Q&A





 夫が多額の借金を抱えたまま他界しましたので、すぐに私は相続放棄の手続をとりました。夫の生命保険は相続人を受取人とするとされていましたので、やはり相続放棄をした以上これを受け取ることはできないでしょうか。また、夫の職場での死亡退職金があるとのことですが、これはどうなるでしょうか。

 相続人が家庭裁判所へ相続放棄の申出をすると、その人は初めから相続人とならなかったとみなされます(民法939条)。しかしながら、保険金受取人を相続人と指定した生命保険契約において、被保険者が死亡したことによる保険金請求権は、判例により、被保険者の相続財産ではなく相続人たるべき者の固有の財産であるとされていますので、相続放棄をしていても生命保険金を受領することはできます。また死亡退職金についても、その受給権者が定まっていれば(多くの場合法律、労働協約または就業規則により受給権者の範囲と順序が定められています)、その指定受給権者は退職金を自己固有の権利として受領することができます。ただし税法上は相続放棄者が生命保険金や退職金を取得した場合には、受遺者(遺贈を受けた者)とみなされますので、受領した額によっては相続税を課されることになります。
【UN・6】



 父が死に、母と私と妹の3人で父の遺産を分けることになりました。遠方に嫁いでいる妹は、形見分け程度もらえれば他には何も要らない。分割協議書を送ってもらえればハンを押すと言ってくれました。
 1人の取得分が形見分け程度でもいいんでしょうか?
 また、このような方法で協議したことになるんでしょうか?

 分割の内容ですが、協議によって分割をする場合には、協議の内容に制限はなく、当事者の意思によって自由に定めることができます。民法に定める法定相続分と一致しない分割協議も各相続人の自由意思に基づく合意による限り有効です。(ただ、分割の内容が自由に定められるといっても相続財産中に債務がある場合は各相続人は、相続分に応じた債務の負担を免れることはできません。)
 妹さんは、形見分け程度の取得分で良いと言っているそうですが、それが本人の自由な意思に基づくものであれば、そのような遺産分割協議も有効です。
 遺産分割協議書には、相続人全員が署名捺印しなければいけませんが相続人全員が一同に会して協議して書面を作成することは必要でなく、予め相続人の1人が分割案を作り、遠隔地にいる他の相続人に送り、署名・捺印のうえ返送してもらうなどの方法によっても可能です。
 妹さんが遠方におり、分割協議書を送ってもらえればハンを押すといっているようですので、あなたがお母さんと相談して分割案を作り妹さんに送り、署名・捺印のうえ返送してもらえれば協議による分割として有効です。
【UN・3】


 私は、知人に事業資金として300万円を貸す際、担保として彼の自宅の土地建物の権利書を預かりました。しかしながら最近彼は体調を崩し、さらに不況のあおりで事業が思わしくないようです。このままでいざという時、貸したお金を回収できるでしょうか?

 債務を保証してもらうために不動産を担保にとることはよくあります。この場合抵当権設定契約が一般的です。当事者間の契約の成立だけを考えれば、この契約には契約書は勿論登記も必要ないのですが、いざ他の債権者等が現れてしまった時は話は別です。第三者に所有権移転登記がなされたり、差押や他の抵当権が先に登記されてしまった場合、あるいは債務者が破産したり相続人無くして死亡した場合(債務者の相続人全員が相続放棄した場合を含む)、登記が未了であるとそれら登記をなした第三者や破産管財人、相続財産管理人に自分の抵当権あるいは抵当権設定登記請求権を主張できなくなります。結局いざという時、配当手続において他の無担保債権者と同等の扱いを受けることになります。
 
 貴方の場合、抵当権設定契約が成立しているとしてもそれを登記しておかなければ不測の事態が生じる恐れがあります。
 ただし、債務者が財産的危機状態になってからの契約もしくは登記は、他の債権者を害する行為として民法並びに破産法上で取消や否認の対象とされることがありますのでご注意下さい。
【UN・12】


 「自分が、死んだら住んでいる屋敷をやる。」というメモ書きを残して祖父が先日亡くなりました。祖父の遺志通り私名義に登記はできるでしょうか。

 人が亡くなるときに自分の意思を実現する方法の一つとして「遺言」があります。しかしながら遺言がその効力を発揮するためには、民法が定めた厳格な要件を満たした書面を作成しなければなりません。
 もう一つの方法として「死因贈与」という契約があります。死因贈与には原則として遺贈の規定が準用されますが、大きな違いは、遺言のように書面を要しないと言うことです。
 貴方の場合、祖父の相続人全員が祖父との死因贈与契約の存在を認め登記に協力してくれるのであれば所有権移転登記が可能だと思われます。それが無理な場合は、相続人を相手に裁判でそれを実現するしかないでしょう。その際、メモ書きは証拠の一つになるはずです。
 なお、相続人全員との共同で「遺贈」を原因として所有権移転登記ができたとしてもそのメモ書きが遺言の要件を備えていなければ、その登記は誤っているといわざるを得ません。(判例上、少なくとも死因贈与として有効であれば登記原因の齟齬が即登記の無効とまでは言えないでしょうが。)
【UN・12】


 私は実子一人を連れて再婚しました。夫には子がいません。もし夫が亡くなった場合、つきあいのない夫の兄弟の判子が無いと住んでいる自分の家さえ名義が変えられないと聞きましたが本当でしょうか?そのような面倒なことを回避する方法はないでしょうか?

 被相続人(亡くなった人)に子がない場合、第2順位の相続人として直系尊属(父母・祖父母など)が相続人となり、それらもいない場合は、兄弟姉妹が配偶者とともに相続人となります。この場合の法定相続分は配偶者4分の3,兄弟姉妹4分の1となります。これと異なった相続を協議のうえ行った場合、名義変更の登記を申請するに際しては相続人全員が実印をつき、印鑑証明書を添付した書類が必要になります。

 貴方の場合、現状のままで行くとご心配通りご主人の兄弟姉妹の印鑑がないとお住まいの家ですら名義変更できない恐れがあります。これを回避する手段としては、「遺言」が有効です。相続財産をすべて貴方に相続させる遺言であっても兄弟姉妹には遺留分がありませんので安心です。また貴方の実子に譲る内容の遺言(遺贈という。)でも良いでしょう。もう一つ、貴方の子がご主人と養子縁組する方法が考えられます。これによって兄弟姉妹は相続人でなくなります。この方法は、身分法上のことなので当事者の意思をより尊重し慎重であらねばなりません。さらには税法上の配偶者に対する優遇措置を利用してお住まいの家などは生前贈与を受けてしまうことも考えられます。
【UN・12】


 抵当権のついた不動産の売買契約をしてしまいました。近日中に手附を控除した残金を支払うことになっていますが大丈夫でしょうか?

 通常、不動産の売買契約書には、売主は残金を受け取るまでに担保などの抹消をし、きれいな不動産を買主に引き渡すように記されていると思われます。ところが売主も事前に担保を抹消できるほど資力に余裕がないのが一般的です。そこで売主は、買主から受け取る残金の一部を担保抹消のための返済金に充当する必要がでてきます。とは言ってももちろん買主は完全な所有権の移転が保証されなければ残金を支払えません。
 このような売主、買主のニーズや不安に応えるために我々司法書士が存在すると言えるでしょう。司法書士が残金支払いの場に立ち会い、担保の抹消や所有権移転登記申請に必要な書類を確認することにより買主は安心して残金の支払いをすることができ、一方売主も残金の受領前に権利証なと゛の重要な書類の交付を強いられることを避けられます。
 以上のように売買契約における同時履行を円滑にしていただくため、司法書士は「立会」型の登記代理委任契約を受託いたします。

 貴方の場合も司法書士に「立会」を依頼することによって、残金の支払いと引き換えに担保の抹消されたきれいな不動産の所有権移転登記を受けることができるでしょう。
【UN・12】


 不動産の売買契約書に売主の署名はありますが、 判子は、いわゆる三文判しか押されていません。この契約は、有効でしょうか?

 民法上、契約の「有効・無効」とは、相手方がその約束事を守らなかった場合、最終的には裁判所などの国の力を借りて強制的にそれを履行させる力を持っているかどうかがポイントということができます。
 民法において、契約は当事者の意思表示の合致だけで有効に成立することになっています。簡単に言えば、売主の「売りましょう。」買主の「買いましょう。」という意思の合致だけで売買契約は有効に成立します。(意思主義)そこには判子どころか契約書すら要求されていません。身近な法律行為でこの意思主義の例外は、遺言や手形行為といったものぐらいです。(近年、定期借家契約等にみられる様にその成立の要件に書面を要するものも増えつつあります。)
 しかし、契約に際しては、契約書を作りそれに署名押印するのが一般的です。それは何故でしょうか。・・・・・・・「口約束では証拠が残らない。」とよく言われますが正にその通りです。前述のように売買契約は売主と買主の意思の合致で有効に成立します。しかしこの契約を一方が守らなかった場合、何ら契約書が存在しなければ如何にして裁判所に契約の存在を証明できるでしょうか。結局契約が有効であっても国の力を借りて強制的に履行さすことが不可能になってしまいます。
 以上のように契約書並びにそれに対する署名押印といったものは、契約そのものを有効にする要件ではなく、その成立を証明する手段であることがおわかりでしょう。契約書を作成することは、それが後に書証として、また立会人がいた場合は、その人の証言が人証として機能するわけです。ですから、いざというときに如何に立証しやすい契約をするかが大切であると言えるでしょう。

 貴方の不動産売買契約は、有効に成立していると言えるでしょう。確かに実印が押されていればいざというときにはさらに立証しやすいこともあるかもしれませんが、それはあくまでも証拠の問題であって通常は契約の有効無効を左右するものではありません。
【UN・12】