともに本物に触れることの重要性は計り知れません。我々は地元の聴衆に向けて心通わせて音楽をしていくのですから。願わくば、今回のような時空をもっと一般のたくさんの方々と味わいたいものです。今後の活動として考えていきたいと思っています。
2004.5.13
「濃い一日でした!」〜木下牧子先生と共にレコーディング
《EST》の今年度の大きな活動であるレコーディング。その1回目が、5月9日、三重県文化会館大ホールを一日借り切って行われました。今回は、木下作品の中でも絶品だと確信できるアカペラ作品6曲のレコーディングでした。
午前9時から声を出し、舞台で3曲ほど練習。ジョバンニ(録音会社名)の木村さんを紹介した時、《EST》の18歳メンバー“その1”曰く。「あれ?日本人なんだ!」!!! どうも、ジョバンニという名前の方と勘違いしていたようです。
木下先生が客席に登場したのは午前11時。心地よい緊張感が舞台上にさっと漂い、後ろ向きで指揮をしていた私にもわかりました。
すぐに、簡単な打ち合わせです。「同じような曲調の作品が複数あるので、どれかは思い切った音楽表現をつけてみたい。」などと、話される中、18歳メンバー“その2”が走ってきます。何事かと思いきや、「サ、サイン下さい!」!!!
こんな元気な若いメンバーを加え、気恥ずかしい初々しさ漂う現在の《EST》。木下先生も「若いですね」と微笑まれ、おかげで緊張の中にもワクワクしながら、レコーディングは始まったのでした。
「レコーディングは、コンサートとはまた違ったしんどさがあります。研究用じゃなく鑑賞用としてのクオリティーの高いCDを作りたいと思いますのでよろしくお願いします。」というご挨拶を頂いて。
“さびしいカシの木”
我々が1曲目に選んだのがこの作品でした。素直な作風、自然な流れ。声にも無理がなく、朝に適していると思ったからです。「この曲は意外と難しいのよねえ」と呟かれる木下先生が気になりましたが、まずは『テイク1』。
「2番から3番に移る部分に工夫を」というアドバイスを受け、『テイク2』。今度は、「若いからかな。アドバイスに敏感すぎます(笑)。中庸で行きましょう。」と木下先生。歌う方も和やかムードに。『テイク3』に、客席の木下先生は、大きく腕を上げて丸印。どうやら合格です。
“うたをうたうとき”
実は前日(土曜日)練習の時、この作品のある部分がハモらなくなって、滞ってしまったのです。シンプルながら落とし穴のある作品。心配でしたが、それぞれのメンバーがよく集中し、この日は、難所を難所と感じさせることもなく、無事終りました。特にお小言もなく『テイク2』くらいでOK。
録音『テイク1』 → 下手で再生を聴きながらアドバイス → 再録音『テイク2』 → ・・・・・・・ という繰り返しを一曲ずつ行っていくのです。だから、いつOKが出るか、みんなどきどきしながら舞台上で待つのです。私とトレーナーの加藤さん、木村さんと木下先生の4人が下手で打ち合わせをする間。
ですから、時間が掛かります。録音するたびに打ち合わせをするのですから。
2曲の録音を終了し、12時30分。ここで、お昼休みです。木村さんの予定より30分も早くにお昼ということで、みんなホッと胸を撫で下ろしていました。
食事を先生とご一緒させていただきました。オペラ作品と合唱作品のメロディー作りの違い、ライブ録音こぼれ話、響きと発声のお話など、木下先生の音楽観をたくさん教えていただきました。木下先生は、権威とは無縁の非常に自然体の方でした。言われることもすべて納得でき、ノーマルで純粋な方だと思いました。作品とお人柄がまっすぐ繋がっているような。
“ロマンティストの豚”
13時半、録音の再開です。まずは、“ロマンティストの豚”です。このユーモア溢れる作品は、男声合唱曲としてまず一昨年に演奏し、今回は混声で録音するという、《EST》にとってなじみ深いものです。絵本を小さい子に読むがごとく、楽しく語るように歌ってきました。
実は、特に後半をテンポやダイナミックスを自由に付け、原曲を誇張した演奏を録音して、予め先生に送らせてもらったのです。その演奏のアドバイスは、予想通りでした。つまり、「全体に丁寧で柔らかい雰囲気で良いと思います。三番繰り返すので、三度目に変化させたいのはもっともで、演奏会でなら、全く問題ない演出だと思います。が・・CDだと、演奏を丸コピーする団が少なからず出てきますので楽譜にない演出(とてもテンポを落とすやり方)はほどほどにしていただいたほうがいいかもしれません。」といったものでした。
そこで、今回は、テンポは指定のままで、歌い方を変化させようと臨んだのです。
ところが木下先生、何箇所かのアドバイスの後、「3番は、送っていただいたMDの雰囲気を少し出してみましょう。少しゆっくりにしてみてください。」これには、みんな大喜び。得意になって。《EST》バージョンで演奏しました。もっとも、節度の範囲内ででしたが。
「これもいい演奏ですが、もう一つ最後をさらっと終る演奏も録っておきましょう。」というアドバイスで、もう一度。
今から考えると、木下先生のちょっとしたアドバイスが、実は絶妙なものだったと感心しています。言葉の選ばれ方、ムードの作り方、少ない言葉で大きな効果を上げられていたのです。うーん、勉強になります。
“いっしょに”
この作品でのアドバイスは、男声がリードする2箇所についてのバランスと、最後のリタルダンドとメノモッソの違い、コンマでの音楽の止め方の度合いなどでした。非常に細かいニュアンスにこだわられていることが嬉しかったです。《EST》のみんなもこの辺り、乗りに乗っていましたね。ここで、20分の休憩。
“おんがく”
今回の作品の中で、一番ドラマ性のある深い味わいのあるこの作品。美しい音色と熱い思いに向かい、こだわりを持って練習を積んできました。OKが出るのに一番時間が掛かるのではないかと予想していた作品。ところが、そういう覚悟で臨んだ甲斐があってか、かなりうまく進みました。予めMDを送って先生のこの作品におけるお考えを知っておいたのも良かったのだと思います。
OKが出たのが16時30分。さあ、いよいよ、最後の作品です。ところが・・・・・・・!!!
“サッカーによせて”
この作品は、『地平線の彼方へ』の2曲目を無伴奏にアレンジしたものです。最初から最後までアップテンポで快活に歌い進められるのですが、この“単純明快さ”が、我々に油断を生んでいたような気がします。そういえば、作品への詰めも甘かったように思います。
「ハモらない!」。疲れも出てきていたのでしょう。早くレコーディングを終ろう・・・というあせりも合ったのでしょうか。結局OKが出たのは18時半。何とこの作品に丸々2時間も掛かったのです。
いい教訓になりました。いい練習になりました。そして、極めることの難しさと、達成したときの涙が出るくらいの安堵。心一つに集中しきった時に生まれる尊い音を経験しました。
ロングトーンでハーモニーを築く。ゆっくり歌い一つ一つをハモらせる。フレージングを歌詞の意味から再考する。《EST》スコラーズだけで歌い、その音に合わせる。・・・・・・2時間の間に、こんな基本的な練習を繰り返し、やっと《EST》のサウンドが復活しました。
木下先生や木村さんに『妥協』という2文字はなかったです。これこそ、プロのお仕事。その意味では、コンクールに向かう練習よりシビアでした。OKが出た瞬間、核となるメンバー達の目には涙。みんなは「やった!」と歓声をあげました。
最後の木下先生のご挨拶は、柔らかなお言葉でした。客席にいた画像担当(コンサート用)のS氏は、「すごくいい勉強になった。これほどみんなと歌いたい気持ちになったのは初めて!」と、感動してくれました。
濃い一日でした。でも、「いいCDが出来そう。後は任せてください。どこよりもいい音質にして見せます。」と力強く語ってくれた木村さんの言葉が嬉しかったです。今日の録音は所謂原石。それを磨いていくのがミキシングという仕事。木村さんは、ミキシングに一ヶ月くらい掛けられるそうです。木下先生は、「後は、木村さんの才能に懸かってるわね。」とにやり。
夜の食事会には、いつもの2倍くらいのメンバーと木村さん。みんなで、労をねぎらっていました。
初めての経験でしたが、大きな山を越えた感じです。出来上がったCDを手にする時、この日の体験が強烈に蘇ってくるのでしょう。
2004.6.21
「さらに濃い一日でした!」〜木下牧子先生と共に2回目のレコーディング
レコーディングの2回目は、6月13日、三重県文化会館小ホールを一日借り切って行われました。木下作品の中でも大人気の「地平線のかなたへ」全曲でした。
ピアニストに中村文保さんをお迎えしました。3年半ぶりの共演です。3年半前は、やはり木下先生の『オンディーヌ』でした(第8回コンサート)。それ以降、《EST》は、アカペラ作品ばかりでコンサートを催してきたことになります。
前面に出るのではなく、微妙な駆け引きで、時には合唱と溶け合い、時には合唱を押し出してくれる彼女のピアノによる表現は、本当に魅力的です。木下先生にも「すばらしいセンスです。」と絶賛されました。
前回の経験を踏まえて、男声は前日練習を。そこに、スコラーズも加わって、充実したハーモニーつくりをして、当日を迎えました。
ヴォイストレーナーの加藤さんの覚悟はすごかったです。発声がまた進化しています。そして、ちょっとした休憩にも声を出し、自分の声を確認しています。この姿は、メンバー全員にたくさんのことを教えていきました。
木下先生は、12時に来られました。それから19時まで(勿論休憩も食事も挟みながらですが)濃い時間が続きました。最後の「OK」には、達成した喜びで歓声と拍手が起こりました。
今回の木下先生のご指導は、とても柔らかくユーモラスでした。そしてご本人でないと絶対言えないコメントも。その度にみんなで笑い、その度に木下先生が近く感じられました。幸せな時間でした。
ハーモニーのバランスが悪い時には「作曲が悪いのよねえ。」とおっしゃられたり、「ここは、クレッシェンドしましょう。楽譜にはディミネンドとありますが・・・。」とか、「同じフレーズが出てきたら2回目は歌い方を変えましょう。そうしないと、“木下はくどい”って言われてしまいますのでー」とか(笑)。
心を割って指導されている姿がみんなうれしかったのです。
『地平線のかなたへ』は本当に愛すべき作品です。何度歌っても心を込めることが出来ました。その度に出来も良くなるものですから、「もう一回録ればまた良くなりそう」とか言われて、たくさん録りました。特に、最後に録った「春に」は、太鼓判を押して頂きました。
木下先生が大切にされるのは“バランス”です。音程の正確さは勿論のこと、ハーモニーの美しさを重視されます。どんな部分でも縦に鳴っていなければなりません。そのための男声の充実を求められました。よく響くベースと荒くないテナー。前日の男声練習の成果は、この日「反応がとてもいい」という木下先生のお言葉に表れていました。よかったよかった。
ジョバンニの木村さんが信頼されている調律の町田さん。彼は、ちょっとの休憩時にもこまめにピアノを触られていました。また、大切な行事には必ず立ち会ってくれる山本氏(《EST》OB)。練習後の食事で話が弾みました。町田さんの堰を切ったような話し振りはとても印象に残っています。調律の奥深さを教えていただきました。
これで、レコーディングも峠を越しました。残るは、7月3日。夢のCD完成に向けて、もう一頑張りです。
2004.6.22
「郷土シリーズ」が終りました
2004年6月19日、津市(三重県)教育委員会主催 津市文化振興事業『郷土シリーズ』としての、“ヴォーカルアンサンブル《EST》コンサート”が、津リージョンプラザで催され、無事、終りました。津市役所の方々、たくさんの聴衆の方々、関係者の方々、本当にありがとうございました。
このシリーズは、郷土出身で国内や世界で活躍されている音楽家を招いてのコンサートであるだけに、今回、アマチュアである私たちがお招きを受けたことは、大変嬉しいことで、襟を正される思いで、練習を積んできました。幸い、レコーディングや、オルトナー氏のレッスンなど、力をつけるチャンスにも恵まれ、この日を何とか無事に終えることが出来ました。
私がこのコンサートのプログラムに掲載させていただいた拙い文章を下記に。
過去を携え彼方なる未来へ〜プログラムノートに代えて フランス文学者ヴァレリーの言葉。 「私らの大切な仕事は、未来を作るということだ。私らが呼吸をしたり、栄養をとったり動き回ったりするのも、未来を作るための働きだ。 私はこの一節が好きです。ヴォーカルアンサンブル《EST》は、本日この栄えあるシリーズで、上記の精神で演奏しようと思っています。 来たるべくバロックの扉を開いたH・シュッツ。シュッツの伝統を受け継ぎ、新たな音楽様式を作り出していったJ.S.バッハ。 20〜21世紀の作曲家J.ブスト、I.Fine、E.ウィテカーは、国の違いがあるにせよ、生きる時間軸を私たちと同じくしています。 大切にしていきたい、日本の作曲家。今回は、木下牧子先生を取り上げました。 《EST》の核となるメンバーで構成された、《EST》スコラーズの今回のメニューは、楽しいアレンジもの3曲です。 「郷土シリーズ」としてのお話を頂いたのは、昨年の全日本合唱コンクールでの受賞が発端であると聞いております。 |
本番が土曜日のお昼でしたので、金曜日の夜からステージリハを開始。にも拘らず、県外のメンバーも、時間をやりくりして集まってくれました。最後の方だけでも駆けつけてくれたり。翌日へのスクラムを組むことが出来ました。この日は並び方に時間を掛けました。ステージオーダーによって、客席への響き方がすごく変わります。一番良く響くオーダー探し。見つかったときの喜びは大きいです。
当日のリハは、私が立てた時間予定よりはるかに順調に進み、45分も早く終りました。レコーディングで培った集中力でしょうか。うれしいですね。エネルギーを本番にとって置けるのですから。
また、この日は、三重テレビの方々が取材に訪れました。この日のコンサートと7月3日のレコーディングを取材し、ドキュメンタリー作品を作られるそうです。リハに集中力が出たのも取材の効果かもしれません。メンバー達は、リハが終るとカメラとマイクを向けられていました。
今回の聴衆は、高校生が多かったですね。高校の合唱部にとっては、今からが頑張りどき。この日のコンサートがそのエネルギーになっていくのなら、こんな嬉しいことはありません。
さて、本番。以下の20曲を歌いました。ある新人メンバー達曰く「あっという間に過ぎていったー。」そうですねえ。何度も練習した愛する作品たちを、ただ1回だけ、それも心を込めて歌うのですから。それでも、次第に大きくなる拍手、立って拍手をされる方々などを耳に、目に感じながら、メンバー達は、熱くなっていきました。
| Verba mea auribus percipe & Quoniam ad te clamabo | Schutz |
| Motette1"Singet dem Herrn ein neues Lied"BWV225 | J.S.Bach |
| いっしょに | 木下牧子 |
| 秋のまんなかで | 木下牧子 |
| 雨 | 木下牧子 |
| あいたくて | 木下牧子 |
| はじまり | 木下牧子 |
| Help | Lennon&McCartney(信長) |
| Nelly Bly | Foster(Halloran) |
| ふるさと | (信長) |
| Ave Maria | Busto |
| O know to end as to begin(The Hour-Glassより) | Fine |
| Water night | Whitacre |
| 春に | 木下牧子 |
| サッカーによせて | 木下牧子 |
| 二十億光年の孤独 | 木下牧子 |
| 卒業式 | 木下牧子 |
| ネロ 愛された小さな犬に | 木下牧子 |
| さびしいカシの木 | 木下牧子 |
| おんがく | 木下牧子 |
Help、ふるさと、Nelly Blyの3曲を歌った《EST》スコラーズ。新スコラーズのデビューステージでしたが、充実していました。《EST》の核となる責任は、時には重いものですが、あくまでも、アカペラコーラスの楽しさを客席に伝えきってくれたことが、嬉しかったです。どんどん成長する新スコラーズです。
アンコールの2曲目、『おんがく』は、私も感極まって、とてもスローなテンポで想いを込めて指揮をしました。どうしてもこのテンポでやりたかったのです。ふと、島根で見た盲学校の合唱部がまぶたに浮かび、涙が出そうでした。
コンサートは無事終りました。この時期に《EST》が、単独のコンサートをするのは異例です。しかも、レコーディングの翌週ということもあり、正直大変でした。しかし、新たな装いで出発した今年の《EST》が、これら一連の本番でグッと一つになれた事は大きかったです。その意味でも、津市役所と聴衆の皆様に感謝です。CD「バルセロナからの贈り物」も、ロビーで販売していましたが、たくさんの方が買っていただいたようです。
さて、この日のコンサートは、ある2名のメンバーにとって特別なものでした。当然我々にとっても。そのことは、この日の夜の、長い名前のパーティー(覚えていない・・・)のこととともに、次の機会にアップしたいと思っています。
2004.6.28
ミーティング、打ち上げ、掛け替えのない仲間達
3回のレコーディングと、サテライトセミナー、「郷土シリーズ」のコンサート、合唱祭、そして、宝塚でのジョイントコンサート・・・。今年の5〜7月は、例年になくすごいスケジュール。そんな中、昨日は、一連の行事の中間地点ということで、ミーティングで、メンバーみんなからの感想を述べ合いました。
「郷土シリーズ」に来られたお客様方の感想なども発表しあいました。やはり、聴衆あっての演奏。聴衆の感動・喜びは、私たちの感動・喜びです。聴衆のアドバイスは、私たちの次なる糧です。その意味では、レコーディングとは違うホッとした充実感に皆包まれていました。
今回も、「涙が出た」という感想が多かったです。「ネロが死んだー」と涙でくちゃくちゃの顔になっていた高校生を始め、いろんな方々が、我々の演奏に涙してくださったそうです。
緊張と弛緩のバランスが大切。ミーティングするこの日のみんなの緩んだ顔は、これまでスクラム組んで頑張ってきた証、そして満足感の現れだと思いました。とんちんかんな感想もあり、笑いの多い、楽しいミーティングでした。
ハードスケジュールは、練習日程にも表れています。週1回の日曜日のはずが、この3ヶ月(5〜7月)は、本番も合わせ20回もの顔合わせです。しかも、1日中の日も多いのです。
そこで、あるメンバーから『皆勤賞を出そう』という提案! 即決定。何人が獲得するでしょうか。楽しみです。18歳メンバーも有力候補です!! こういう知恵とアイデアで前向きに乗り越えていく仲間達。頼もしいです。一方で、生活とうまくバランスを図りながら音楽を大切に頑張っている中堅メンバーも、私にとっては大切です。やれる時はやりきり、忙しくなった時にはバランスを取りながら継続。一人一人の状況を大切にする仲間で在りたいものです。大きな家族のような・・・・。
さて、「郷土シリーズ」の打ち上げは、M君とKさんのお二人が主役でした。恋人同士のお二人。急にM君が山梨県に転勤。3月のことでした。ずーっと《EST》を続けるつもりだったKさんですが、5月に山梨に行くことを決心。現在は、お二人で山梨県に住んでいます。そのお二人が、「郷土シリーズに出ます!」と宣言され、6月19日のステージとなったのでした。《EST》を掛け替えのないものとして過ごしたお二人ですから、きっと忘れられない日になったのではないでしょうか。
打ち上げでは、お二人をまん中に囲み、みんなで大騒ぎでした。中でも細野さんの心憎い企画。何と、ウェディングケーキが登場したのです。まるで結婚式のようでした。同席されたピアニストの中村さん曰く、「打ち上げのみんなの在り方が非常に無駄がない!」
共に音楽する姿が掛け替えのない仲間創りに発展し、メンバーの幸せや旅立ちを心から祝福できる《EST》のみんな。素敵なみんなです。私自身、続けてきて良かったーっとしみじみ思ったのでした。
そんな打ち上げでは、新しいメンバーに「長く続けろよな。すばらしい所だから・・・」と笑顔で囁く寺田君に、私はこっそり注目していました。
《EST》のHPがどんどん進化しています。これは、黒川さんによるものですが、大変な労力です。それでも、「楽しい」と言って更新を続けてくれてる彼女は、音楽への姿勢もすごく貪欲です。まだ入団半年にも満たないにも拘らず、すでに中心的な存在になって来ています。
昨日の練習では、鈴木君の『ドイツ語ワンポイントレッスン第1回』が開かれました。彼は、大学の先生。講義調のレッスンにみんな大受け。それでいてバッハをグッと深みあるものにしていく元となるものでした。
宝塚でのジョイントコンサートが近づいて来ました。《EST》の音楽は、当たり前のことですが、《EST》のメンバー達によって創られるもの。そのメンバー達の生き生きとしたチームワークを宝とし、音楽に反映させていきたいと思います。
2004.7.3
「貴い時間が流れて行きました」〜木下牧子先生と共に最後のレコーディング
レコーディングの最終回は、7月3日、三重県文化会館大ホールで行われました。「地平線のかなたへ」に並ぶ愛すべき作品「光と風をつれて」を録音しました。
この日のみんなは元気でした。先々週にコンサートを無事終えたこと、レコーディングで何が起こるかの察しがつくようになったこと、今回で完成だという気持ちなどが、活力を生み出していたのだと思います。
9時集合。集合シーンは、三重テレビのカメラにしっかり収められました。調律が終るまでロビーでの練習。そして11時からはステージで。並び、マイクとの距離の取り方も、前々回の経験を踏まえられましたし、木下先生が見えるまでに、バランスを含めた録音準備もできました。
11時30分、昼食休憩。12時、木下先生登場。「もう近道も覚えたの」とすっかり三重県文化会館になじんでいただいたようです(笑)。
早速、木下先生へのテレビインタビュー。“ドキュメンタリー番組”制作に、局の方々も大変意欲的でした。
12時半、レコーディング本番です。木下先生からは、どの曲も「大変いいと思います」「よく研究されている」等のありがたいコメントを最初に頂きました。ただ、一貫して「音程とバランスが一番大事」と言われて来られただけに、この日もその部分での妥協されないコメントが続きました。ジョバンニの木村さんに対してもミキシングのバランスのことを一番気にされていました。
「音楽的な要求に対し、すごく敏感に反応してくれる」と木下先生が感心されたように、私たちの演奏は、レッスンに対し、柔軟でした。受け入れ、消化し、変化を楽しむように、貴い時間が流れていきました。
「光と風の中に」は、純粋さと大人っぽさの両立する素敵な作品です。《EST》の平均年齢を考えると、歌うにはちょうどいい作品だったような気がします。4曲目の“あいたくて”は、テイク1でOKが出ましたし、他の曲も、概ね少ない録音回数でOKでした。ひょっとすると、5月、6月、7月と、《EST》の音楽が少し成長したのかも知れません。
発声を中心にタイムリーなコメントを入れる加藤さん。彼女自身、歌い方に迷いがなくなったのが大きかったと思います。ムードメーカーでもある彼女の在り方が、《EST》の音楽を支えているからです。
ピアニストの中村さんも、本当にいいピアノを弾いて下さいました。木下先生曰く、「今日のピアノは、楽器として始め鳴りにくい音域があったはずなのに、たちまち弾きこなされている。センスだけでなく、賢い方ですね。」 お別れの時には「新しい私のピアノ作品をお送りします」とまでも!
16時55分、すべて終了。ここに、15曲の作品によるCDの原録音が出来上がったのでした。
先生の最後のお言葉を頂き、ステージで記念写真。貴重なアルバムの一こまがまた一つ出来ました。
恒例の練習後の食事会では、「まだ外が明るい!」とみんな嬉しそうでした。食事を終えて外に出ても、話は絶えず、いつまでもいつまでも動こうとはしないみんなでした。
レコーディングは無事終りました。木下先生、ピアノの中村さん、ジョバンニの木村さん、調律の町田さん、アシスト役の山本君、本当にありがとうございました。
P.S.ドキュメンタリー番組は、三重テレビにて、7月18日の18時30分から。電波の届く所にお住まいのみなさん、どうぞご覧下さいね。
2004.7.29
「Friendship Concert in Vega〜宝塚国際室内合唱コンクール出場団体による演奏会〜」が終りました
7団体によるジョイントコンサート。しかも、長野県から大阪府までと活動拠点の異なる団体が、“宝塚国際室内合唱コンクールに感謝”という同じ思いを大切に、チャリティーの気持ちで催したコンサートでした。この『同じ思い』の高さが、コンサートを成功に導いてくれました。2004年7月25日のことでした。
この、稀なるコンサートを振り返ってみたいと思います。
発端
このコンサートの発端となったのは、《EST》の加藤さんの一言でした。その時のことを、今回のプログラムに、下記のように彼女は書いています。
|
“今日という日” 定期演奏会やコンクールで演奏するたびに、「私はなぜ演奏しているのだろう」と最近感じていた。自己表現を超えたところに何が待っているのだろうと思っていた。そして、“演奏することで、何かに、誰かに貢献できないものか・・・”という思いが強くなっていった。 一昨年、このコンクールにイスラエルからモラン合唱団が出場した。手話を用いた演奏や踊りながらの演奏に、涙があふれて止まらなかった。そして、「演奏することが平和活動に繋がっています」というコメントにも。 「これだ!」と思った。日本で唯一の国際コンクールを開催していただいていることへの感謝の気持ちと、このコンクールの継続を訴える気持ちを持って、コンクールで芽生えたたくさんの合唱団との友情(Friendship)に満ちたコンサートを催したいと思ったのだ。この機会が、私たちに演奏することの意味を教えてくれているような気がした。 志を同じくするたくさんの合唱団と共に、本日、「なぜ演奏しているのだろう」の答えを出すことができる事を幸せに思っている。 |
私は早速、コンクールの先生方にお願いさせていただきました。昨年の夏の終わり頃だったと思います。「そんなことなら、大歓迎。」と、とても有難いお返事。そして、「一緒にやりましょう。」というグループもすぐに現れました。
あふみヴォーカルアンサンブル
アンサンブルVine
合唱団まい
アンサンブル アカデミー京都
クール・シェンヌ
なにわコラリアーズ
結束式は、12月でした。甲南女子大の近くのおしゃれなレストランだったと思います。ここで、コンサートの意義確認、係り分担など、様々なことを話し合いました。以後は、掲示板とメールでのやり取りで、この日を迎えたのです。
その間、会場との調整や、宝塚コンクールの実行委員会とのパイプ役、出演順や司会進行などを決めてくださったのは、洲脇先生を始めとする方々でした。結局、発起しておきながら、実際にはたくさんの方々の誠意に包まれてこの日を迎えたのでした。本当に感謝の気持ちです。
チケットは、5月には売り切れました。発売開始後、わずか1ヶ月半くらいで完売。これも嬉しかったですね。でも、そのために入場できなかった方々もたくさん見えるのではないかと思うと、申し訳ない気持ちです。当初、プログラムを代えて2日公演で行こうという案もあったのですが・・・。
前日のパーティーは、笑いあり、感動あり
前日は、お昼にステージリハーサル、夜には、出演者と先生方との、総勢140名でのパーティーを行いました。
ベガホールは、お客さんがいないと、ものすごく響くことがわかりました。特に、バッハのダブルコーラスは、響きすぎてうまく歌えません。立つ位置を変えたりしながら悪戦苦闘しました。当日リハへの課題。
その後、パーティーの時間まで、ソリオホールを借りて練習をしました。だんだんみんなの息遣いが合ってくるのが感じられました。
パーティーは、7時前にアピアホールというところで開始されました。アピアホールの館長さんとなられた大塚さん。彼は、これまで宝塚コンクールのパーティーの名物司会者として、来日した合唱団も大受けする楽しい方でした。今回は彼の取り計らいで、すごいご馳走です。
司会を担当の《EST》代表の北田君が。頑張っていましたね。テンポ良く進めてくれました。
さて、一番の収穫は、何と言っても、普段交流のない団員同士が、お酒の勢いも合ったにせよ。あちらこちらで話が弾み、仲良く出来たことでしょう。初めて顔合わせしたにも関わらず、各グループがすぐに心開いて交流している姿は、本当に嬉しかったです。実際、私はマイクを持って挨拶させられたのですが、たくさんの方々の前で、しかも、みなさんの笑顔の前で、言葉を失ってしまい、「そうなのです。この雰囲気です。」などと、訳のわからないことを言い出してしまって笑われたくらいです。短い時間であったにせよ、ヨーロッパで味わった国や民族を超えた交流の空間と良く似たものを作り出せたことが嬉しかったのです。
また、指揮者の方々が集まって話に花が咲きました。中でも、洲脇先生がおっしゃられたカナダでの思い出話が印象に残っています。ある女声合唱のイベントの後のパーティーで、400人くらいの女性が。「80歳以上の方!」と呼びかけられたところ200人くらいが手を上げられたそうな。結局、100歳以上が9人!! みんな背筋をしゃんとして歌われていたそうな。我々も必ず年を取るわけですが、年を取っても歌に誇りを感じられるような時代・国を作っていきたいですね。
最後の大塚さんのお話は感動ものでした。いつもは、自ら盛り上げ役を買って出てくださるのですが、今回は、マジでした。20年間の思い出話です。宝塚のコンクールを発展させるために、海外へ自前の費用で出向き、宣伝し、日本へ来る団体を見出してきた話。人生の大半をこのコンクールのために頑張った・・・という内容でした。そして、開催できなくなった今年、このような形でコンサートが催されることが本当に嬉しい! と、何度も何度も力説されていました。
私たちよりもずっと思い入れがあられるんですね。20年前の立ち上げの時の理想も語って頂きました。本当に有難かったです。
パーティーが終って、ホテルのロビーで私は《EST》のみんなに言いました。「今日のパーティーで、各グループが改めて一つになることが出来ました。その雰囲気は、明日、お客様方にも伝わるのではないでしょうか。明日は、ぜひいい演奏をしましょう。おやすみなさい。」
最後に、出来上がったプログラムを配り、お開き。プログラムを開けると、日下部先生のメッセージが目に飛び込んできました。
| “7月はやっぱりベガ・ホールで” 宝塚国際室内合唱コンクール委員会理事長・音楽評論家 日下部吉彦 室内合唱専門のコンクールとして、国内では最も長い歴史と伝統を誇る《宝塚国際室内合唱コンクール》は、昨年第20回を迎え、それを契機に以後、隔年開催ということになりました。そのため、今年のコンクールはないわけです。 これを聞いたコンクール常連の合唱団から、早速声が上がりました。《毎年、ベガ・ホールで逢えるのが、なによりの楽しみだったのに、残念。有志の合唱団に呼びかけて、自主コンサートをやろう》と、まっ先に手を上げたのはヴォーカルアンサンブル《EST》。そして、またたく間にきょうの7合唱団が勢ぞろいしました。 いずれもコンクールでは入賞の常連組。いまや全国、海外にまでその名が知られる合唱団ばかりです。コンクールでは、互いにライバル関係ですが、きょうは勝敗をはなれて、1年ぶりの再会を楽しむ《フレンドシップ・コンサート》ということです。 例年のコンクールではみられぬ、友情とハーモニーの交流が、ベガ・ホールいっぱいに響きわたることでしょう。とても楽しみです。 |
朝のステージリハーサル
本番は満席が予想されるため、出演者が客席で聴くことが出来ません。そこで、当日朝のステージリハーサルは、お互いに聴き合うことを目標としました。《EST》は最後でしたので、いくつかのグループのリハーサルを聴いてから、ステージに上がりました。
さて、演奏です。客席には数十人のお客さん。それだけで、前日とは全く違う、素晴らしい響きでした。「これだ!」と思い、嬉しくなって指揮をしました。歌っているみんなも幸せそうでした。『ベガの響き』に満たされて、とても充実した時間でした。バッハも、グイグイとテンションがあがっていきます。木下先生の作品は、日本語の響きを美しく出すことが出来ましたし、オルバンの軽快なリズムもまろやかに表出されていました。
「満員になれば、さらに響きは良くなるんですよ。」というアドバイスを頂き、ワクワクする気持ちで本番を待ちます。
いよいよ本番
かなり早くから、お客様方が並んでいます。そばを通ると、やちまた混声合唱団の方々。有難いことに、10人もの方々が三重県からはるばる来ていただいたようです。ジョバンニの木村さんのお姿も見えました。
開演です。洲脇先生の司会のもと、日下部先生、発起人の加藤あかねさんのコーナーを挟み、各グループの指揮者(あふみヴォーカルアンサンブルは代表)へのインタビューとともに、進められました。
プログラムは、以下の通りでした。
| ★あふみヴォーカルアンサンブル(21分55秒) 1.琵琶湖周航の歌(作詞:小口太郎、作曲:吉田千秋、編曲:石井茂子[あふみ])(3:00) 2.Sing Joyfully (作曲:Willam Byrd)(2:15) Mass for four voices(四声のミサ)より 3.Kyrie(2:00) 4.Gloria (作曲:Willam Byrd)(5:30) 5.Le chant des oyseaux(鳥の歌) (作曲:Clement Janequin)(5:20) 6.さくら (作詞:森山直太朗・御徒町凧、作曲:森山直太朗、編曲:石井茂子[あふみ])(3:50) ★アンサンブルアカデミー京都(15分38秒) 1.Mignonne, allons voir si la rose (恋人よバラを見に行こう) (作詞:Charles BORDES/作曲:Guillaume COSTELEY)(2:00) 2.Si Dieu vouloit que je feusse arrondele(燕になれたら)(作詞:不明/作曲:Clement JANEQUIN)(1:19) 『GLORIA PATRI』より(作曲:Urmas SISASK) 3.Surrexit Christus(今日、キリストはよみがえられた)(1:11) 4.Omnis una (全地よ、ともに喜びの声をあげよう)(3:12) 5.Benedicamus(我らは父をほめ讃える)(1:13) 6.Deo Gratias (神に感謝)(4:13) 7.Gloria tibi, Domine(主よ、汝に栄光あれ)(2:30) ★Ensemble Vine(18分55秒) 1.Sicut cervus(G.P.da.Palestrina)(2:30) 2.Saarella palaa(J.Sibelius)(1:30) 3.TUROT ESZIK A CIGANY (KODALY ZOLTAN)(2:00) 4.Ave maris stella(J.Busto)(3:50) 5.Mundi renovatio(G.orban)(1:45) 6.AVE MARIA(R.DUBRA)(4:20) 7.Put,vejini(ラトビア民謡.編曲:I.Raminsh)(3:00) ★合唱団まい(19分45秒) Thomas Luis de Victoria / Requiem(ビクトリア 作曲/6声のレクイエム より) 1.Introitus : Requiem aeternam(イントロイトゥス:主よ、永遠の安息を彼らに与え)(6:15) Claudio Monteverdi / Madrigale(モンテヴェルディ 作曲/マドリガーレ集より) 2.Ecco mormorar l'onde〔text by Torquato Tasso〕(波はささやき/タッソ 詩)(2:50) 3.Si ch'io vorrei morire〔text by Maurizio Moro〕(こうして死にたいものだ/モーロ 詩)(3:00) 4.Che se tu se'il cor mio〔text by Giovanni Battista Guarini〕(あなたは私の心の人ですから/グァリーニ 詩)(2:40) 5.Quel augellin che canta〔text by Giovanni Battista Guarini〕(とても甘美に歌うあの小鳥は/グァリーニ 詩)(2:40) 混声合唱とギターのための組曲 クレーの絵本 第1集 より 6.《あやつり人形劇場》1923 三善晃 作曲/谷川俊太郎 作詩(3:00) ★クール・シェンヌ(22分10秒) 1.Imant Raminsh作曲「Ave Verum Corpus」(5:40) 2.Johannes Brahms作曲「Vineta」(3つの歌op.42−2より)(3:00) 千原英喜作曲『混声合唱のためのどちりなきりしたん』より 3.T(不干斎ハビアン『妙貞問答』より)(4:50) 4.V(『どちりなきりしたん』より)(9:20) ★なにわコラリアーズ(19分00秒) 1.Canticum Sacrum Nipponicum「Dixit et Magnificat」(作曲:千原英喜)(14:00) 2.「Ave Maria−Angelus Domini−」(作曲:F.Biebl)(5:00) ★ヴォーカルアンサンブル《EST》(24分00秒) 1.おんがく(まど・みちお作詞 木下 牧子作曲)(3:00) 2.Motette1"Singet dem Herrn ein neues Lied"BMW225(Johann Sebastian Bach作曲)(12:00) 3.Lauda Sion(Gyorgy Orban作曲) 4.グリーンピースの歌(宮田 滋子作詞 木下 牧子作曲)(2:00) 5.さびしいカシの木(やなせ たかし作詞 木下 牧子作曲)(3:00) 6.ロマンチストの豚(やなせ たかし作詞 木下 牧子作曲)(2:00) 7.サッカーによせて(谷川 俊太郎作詞 木下 牧子作曲)(2:00) |
本番は、演奏者と聴衆の皆様とで創られた一期一会のすばらしい時空となりました。『おんがく』の美しさ、『さびしいカシの木』の抒情性、『ロマンティストの豚』のユーモア、『サッカーによせて』の軽快さなど、レコーディングした4曲は、歌いこんだ安定感がありました。
『Lauda Sion』は、アコール《EST》(女声合唱)で演奏しましたが、アクロバットな部分がすっきりと決まり、拍手も一番大きかったと思います。『グリーンピースの歌』もアコール《EST》で演奏。最後の決めの部分で会場が笑ってくださったのが嬉しかったです。
『Singet dem Herrn ein neues Lied』(バッハ)は、ダブルコーラスでドイツ語。《EST》の新レパートリーだけに時間も掛けて練習して来たのですが、本番も一生懸命の演奏でした。雨森先生は「喜びに溢れたSinget!」と褒めていただいたのですが、溢れすぎて、練習できちんと整理したバランスが、本番うまく出なかったような気がします。つまり、主となるフレーズに隠れるべき他のフレーズが、あふれ出るように顔を出し、どのフレーズも一生懸命で、ごちゃごちゃしてしまった感がぬぐいきれません。バッハの難しさだと思います。もっと主になるフレーズ以外は秘めて歌うようにしないと。特に、響きの多いベガホールでのバッハ演奏は。秋の『第12回コンサート』への課題です。
演奏後のすがすがしさ
コンサートが終りました。着替えてロビーに出て行くと、いろんな方々からお言葉を頂きました。《EST》は遠足のように(笑)いつも固まって行動します。ロビーでいつまでも固まって名残惜しく動こうとしたがらない私たちに、またいろんな方々がお言葉を掛けて下さいました。その度に全員で拍手です。
印象的だったのは、“あふみ”の長谷部さん。「団員が抜け、もう出場できないと思った。でもあきらめずに今日の演奏にこぎつけた。お客様の温かな拍手が本当にうれしかった。」と涙を流しながら。
合唱団にはそういうことが付き物。山あり谷ありの中で、大切な志を抱き続け、新メンバーとも心通わせて行かなければなりません。一生を掛けて、未来を作っていくのです。辞めたらそこまでなんですよね。それでも、どうしても辞めなければならないメンバーもいるわけで・・・・。長く続けている者にとって、誰もが経験する宿命だと思います。その思いで、私は大きな拍手を彼女にさせていただきました。
「宝塚で歌うのが初めての人、手を上げて。」と私が言うと、何と34人中17人が手を上げているではありませんか。この事実! 昨年は、スペインと重なったわけですが、2年前にベガのステージを経験しているメンバーと、今回が初めてだったメンバーとが、丁度半々だったのです!! 恐ろしい程の、入れ替わりの速さ。
でも嬉しかったのは、これで全員が経験者となったこと。やはり、《EST》にとって、宝塚は切っても切れない第2の故郷なのですから。
名残惜しくて名残惜しくて、ロビーの扉を出るまで随分時間が掛かりました。私たちがみんな出て行くまでずっとニコニコと見守ってくださっていた、洲脇先生を始めとする関係の皆様、本当にありがとうございました。夕方のちょっと涼しくなった外の空気をすって、すがすがしい気持ちで、ベガホールを後にしました。
ライブCDが発売されます
終って4日が立ちました。たくさんの感想やら、お礼のメールなどが行きかっているようです。特に、運営に携わってくださった方々には頭が下がります。
そして、実は、まだ終了していません。実行委員会への寄付の方法として『今回のライブCDを作り、販売し、その収益を委員会に寄付をする』という企画が残っているからです。
9月の中ごろ、ジョバンニレコードから発売される予定です。ぜひ、お買い上げいただければ幸いです。
関係の皆様、本当にお疲れ様でした。
2004.8.31
レストランでの初のライブコンサート〜《EST》スコラーズ・アフタヌーン・ミニライブ
2004年8月28日、《EST》スコラーズ初の単独コンサートが、三重県松阪市内のレストラン“RELISH NOTE”で催されました。
11名の、ヴォーカルアンサンブル《EST》の核となるメンバーで構成された《EST》スコラーズは、毎回、パート練習をリードし、全体練習の表現の中心となり、他のメンバーの憧れの存在です。「後に続け!」とばかりに。
そんな《EST》スコラーズが、今年は単独のコンサートを催しました。題して、《EST》スコラーズ・アフタヌーン・ミニライブ・in RELISH NOTE。
いくら中心メンバーとはいえ、11人で有料のコンサートをするには覚悟がいります。全15曲の練習は、平常練習の後、夜遅くまで行いました。それでも足りないということで、お盆返上で、1日練習を。
しかし、そこは、《EST》スコラーズ。お盆の1日練習は、伊勢に居を構えるリーダーの加藤さん宅で行いましたが、いい音楽を目指して、心一つに笑いありの楽しい時間を過ごせました。終ると、みんなで『おかげ横丁』へ。名物赤福氷をほおばり、伊勢を満喫しました。愛知県から何時間も掛けて来た2人のメンバー(福本君、寺田君)も、「豊かな1日だった」と思ってくれたのではないでしょうか。


8/14 アフタヌーン・コンサートの練習後、おかげ横丁にて
この2人に代表されますが、《EST》スコラーズは、遠距離であったり、生活が忙しかったりするメンバーが多い中、本当に、時間を工面して集まって音楽することに情熱を燃やしてくれます。お互いのそういった状況のなかでの練習に生み出す時間を尊重しあう意志が、《EST》スコラーズの音楽クオリティーを支えているのではないかと思います。
さて、本番の日。加藤さん、藤田さんは9時に会場入り。ピアノデュエットの練習です。そして、10時に全員揃ってのリハーサル開始。コンサートホールとは違う、響きの全くない、しかも、お客さん用の椅子が目と鼻の先に並んでいる中で、本番を想定してのリハーサルをしました。
私たちの練習を見守りながら、マネージメントをこなしてくれた、団員の中村さん、森本さんのことも触れておきたいです。チケット管理とお店との連携を一手に引き受けてくれた中村さんは、たとえば下のような文章で始まるメッセージをHPの団員掲示板に残しています。
| 皆様、コンクールお疲れ様でした。 さて、私ひろべーは、28日が迫りくるにつれ少々緊張しています。自分が歌うわけでないのにね。 おかげさまで、チケットも残り数枚になりました。ご協力くださった皆様ありがとうございました。 さて、この場を借りて、28日のお願い事項を挙げておきますので・・・・・・・・・・・・・ |
また、森本さんは、ここ何年間のコンサートのチラシ、ポスター、プログラムのデザインすべてを担当してくれた、《EST》になくてはならない人なのですが、今回のチラシとプログラムは、すべて彼女の手作りでした。リハーサルを聴きながら、せっせとハサミを走らせています。見ると、おしゃれなかわいい形のプログラムが次から次へと作られているではありませんか。
こういうメンバーにも恵まれての今回のライブ。いよいよ本番です。満員御礼のレストランに入場するや否やの大きな拍手。お客さんを掻き分けるようにしながら定位置に。こんな状況で始めるのは初めてでしたが、もうワクワクしてしょうがなかったです。お客さんと間近に音楽で触れ合えるのだ!と。
この状況に「緊張して固くなった!」と漏らすメンバーもいました。しかし、そのことも含め、本当にいい経験でした。
曲目: ●アカペラの歴史
If Ye Love Me(タリス)
動物達のフーガ(バンキエリ)
Loch Lomond(David Overton)
●日本の名曲をアカペラで
赤とんぼ(信長貴富)
村の鍛冶屋(信長貴富)
ふるさと(信長貴富)
みかんの花咲く丘(信長貴富)
●ピアノの調べ
ピアノ連弾のための『小組曲』より“小船にて”(Debussy)
●アカペラ・NOW!
どろぼうどろぼう(Alfven)
Put vejini(Raminsh)
サッカーによせて(木下)
北極星の子守唄(新実)
ロマンティストの豚(木下)
Help(信長貴富)
Nelly Bly(John Halloran)
●アンコール
別れの歌(信長貴富)
動物達のフーガ(バンキエリ)
以上の曲目を私の話を挟んで一気に演奏していくコンサートでした。始めはやや緊張した雰囲気でしたが、だんだんとお客さんの和んでいく雰囲気が感じられました。本当に音楽というのは、歌い手と聴き手が作っていくものですね。それが改めて強く感じられたのは、やはり、狭い会場でのライブという形だったからでしょう。
私の話もだんだん慣れてきて、私のお話にもお客様が敏感に反応して頂き、時々後ろのメンバーからも合の手が入ったりして・・・。また、ソロを担当した、寺田君、福本君(Loch Lomond)、塩谷さん(Put vejini)、細野さん(別れの歌)、ピアノで花を添えてくれた、加藤さん、藤田さん(“小船にて”)、アンコールでの酔っ払いのパフォーマンスが大受けした、常住君、土井君などにも拍手を送りたいと思います。アンコールは、お客さんの中に散らばって歌ったのですが、パフォーマンスに大笑いしてくださったり、歌っている最中にポンポンと背中をたたいて頂いたり、もう、すごい一体感でした。
さらに楽しかったのは、アンコールが終ったあとでした。帰らないお客さんと私たちが、その場でパーティーのような団欒の時を過ごせたからです。私たちとお客様との、そしてお客様同士の交流も出来たのです。演奏の感想や、「あと5曲は歌って欲しかったー」「またやってー」などの要望。お互いがテンション高く、とても盛り上がった時間でした。これも音楽がくれた私たちへの贅沢な贈り物でした。
今も、私たちの演奏に反応してくれたお客様の顔が頭に浮かびます。コンサートホールの響きに包まれた美しさというのではなく、生の声で一生懸命表現している、いわば“普段着の姿”を見て頂いたような時間でした。そのラフな感覚がライブの良さですね。
余勢を買って、この日は、メンバー達で焼肉食べ放題に出かけちゃいました。最後まで無邪気に過ごせた私たちでした。関係の皆様、本当にありがとうございました。
P.S.高校生から、下記のようなメールが来ました。思わずこちらまで楽しくなってしまいましたので、ここに掲げておきましょう。
|
28日のESTすっごくよかったです。(それが言いたくて言いたくて・・・
かなり幸せな一時間でした。(もっと聞きたかったです
いや、本当にどっかに吸い込まれちゃいそうな感じになってしまうような・・・
音が一つになっていて・・・
思わず笑みがこぼれてしまう演奏会でした。楽しかったです。
ウオー!本当に。もぅ。すっごーくよかったんですッてば!(>∀<)キャー
終わってからもキャーキャーキーキー興奮とまんなかったんですよッッ!
私は歌ってる時に、指揮をそのまま歌うように心がけていた感じなのですが
ESTの皆さんは歌を自分で歌ってるってか、そんな感じで
なんて言うかわかんないんですが、色々勉強になって、
本当に行ってよかったですよー(;△;)
あッ!私の席からは右端の人が一番よく見えていたのですが、
表情が歌と一身になっていてすごいなぁと思いました。
これって、一目ぼれでしょうか?(*>v<*)
|
2004.10.25
『地平線の彼方へ』第12回コンサートは木下牧子先生とともに
2004年10月24日、ヴォーカルアンサンブル《EST》第12回コンサート〜地平線の彼方へ が、三重県文化会館大ホールで催され、820数名というたくさんのお客様と、至福の時間を過ごすことが出来ました。
作曲家、木下牧子先生をお迎えしてのコンサート。先生へのインタビューや、ビデオ上映、世界合唱シンポジウムへの募金、CD予約に販売・・・などなど、音楽以外にもバラエティーに富んだ2時間10分でした。
木下先生からは、インタビューでとても有難いお言葉を頂き、恐縮しています。「大勢の前でしゃべると止まんなくなるのでヨロシクね」と、こちらの緊張をさっと取ってくださり、本当に気さくにおしゃべりさせていただきました。打ち上げにも最後まで出席してくださり、津で一泊されてお帰り頂きました。本当に感謝しています。
会場に来てくださった方々も、演奏する側が襟を正されるような集中力でした。物音一つ立たず、いい緊張感に満ちて演奏することが出来たからです。拍手のタイミングや大きさも、最後のカーテンコール「ブラボー」も、最高でした。
さて、演奏の方は、バッハやメンデルスゾーンの二重合唱が満足な出来であったことが大きかったです。バッハは、6月、7月と、課題を残す演奏だったのですが、今回は、よく整理でき、抑制の聴いたバランスのいい演奏でした。バッハは難しかったですが、とてもやりがいがありました。木下先生にも「二重合唱が聴けるというのは、作曲家にとってとてもうれしい」とおっしゃっていただきました。
女声合唱でオルバン、男声合唱でフェイリス、《EST》スコラーズでラミンシュの佳品を味わい深く演奏しました。男声合唱は、まだまだ過渡期という感ありですが、楽しく演奏できました。
メンデルスゾーンの歌曲、千原先生の現代曲もプログラムに入れましたが、これはまだまだ良くなりそうです。コンクールや、世界合唱シンポジウムで再度演奏したいと思っています。千原先生の『阿知女作法』は、ここに来て大変面白くなってきています。また、改めて、この作品の魅力を記していきたいです。
コンサート前半は、オープニングに木下先生の『おんがく』を演奏し、上記の作品を並べました。『おんがく』は、パートをミックスしたバラバラの並びで始めたのですが、一声目から、いいサウンド。《EST》のメンバー達の「歌いきるぞっ」という美しい意志を感じましたね。幸せな2時間の始まりでした。
後半の、木下作品のみのプログラムは、楽しい時間でした。「時々、客席にみえる木下先生を見て、エネルギーをもらって演奏を続けようね。」と、リハーサルも盛り上がっていたのですが、中村文保さんの美しく安定したピアノの元、リラックスしながらたっぷりと情感を出すことが出来ました。
今回は、客席に、中高生も多く見受けられました。木下先生もインタビューでそのことに触れられ、「大人の合唱団が、学生を中心に歌われているこれらの曲を、組曲として演奏会で歌われるのは、滅多とないこと。ここにみえる若い方々にとっても、いいコンサートだと思います。」というようなことを言って頂きました。
アンコールも、もちろん木下作品。まずは、女声合唱で『グリーンピースのうた』。会場からは、歌い終わった時に笑いが起こりました。7月の宝塚での演奏と全く同じ反応です。2曲目は『さびしいカシの木』。ひとりずつお客さんの中へ入って行き、2番3番は、客席で演奏しました。私は、客席に向かって指揮です。ホール全体が鳴り、来られた方々との一体感溢れる時空でした。
コンサートが終わって、打ち上げの時、たくさんのメンバーに感動の涙が溢れていたのがとても印象に残っています。また、長崎や大阪から来てくださった方々が、打ち上げにも出席され、我々と共に楽しんでいただけたのも良かったなあと思います。
お客さんの期待の大きさが、私たちを押し上げてくれています。その期待に感謝を込め、期待以上の演奏をしようという気持ちが、今回のコンサートに溢れていたと思います。
《EST》のみんな。本当にいい一日でしたね。今頃、心地良い疲れに満たされているのではないでしょうか。
P.S. 新潟では、大変な災難に見まわれた日でした。我々と時間軸を同じくしている、今を生きている人達。生きることを考えさせられる日でした。音楽することは、今をどう生きるかに繋がること。深く思考することで深い表現に向かえるとしたら、我々のこの日の演奏は、また一つ、深いところへ成長できたような気がしています。
P.S.その2 世界合唱シンポジウムへの募金が、この日、77,998円だったということです。大きな感謝です。募金してくださった方々、本当にありがとうございました。
2004.11.3
『阿知女作法〜あちめのわざ〜』…新しい響きを世界へ
今、《EST》が取り組んでいる千原英喜先生(作曲)の『阿知女作法〜あちめのわざ〜』。この作品の魅力と、私たちのこの作品に寄せる想いを記してみたいと思います。
作品について
この作品は、古代の鎮魂秘抄「阿知女作法」、神道に用いられる「祓詞・大祓詞(七世紀頃成立)、平安朝時代の「伊勢物語」「源氏物語」などから鎮魂祭を詠んだ和歌をテキストにしています。また、曲中の「シーッ!」「おおおーー」の声は「警ヒツ」という清めの声をイメージしています。
阿知女とは天照大神(あまてらすおおみかみ)のことで、「祓詞」の起源は、イザナギノミコトが黄泉の国の穢れを落とすために禊(みそぎ)を行ったという神話に由来しています。古神道の鎮魂とは、“死者の遊離・浮遊する魂を生者の肉体に招き、生者の活力の蘇生と強化を願うもの”なのです。
ただ、作曲者の千原先生は、歴史的・宗教的観点にとらわれない演奏を望んでおられます。楽譜の始めに書かれた作曲者自身のメッセージの最後の部分を紹介します。
|
音符は五線譜に並んでいるものの、ほとんどの部分で音程はなく、the
highest register と書かれた最上線からthe lowest register と書かれた最下線までの5本の線に、有声音、無声音、有声と無声の間の音を表す音符(もどきの記号)、吸気・呼気を表す上下の矢印、イレギュラーカーブのグリッサンドを表出するための記号などが書かれています。また、全体は、2群の混声16部合唱になっています。
声とは何だろう、日本的なものとは何だろう
この本質を考えていくことが、「阿知女作法」を練習していく我々に突きつけられた課題でした。ほとんどの部分に音程が存在しないこの作品、声を出す行為自体に責任を負わされます。一つ一つのフレーズ、一つ一つの記号に意味づけをし、その総体が創る時空をエネルギーのあるものにして行かねばなりません。その結果としての演奏が、聴衆の心の深い部分に届き、そこで鳴り響くこと。
しかし、その響きは、西洋音楽の範疇にはない響きです。声=西洋式の良い発声、響き=西洋の整ったハーモニー・・・・という、常識が通用しない、新しい響きです。
“いい音楽=西洋”という構図はもう崩れつつありますが、この作品ほど徹底したものは稀だと思います。譜読みを始めた2月の時点では、絡まった糸をどうやってほぐしていくのか、途方にくれていたことを思い出します。
どうやってほぐすか。それは、やはり、作品の背景、一つ一つの音の背景を勉強していくことでした。そのことで、私たちは、「声とは?」「日本的とは?」という問いかけに少しずつ迫っていくことが出来たのです。とりわけ、「警ひつ」という“潔めの声”についての研究は、実りあるものでした。
今日に息づく警ひつ
警ひつは現在では、神道行事の中でしか聴かれません。しかし、本来は一般にも用いられたものでした。警ひつは、邪魔になるものを払い除く声で、貴人が道を行く時の先祓いの声、或いは御神体が渡御するときの、あたりを祓い潔めるための声です。無声音の「シーッ」と有声音の「おおおーー」とがあります。
今を生きる私たちは、言葉によって饒舌になっていると言われます。声そのものの恐ろしさや、言葉に頼らない声の生き生きとした迫力を見失っていると。しかし、警ひつそのものは身近な生活の中に登場します。例えば、周りを静かにさせるための「シーッ」や、犬を追い払う時の「シッ」など、民族の遠い記憶の記念品のような気がします。
また一息に発声される「おおおーー」の中に、息の強弱と音の高さ・勢い・量などとの関係が現れ、うたの原点をみるようです。つまり、息が強ければ音は高く強く大きく、弱ければその逆。始め上昇し、やがて下降するカーブを描いて発声されるのも、息を声に変換した形です。
声は息から起こり、息は気から起こります。気は東洋では万物生成の原理です。宇宙では大気・空気・それらの具象が気象です。ミクロコスモスとしての身体では、勇気・元気・精気。古来の東洋では、芸術論においても気・韻・生・動といって気を第一に掲げ、最高のエレメントとしてきました。息は人間の精気の表出、声は息の音による表現なのです。
現在、警ひつを音楽の演奏として聴くことが出来る唯一の機会として、春日大社の「若宮祭」があげられます。毎年12月16日の午前0時、境内の燈火は全て消され、真っ暗な闇となります。若宮から御旅所までの1キロの参道が演奏される場です。御神体の渡御に伴って演奏されるのです。箒の化け物のような大松明に、二人の白丁が肩に縄をかけて曳きずって行き、これの従って、100人にも及ぶ神官と数十人の楽人によって、歩きながら演奏されるのです。
この華麗な行列ですが、歩き方は、“ぞろぞろ”でした。決して歩調を揃えて歩くことはなかったのです。歩きながら警ひつの声を発しているのです。つまり、歩く動作を音に変換したものが、渡御の警ひつなのです。したがって、その声は、各人の息の状態に応じて発生するため、全体でカノン風に聴こえるのです。
伝統音楽の多くのうたは、静止して歌われるため、ユニゾンです。が、これが移動しだすと、カノン風に変わります。渡御の警ひつは、大勢の声の高さやフレーズが揃わない音の集合体です。唐から雅楽や声明が伝来する以前の日本の原初的な声が、ここに存在すると考えられます。
「八百万の神が降りてきて響きあう」
研究のヒントとなったものの一つに、千原先生自身の対談でのお言葉があります。楽譜に書かれた波のような線があるのですが、この箇所について、
「これは合唱団と指揮者が自分で作っていく音楽です。スコア的には僕が書いた中で一番美しいね。これは何かというと、われわれがよく車窓から見る山々。松原先生は生駒山系とおっしゃったけど、山の稜線みたいなものを思い描いてね、そこに八百万の神が降りてくるんですよ。そして響きあう。そういう思いをこめて書いた線です。不確定だからどこまで上下してもいいんだけど。」
また、曲の最後に出てくる大祓詞は、大変速いテンポで2群の掛け合いで演奏されるのですが、これについて千原先生は、
「前に、柴田さんの“無限こう野”を聴いたとき、あの曲の最後は叫びで、そのエネルギーにカルチャーショックを受けた。そういうものを現代に問いかけてみたいと思った。だから、最後の15ページは全部棒読みです。これでいいんだと確信を持ってやった。皆さんで作ってください、と。」
また、
「これは能の謡みたいに、自身を持って出ちゃえばいい。あとは鳴るがまま、指揮者と合唱団の精神性。ぼくが音楽でいちばん大事だな、好きだな、と思うのはある種の精神性です。歌い手と指揮者が自分自身に“日本的なるものは何か”って問いかけて作ってほしいわけ。だからいろんなアプローチの仕方があるし、鳴り方がある。」
と、締めくくられた対談は、私たち演奏するものを奮い立たせる勇気を与えてくれます。
研究から咀嚼へ、そして演奏へ
《EST》には、皇學館大學の学生(塩谷さん)がいます。三重県伊勢市にあるこの大学は、伊勢神宮との深い関わりの中、神道教育にも力を注いでいる大学です。
その塩谷さんが、ある教授にお願いして大祓詞を唱える儀式のビデオを借りてきました。合宿で見たそのビデオは、発する声のトーンや、詞を受ける立場の人達の在りかた、歩き方や座り方の作法など、とても見ごたえのあるものでした。
また、曲中に出てくる4つの短歌についての解説なども、金田君を始めとする新しいメンバー達によってその意味合いを研究してくれました。“魂結び”についての知識なくしてはこれらの短歌は読みきれないのですが、よく調べてくれたと思います。
いろいろな方面からの研究によって、「阿知女作法」の部分部分が明らかになりました。それらを歌い手一人一人が咀嚼し、演奏につなげていきます。あ、変わった! 夏の辺りから、練習で鳴る音はドンドン変わっていきました。
ソリスト達の素晴らしい表現
後半に出てくる2種類の四重唱から始まる部分は、圧巻です。
まず、第2コーラスの4人(黒川さん、常住さん、福本君、寺田君)が、人魂のごとく、音を重ねていきます。『シャーマンの声のごとく、任意の母音や奇声で』と記されている作曲者の注釈をもとに、自由に音を発していくのですが、声だけでは表現しきれないということで、舞台を移動しながら、浮遊する魂のごとく、体中で表現しているのです。すばらしい表現だと思います。
そして、第1コーラスからは、山羽さん、土井君、加藤さん、松井君、中山君が、魂をテーマとした3つの短歌を強烈に表現します。やはり、動き、体中で。
このメンバー達の表現を聴かれたら、熱くこみ上げるものを感じていただけるのではないかと確信します。さらに、4つ目の短歌が残ったメンバー全員でカノンのように会場一杯に響きを重ね、ソリストとコーラスの入り乱れる中、響きは頂点に達していくのです。
私は、この部分を指揮するにつけ、「声とは」「日本的なものとは」の答えをはっきりと示している気がします。
うれしい聴衆の反応
「阿知女作法」を演奏したのは、これまでに3回。三重県合唱コンクール(8月)、中部合唱コンクール(9月)、そして、《EST》コンサート(10月)でした。
8月の演奏は、聴衆の戸惑いの拍手で終りました。しかし、審査員の方々からは、励ましとアドバイス、そして「素晴らしい」とのご感想も頂きました。この時は、まだまだ未消化で、フレーズ一つ一つの歌いっぷりも幼かったと思います。そして聴衆からは「怖い!」という感想も。「怖い歌じゃないのにー」と苦笑したものでした。
9月の演奏は、衣装に工夫を凝らしたり、ソリストの動きが入ったりしながら、視覚的にも一歩進んだ演奏でした。審査員の吉村先生からは、後日の関西合唱コンクールで同席したとき、素晴らしかったとお声掛け頂きました。「ああいった新しいものが出てきてコンクールに刺激を与えられたらとてもいい」と次への期待も込められてのお言葉でした。
10月のコンサートでは、前半の最後で演奏しましたが、演奏し終えてステージから最後の1人が退場するまで鳴り止まない熱い拍手を頂きました。さらに、ロビーコールを終え、帰られるお客様方を見送っている時、小学生の男の子が近寄ってきて、「これが一番おもしろかった!」とプログラムを開いて。見ると阿知女のページでした。また、俳句を趣味にしているというご老人からも、阿知女がよかったと。
「怖い」から「おもしろい」へ。この変化はとても勇気付けられるものでした。“現代音楽でありながらも、市民権を得られるような演奏をしたい”と願う私たちにとって、このコンサートは大きかったです。
世界合唱シンポジウムに向けて
「阿知女作法」を演奏する機会は、後3回あります。今月の全日本合唱コンクール全国大会(11月)、滋賀で行われる合唱ゴールデンコンサートでの招待演奏(1月)、最後は、世界合唱シンポジウム(7月)です。
これらの機会を通じて、「声とは?」「日本的なるものとは?」の答えを出していきたいと思っています。そして、「阿知女作法」が、広く世界での市民権を得られるような作品(それは、民族固有のものであり、しかも普遍的なるもの)であることを、世界合唱シンポジウムで示せればいいなあと思います。
まずは、全国大会。参加する32名のメンバーと共に、熱い想いを会場一杯にご披露できればこんな幸せなことはございません。
2004.11.15
小学校の文化祭での楽しい交流〜七保小学校文化祭招待演奏
2004年11月13日、《EST》スコラーズは、三重県度会郡大宮町の七保小学校のお招きを受け、小学生・先生方・保護者・老人会の方々と、楽しい時間を持つことが出来ました。
七保小学校は、三重県松阪市から、国道42号線を車で40分くらい南下した、山間の田園地帯に位置します。のどかなところです。《EST》スコラーズの11名は、午前10時に現地集合しました。メンバーの中には、愛知県瀬戸市や額田郡から眠い目をこすりながら駆けつけた2人を含みます。
着くと、大勢の地域の方々が、文化祭を楽しんで見えました。地域と一体になった小学校。特に、たくさんのご老人の方々ののんびりした笑顔が印象的でした。
リハーサル後、文化祭での搗きたてのお餅などを頂き、いざ本番です。
教科書ソングを2曲ほど演奏し、3曲目は、トトロメドレーです。《EST》スコラーズの動きのある演奏に、会場はみるみる和んでいきました。常住君のトトロ役は、堂に入っていましたね(笑)。細かい表情をDVDを買って研究を重ねたという涙ぐましい(あきれる)努力は、見事に身を結びました。こうもり傘を持ち込んでの演技です。これは、ぜひ、『ぽかぽかコンサート』で再演したいです。
常さんのトトロ役の時の表情 Please again!
「あるこう、あるこうー」と、全員が歌いながら小学生の中に入っていきます。みんな役者です。細かい演技を入れ、子供達の心をしっかり掴んでくれました。
続いて、大人の方々向けに、「ノスタルジア」から3曲。子供達は“赤とんぼ”と“ふるさと”は、かろうじて知っていますが“村の鍛冶屋”は、教科書にも載っていないのです。しかし、「知っている人?!」と言うと、かなりたくさんの手が挙がりました。きっとおじいちゃんおばあちゃんに教えてもらってるのではないでしょうか。後ろに座られている老人会の方々の穏やかな笑顔から、そんなことを感じました。私たちの演奏で、歌を通しての3世代の絆がより深まっていかれんことを願います。
さて、一番受けたのは、バンキエリの“動物達のフーガ”でした。「どんな動物が出てきましたか?」とマイクを向けると「いぬ!」「ねこ!」。いろんな動物が出る中「小鳥!」「ふくろう!」までは当たり、当たるたびに我々も拍手です。ところがどうしても最後の一つが当たりません。そこで、「ではベースにご注目!」と言い、ベースパートだけ歌ってもらいました。もちろん迫真の演技つきで。
突然、「あ、酔っ払いのジジイ!!」。大きな声にみんな爆笑。一応当たりです。賞品代わりに、アンコール演奏をしました。メンバーも乗りのりで、子供達の中に入って、動物の演技をしてくれました。私が「すごい!」と感動した松井君の犬、常住夫人の猫には「はよ飼い主のところに帰んな」という女の子の声。会場は、かわいい動物園に様変わりでした。
校歌を一緒に歌ったり、輪唱をしたり、そして最後は、十八番の“Help”“Nelly
Bly”。かっこよく決めました。楽しかったです。
歌う原点の楽しさを私たちも共有でき、とても豊かな気持ちになれました。いつもこの気持ちから出発しよう。いつもこの感動に戻れるような心を持っていこう。校庭を後にする《EST》スコラーズの爽やかな笑顔は、そんな決心に満ちているようでした。